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広がる絆
しおりを挟む森の村に戻った紬たちは、気球の冒険で得た知識や技術を村の住人たちに披露した。現地人から教わった保存食や装飾品は、村人たちの目を輝かせ、村中で新たな工夫の波を巻き起こした。
「これが気球の旅で見つけた品物です!」紬が広場で箱を開けると、乾燥果物やスパイスの効いた肉の保存食が並べられた。その横には、美しい織物や装飾品も置かれている。
住人の一人、ミアが顔を覗き込んで言った。「これ、すごく長持ちするんですね!森の果物でもこんな保存食を作れたら、旅に出る冒険者たちが大喜びするかも!」
「そうだな。」グレンが腕を組みながら答える。「森の名産を活かして、保存食を作る工房を立ち上げてもいいかもしれない。」
紬たちはさっそく保存食作りの試行を始めた。森で採れたリンゴやベリー、キノコが主材料だ。これに、現地人から教わったスパイスを少し加え、長持ちするよう加工する。村の女性たちや妖精たちも協力し、楽しげに作業が進んでいく。
「こんな風に切って、乾燥させるんだね。」ミアが小さな妖精の仲間たちと一緒に果物を並べる。
「見ろ、これでいいんだろう?」グレンが出来上がったジャーキーを差し出すと、紬が嬉しそうに頷いた。「うん!完璧よ。これなら外の町や漁村でも売れるはず!」
こうして、森の村の保存食が完成した。早速外の町へ届けると、町の人々からも大好評だった。
「これを漁村の人たちにも伝えたらどうだろう?」ミアがふと提案した。
「たしかに。」紬は頷いた。「魚を使った保存食を一緒に作れば、漁村の人たちにも恩返しができるかも。」
紬と仲間たちは再び漁村を訪れた。漁村の住人たちは森の保存食に興味津々で、森の技術を魚の加工に応用することを決めた。
「これで魚が長持ちするようになるんですね!」漁村の若い女性が嬉しそうに言った。「村の特産品をもっと広められるなんて、夢みたい!」
こうして、森と漁村が共同で「魚と森の実りの保存食」を作り始めた。完成した商品は缶詰に詰められ、旅人や商人たちに広く愛されるようになった。
保存食の評判が高まるにつれ、森や漁村を訪れる観光客が急増した。紬たちは、もっと多くの人に森と漁村の魅力を楽しんでもらうために、新しい観光ルートを考えた。
「改良型の気球を使って、空中観光を始めましょう!」紬が提案すると、住人たちも賛成した。
「空から見れば、森も漁村ももっと素晴らしく見えるだろうな。」グレンがしみじみと言う。
こうして、森の村、外の町、漁村を結ぶ空中観光ツアーが始まった。気球の旅では、森の豊かな緑、漁村の青い海、そして外の町の活気ある風景が楽しめる。
観光が盛り上がる中、外の町で大規模な嵐が発生し、町の物流がストップする事態となった。物資が不足し、町の住人たちは困り果てていた。
「この保存食を届けましょう!」紬が立ち上がり、気球での緊急輸送を提案する。
「俺たちも手伝うぞ。」グレンが腕まくりをし、漁村の住人たちも船で協力することに。
嵐の被害を受けた町へと次々に物資が届けられ、住民たちは森と漁村の助けに感謝した。
嵐が収まり、復興が進むと、森では感謝の祭りが開かれた。森の果物やキノコ、漁村の魚、外の町の特産品が一堂に会し、盛大な収穫祭が催された。
紬は展望台に立ち、森、外の町、漁村がつながり、調和した景色を見渡す。その光景はまるで、一つの大きな家族のようだった。
「これからも、この絆を大切にしたいね。」紬が呟くと、隣にいたグレンが静かに頷いた。「ああ。お前ならできるさ。」
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