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ゆきまつり
しおりを挟む冬の足音が近づくとともに、村は静けさを増していった。木々の葉が落ち、空気は冷たく、街のあちこちに雪が舞い始める。しかし、心なしか、この静けさの中に、どこか温かさを感じるような気がしていた。紬は、村の広場で雪を踏みしめながら、何か楽しいイベントを開きたいと考えていた。町の人々が冬を楽しむ方法を思い描きながら。
「雪まつり…どうだろうか?」
その言葉がぽつりと口からこぼれた瞬間、紬はふと思いついた。寒い季節に心温まる催しを開けば、みんなの心も暖かくなるに違いないと思った。雪の中で集まって、温かい飲み物を楽しみ、ゲームをし、楽しい時間を過ごす。それができれば、きっとみんなの絆が深まるだろう。
村の広場に戻ると、紬はすぐにその考えを村の住民たちに提案した。「みなさん、この冬、雪まつりを開催しようと思うんです!」
最初は少し驚いたような顔をした住民たちも、紬の言葉を聞くとすぐに目を輝かせて賛同の声を上げた。「それなら、雪だるまコンテストがいいな!」「温かいお茶をふるまおうよ!」「そりすべりもやりたい!」住民たちの中から、次々とアイデアが飛び出してきた。
紬は、そんな住民たちの声に笑顔を返しながら、雪まつりの準備を始めることになった。それぞれが得意な分野で協力し合い、素晴らしいイベントを作り上げようと、みんなが一丸となって動き始めた。
まず、グレンが提案したのは、氷の彫刻作りだった。「大きな氷の塊を切り出して、芸術作品にしよう」と言うグレンの言葉に、住民たちは賛成し、その計画が進んでいった。グレンは力強い腕を活かして氷を切り出し、細かい彫刻作りに挑戦した。完成した氷の彫刻は、雪まつりの目玉として広場に飾られることになった。
リエナは、雪まつりの装飾を担当することになった。エルフらしく、自然の美しさを大切にしたランタンを手作りして、村中を飾ることにした。ランタンは雪の中で温かな光を放ち、夜が訪れるころには、まるで幻想的な世界が広がるかのようだった。
そして、獣人たちが提案したのは、雪山でのそりすべりだ。みんなで雪山を滑り降りながら楽しむことができるよう、そりのコースを作ることになった。獣人たちの力を借りて、急な斜面も滑りやすく整備され、子どもたちも大喜びでそのコースを駆け抜けた。
準備が進む中で、紬は何度もグレンと顔を合わせ、互いに手伝い合いながら過ごす時間が増えていった。彼が黙々と作業に取り組んでいる姿を見ていると、紬の胸にふとした温かい気持ちが広がるのを感じる。気づけば、雪まつりの準備が終わる頃には、二人の間に少しずつ距離が縮まっていた。
そして、ついに雪まつりの当日を迎えた。
冷たい空気が広場に広がり、雪がふわふわと舞い落ちる中、村の人々が集まってきた。最初に、紬がグレンやリエナと一緒に広場に立ち、住民たちに向けて挨拶をした。「みなさん、今年の雪まつり、楽しんでくださいね!」その言葉に、広場に集まった住民たちは温かい拍手を送った。
広場では、雪だるま作りが始まり、子どもたちの笑い声が響き渡る。みんなで協力して作った大きな雪だるまを囲みながら、温かい紅茶を手に、あちこちで歓談が繰り広げられた。グレンとリエナが作った氷の彫刻を見上げ、みんなが感心していた。氷が透明に輝き、雪の中でその美しさを引き立てていた。
その後、獣人たちが整備した雪山でのそりすべりが始まると、子どもたちは大喜びでコースを滑り降り、村人たちはその様子を楽しんでいた。「おお、すごい速さだ!」と、獣人のリオが笑いながら声を上げ、子どもたちの背中を押してあげる場面もあった。
昼間のイベントが終わり、夕方が近づくと、リエナが手作りの雪のランタンを灯し始めた。村中にほのかな光が広がり、雪の中で柔らかな光が反射して幻想的な雰囲気が漂った。広場の隅々までランタンが飾られ、その温かな光が雪の白さと相まって、まるで夢のような世界が広がっていた。
夜が訪れると、星が空にきらめき、雪の下から村人たちが集まってきた。皆でランタンを囲みながら、今年の雪まつりの成功を祝った。紬はその光景を見て、胸が温かくなるのを感じた。気づけば、雪まつりの終わりを告げる鐘の音が響き渡る中、グレンと顔を見合わせることが多くなり、ほんのりとした照れた気持ちが心に広がっていた。
雪まつりは、村の住人たちの絆をさらに深め、心温まるひとときとなった。そして、それは新しい季節への希望の始まりでもあった。
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