終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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安田がスマホをいじりながら言う。

「でも、どこに移動する?」

高橋が低い声で問いかける。

「外の状況を考えると、避難所は論外だろうな」

斉藤が冷静に分析する。

「政府の発表を見た限り、もはやどこも安全じゃない。避難所に行ったところで感染者が出れば一気に崩壊する」

「かといって、無計画に外に出るのも危険だ」

俺は地図を広げ、近隣の施設を確認した。

「ホームセンターはどうだ? 物資もあるし、バリケードを作りやすい」

「確かにいい拠点ではあるが……」

斉藤が首を振る。

「同じことを考える奴が大勢いるはずだ。物資の奪い合いになるし、武装した集団が占拠してる可能性もある」

「それなら、人の少ない場所のほうがいいか」

安田が地図を覗き込む。

「たとえば、廃校とか?」

「学校は一見よさそうだが、窓が多くて防御が難しい。何より、感染初期に避難したやつらがいた可能性がある」

「確かに……」

選択肢をひとつずつ潰していく。

「山のほうはどうだ?」

高橋が地図を指差す。

「市街地よりはゾンビの数も少ないはずだ」

「となると……廃旅館とかか?」

俺の言葉に、斉藤が頷いた。

「旅館なら部屋も多いし、構造的に防御しやすい。露天風呂の給水設備が生きてれば、水の確保も可能かもしれない」

「確かに……悪くないな」

安田が地図をスクロールし、近くの山中にある廃旅館を探し始めた。

「ここ、どうだ? 数年前に廃業したらしい」

「詳細は分からんが、一度偵察に行く価値はあるかもしれない」

「でも、すぐに移動するわけじゃない」

俺は念を押す。

「今はまだマンションが安全だ。だけど、次の拠点の選択肢は持っておくべきだ」

「だな」

全員が頷いた。

次の一手を決める時間が近づいている。




夜半過ぎ、俺のスマホが震えた。

──藤木からのメッセージだった。

「もうダメだ。ここを出る」

俺は画面を見つめながら、嫌な予感が背筋を這い上がるのを感じた。

「どうした?」

安田が訊ねる。

「藤木が、ショッピングモールを見限った」

「やっぱりな」

斉藤が溜息をつく。

「内部の統制が限界を迎えたんだろう」

「何があったんだ?」

俺は急いで返信を打った。

「どういう状況だ?」

数秒後、藤木から返事が来る。

「橘の支配がさらに強くなった。もう完全に独裁状態だ。反対するやつは食糧を減らされ、昨日なんか暴力まで振るわれた」

「……もう終わりかけてるな」

俺は呟きながら続きを読む。

「それだけじゃない。モール内で感染者が出た。でも橘はそれを認めようとしない。情報を隠蔽して、騒いだやつを黙らせてる」

「終わってんな……」

安田が苦々しく言う。

「それじゃ、モールが持つわけないじゃん」

「藤木、今どこにいる?」

俺はすぐに返信を送る。

「裏口近くの駐車場にいる。もう一部の連中は逃げ出し始めてる。俺も出る」

「よし、拾うぞ」

俺はスマホを置き、仲間たちを見渡した。

「こっちもそろそろ移動を開始する。ちょうどいい、藤木を途中で拾って、一緒に次の拠点に向かう」

「廃旅館だな」

斉藤が地図を指差す。

「山奥に向かえばゾンビの数は減る。最悪、他の選択肢も探せる」

「問題は、市街地を抜けるルートだな」

高橋が静かに言った。

「ショッピングモール周辺は、たぶん混乱してる。下手に近づくと巻き込まれるかもしれない」

「夜のうちに動くほうがいいか?」

安田がスマホを睨みながら言う。

「日が昇ると人もゾンビも活発になる。暗いうちなら、まだ目立たずに動けるかもしれない」

「じゃあ、今から準備して、夜明け前に出発する」

俺は全員を見渡し、頷いた。

「いよいよか……」

安田が軽く笑いながら、バットを肩に担ぐ。

「正直、ワクワクしてきたぞ」

「気を引き締めろ。これからが本当のサバイバルだ」

斉藤が鋭く言った。

「命を落としたらゲームオーバーだからな」

「分かってるって」

俺たちは静かに荷物をまとめ、マンションを出る準備を始めた。

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