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車内の空気はどこか張り詰めていた。市街地を抜ければゾンビの数は減るかもしれないが、それは同時に頼れるものが減るということでもある。
安田が無言で運転し、斉藤が地図を確認する。藤木は後部座席で呼吸を整えながら、静かに車窓の外を見ていた。
「まだ都市部を完全に抜けたわけじゃないな」
藤木が呟く。
「そうだな。でも、ここから先は開けた道路が続く。封鎖されてなければ、スムーズに進めるはずだ」
斉藤が冷静に答える。
「けど、ここからはガソリンの残量も気にしなきゃならねえぞ」
安田がメーターを確認しながら言う。
「まだ半分あるが、次の補給がいつになるか分からん」
「廃旅館に向かう途中にスタンドがあれば、給油を試みるしかないな」
「問題は、そのスタンドがまだ無事かどうか、だが」
高橋が静かに言った。
確かに、営業しているガソリンスタンドがあったとしても、混乱の真っ只中なら危険だ。ゾンビだけでなく、生存者同士の争いに巻き込まれる可能性もある。
「補給のことは頭に入れつつ、今はとにかく市街地を抜けるのを優先しよう」
俺はそう言い、車内の緊張を解こうと話を切り出した。
「しかし、まさかこうして会社の同僚と、大学の友人が一緒になるとはな」
「ほんとにな」
藤木が短く笑う。
「会社ではお前のプライベートの話なんてほとんど聞かなかったし、こういう交友関係だとは思わなかったよ」
「まあ、仕事とプライベートは分けるタイプだからな」
「でも、お前がこういうメンツとつるんでるってのは、何となく納得だわ」
「そういうもんか?」
「意外とバランス取れてるよな、このチーム」
安田がルームミラー越しに俺たちを見ながら言う。
「お調子者の俺、頭の切れる斉藤、無口だけど実力派の高橋、んで、冷静に全体を見てる三浦。そこに藤木が加わると……営業職だし、交渉とか適応力はありそうだな」
「まあ、どこに行っても生き残るためには立ち回りが必要だしな」
藤木が肩をすくめる。
「問題は、これからどれだけ状況が悪化するか、だな」
「最悪、人間同士の争いになる」
斉藤が淡々と言った。
「ゾンビが増えるにつれて、物資が足りなくなる。食糧、水、燃料。そうなれば、生き残った人間同士の争いが本格化する」
「そうなる前に、安全な拠点を確保するってことか」
藤木が頷く。
そのとき、突然前方の交差点に差し掛かった瞬間、安田がブレーキを踏んだ。
「……ちょっと待て」
俺たちは一斉に前を見る。
交差点のど真ん中に、横転した車が放置されていた。その周囲には、複数の影がゆっくりとうごめいている。
「ゾンビか……?」
高橋が小声で呟く。
車のライトが当たると、それらはゆっくりとこちらを向いた。
血だらけの服、よろめく足取り、そして虚ろな瞳。
「クソ……ここでやり合うわけにはいかねえ」
安田がギアをバックに入れ、少し下がる。
「迂回できるルートを探せ」
「待て、あれを見ろ」
藤木が指を差した。
横転した車の隙間で、何かが動いた。
よく見ると、そこには人間がいた。
「……まだ生きてるのか?」
交差点の隅、ゾンビの影に隠れるように、誰かがうずくまっている。
「助けるか?」
俺たちは一瞬、視線を交わした。
だが、その間にもゾンビたちはこちらに向かってゆっくりと歩き始めていた。
選択の時間は、あまり残されていなかった。
安田が無言で運転し、斉藤が地図を確認する。藤木は後部座席で呼吸を整えながら、静かに車窓の外を見ていた。
「まだ都市部を完全に抜けたわけじゃないな」
藤木が呟く。
「そうだな。でも、ここから先は開けた道路が続く。封鎖されてなければ、スムーズに進めるはずだ」
斉藤が冷静に答える。
「けど、ここからはガソリンの残量も気にしなきゃならねえぞ」
安田がメーターを確認しながら言う。
「まだ半分あるが、次の補給がいつになるか分からん」
「廃旅館に向かう途中にスタンドがあれば、給油を試みるしかないな」
「問題は、そのスタンドがまだ無事かどうか、だが」
高橋が静かに言った。
確かに、営業しているガソリンスタンドがあったとしても、混乱の真っ只中なら危険だ。ゾンビだけでなく、生存者同士の争いに巻き込まれる可能性もある。
「補給のことは頭に入れつつ、今はとにかく市街地を抜けるのを優先しよう」
俺はそう言い、車内の緊張を解こうと話を切り出した。
「しかし、まさかこうして会社の同僚と、大学の友人が一緒になるとはな」
「ほんとにな」
藤木が短く笑う。
「会社ではお前のプライベートの話なんてほとんど聞かなかったし、こういう交友関係だとは思わなかったよ」
「まあ、仕事とプライベートは分けるタイプだからな」
「でも、お前がこういうメンツとつるんでるってのは、何となく納得だわ」
「そういうもんか?」
「意外とバランス取れてるよな、このチーム」
安田がルームミラー越しに俺たちを見ながら言う。
「お調子者の俺、頭の切れる斉藤、無口だけど実力派の高橋、んで、冷静に全体を見てる三浦。そこに藤木が加わると……営業職だし、交渉とか適応力はありそうだな」
「まあ、どこに行っても生き残るためには立ち回りが必要だしな」
藤木が肩をすくめる。
「問題は、これからどれだけ状況が悪化するか、だな」
「最悪、人間同士の争いになる」
斉藤が淡々と言った。
「ゾンビが増えるにつれて、物資が足りなくなる。食糧、水、燃料。そうなれば、生き残った人間同士の争いが本格化する」
「そうなる前に、安全な拠点を確保するってことか」
藤木が頷く。
そのとき、突然前方の交差点に差し掛かった瞬間、安田がブレーキを踏んだ。
「……ちょっと待て」
俺たちは一斉に前を見る。
交差点のど真ん中に、横転した車が放置されていた。その周囲には、複数の影がゆっくりとうごめいている。
「ゾンビか……?」
高橋が小声で呟く。
車のライトが当たると、それらはゆっくりとこちらを向いた。
血だらけの服、よろめく足取り、そして虚ろな瞳。
「クソ……ここでやり合うわけにはいかねえ」
安田がギアをバックに入れ、少し下がる。
「迂回できるルートを探せ」
「待て、あれを見ろ」
藤木が指を差した。
横転した車の隙間で、何かが動いた。
よく見ると、そこには人間がいた。
「……まだ生きてるのか?」
交差点の隅、ゾンビの影に隠れるように、誰かがうずくまっている。
「助けるか?」
俺たちは一瞬、視線を交わした。
だが、その間にもゾンビたちはこちらに向かってゆっくりと歩き始めていた。
選択の時間は、あまり残されていなかった。
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