終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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その夜、俺たちは久しぶりに落ち着いて食事を取ることができた。

「レトルトご飯に缶詰のカレーって、なんか懐かしいな」

安田が湯気の立つレトルトパックを開けながら言う。

「キャンプっぽいな」と藤木が笑う。「いや、むしろ災害時の避難所か」

「どっちも似たようなもんだな」と斉藤が静かに呟く。「とにかく、今はこれを食えるだけありがたい」

食事スペースに決めた給湯室でお湯を沸かし、レトルト食品を温める。旅館の備品から見つけた使い捨ての割り箸や紙皿を使って、最低限の食事を整えた。

「温かい飯が食えるだけで、ずいぶんマシに思えるな」

高橋が無言で頷きながら、カレーを口に運ぶ。

「この旅館に来てから、まだまともに動いてるゾンビを見てないけど……都心の方はもう地獄だろうな」

藤木の言葉に、一同が静かになった。

「ニュースの更新は減ってるけど、SNSでは相変わらず動画が上がってるよ」と安田がスマホを覗き込みながら言う。「もう、都内の大通りとか完全に機能してない。道路は車が放置されてて、ゾンビがそこら中を歩き回ってる」

「生き残ってるやつはどうしてるんだ?」

「マンションとかの高層階に立てこもってる人もいるみたいだけど、もう食料が尽きかけてるって話もある」

「この旅館も、いずれそうなるかもしれないってことだな」斉藤が言った。「今はまだ静かだけど、ここも安全とは言い切れない」

「このままここに籠るのが正解かどうか、判断しないといけないな」

俺がそう言うと、藤木が小さく頷く。「とりあえず、明日は井戸の水を調べるのが最優先だな。それが使えれば、しばらくここで生活するのも現実的になる」

「あと、周囲の確認もしておきたいな」と高橋が言う。「今のところ、この旅館の周りにはゾンビがいない。でも、本当にそうなのか、ちゃんと見ておいたほうがいい」

「そうだな。何か異変があれば、すぐに気づけるようにしておかないと」

「よし、明日の予定は決まったな」

食事を終え、俺たちはそれぞれの寝床に入った。畳の上に寝袋を敷き、座布団を枕代わりにする。まだ完璧な環境とは言えないが、昨日よりはずっとマシだ。

「おやすみ」

「おう、交代で見張り頼むぞ」

「了解」

静まり返った旅館の中で、俺たちは交代で見張りをしながら、一夜を過ごした。

***

翌朝、俺たちはまず井戸の確認に向かった。

「さて、水が使えるかどうか……」

藤木が慎重に井戸の縁に手をかける。昨日の時点では深さもわからず、ただ不気味に口を開けているだけの穴だった。

「バケツがあったよな?」

「倉庫から持ってきた。ロープもある」

高橋が用意していたバケツを持ってくる。

「じゃあ、試しに汲んでみるか」

安田がロープを結び、井戸の中へと慎重にバケツを降ろしていく。

数秒後、バシャッと水に落ちる音がした。

「水はあるな」

ゆっくりとロープを引き上げると、バケツの中には濁った水が溜まっていた。

「……これは、ちょっとそのままじゃ飲めねえな」

「濾過できれば使えそうか?」

「煮沸すればいけるかもしれない。でも、泥が結構混じってるな」

藤木がバケツの水をじっと見つめる。「まあ、まったく水がないよりはマシだな。まずは浄水できる方法を考えよう」

「活性炭とかフィルターがあればいいんだけどな……」

「旅館の備品を探してみるか?」

「とりあえず、今日の作業のひとつだな」

俺たちは旅館の生活を安定させるために、少しずつやるべきことを整理していった。

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