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「氷を溶かす言葉」
しおりを挟む翌日、村の広場には春の陽気が満ちて、雪解けの水が音を立てて流れ始めていた。空気は澄んでいて、遠くの山々にはまだ雪が残っているが、春の兆しが確実に感じられる季節だ。
「今日はどうする?」グレンが紬に声をかけた。
「うーん、今日は村をもう少し見て回りたいな。」紬はにっこりと笑いながら答える。「最近、村のことをもっと知りたくて。」
「そうか。じゃあ、案内するよ。」グレンは手を腰に当てて、少し背を伸ばしてから歩き出す。
二人は村の中心に向かって歩きながら、これから訪れる場所について話をし合った。村人たちは、春の訪れを祝う準備をしている最中で、色とりどりの花が飾られたり、音楽が流れたりして、普段よりも賑やかだった。
「この前見た温泉、気に入った?」グレンが尋ねると、紬は嬉しそうに頷いた。
「うん、すごく良かった!温泉って、こっちでは珍しいと思ってたけど、こんなにリラックスできるんだって実感したよ。」
「温泉はここの名物だからな。今度は村の外れにある洞窟を見に行こうか?」グレンが提案する。
「洞窟?面白そう!でも、暗いところはちょっと怖いかな。」紬は少しだけ不安そうに顔をしかめた。
「大丈夫だよ。ちゃんと準備して行けば、安全だ。」グレンは微笑みながら、紬の不安を解消しようと努めた。
二人は村の広場に到着し、そこで村人たちと少し立ち話をした。春の祭りが近づいていることを告げられると、紬はますますワクワクした気持ちになった。
「祭りの準備、もう始まってるんですね!」紬は興奮気味に言った。
「はい、今年は特に盛大にやるつもりです。紬さんもぜひ参加してくださいね。」村の長老の孫である女の子がにこやかに答える。
「もちろん!楽しみです!」紬は嬉しそうに手を振った。
その後、二人は広場を離れ、村外れにある森の小道を歩きながら、春の陽気に包まれた時間を楽しんだ。ふとグレンが歩みを止めて、前を指差した。
「見て、あそこに小さな家があるだろ?」
紬が目を向けると、森の中に小さな家が一軒見えてきた。とても素朴で、どこか懐かしい雰囲気を持ったその家は、まるで自然に溶け込んでいるように見えた。
「うん、あれ、なんだろう?」紬が不思議そうに尋ねる。
「実は、そこには村の薬草師が住んでいるんだ。彼女はとてもすごい人で、村の薬草を使った治療法を教えてくれるんだ。」グレンが説明する。
「へぇ、薬草師か。それは興味深いね。」紬は顔を輝かせた。
二人はその小さな家に近づき、扉を軽くノックした。しばらくして、扉が開かれ、中から年配の女性が顔を出した。
「こんにちは。村のグレンさんと紬さんですね。」女性は優しそうな笑顔を見せて、二人を迎え入れてくれた。
「こんにちは、お邪魔します。」紬はにこやかに答え、家の中へと足を踏み入れた。
家の中には、乾燥した薬草や瓶詰めされた薬が並び、独特の香りが漂っていた。女性は古くからの伝統を守り、薬草の知識を伝える役割を果たしている。
「今日は、薬草の使い方について教えてもらいたくて。」グレンが話を切り出した。
「もちろん、お二人にちょうど良いタイミングでお見せできるものがありますよ。」薬草師はにっこりと笑い、二人を案内した。
その後、紬は薬草の使い方や効果を学びながら、グレンと一緒に楽しげに過ごした。普段の生活に欠かせない薬草の使い方を教わることは、新しい発見の連続だった。
「すごいな、この草、こんな効果があるんだ。」紬は感心しきり。
「村の人たちは、みんなこの薬草で元気に過ごしているんだ。」グレンも嬉しそうに答えた。
その日は、薬草師の家で学んだことを持ち帰りながら、二人は春の暖かさの中、心地よい時間を過ごした。
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