終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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朝早く、俺と安田は車に乗り、山を降りることにした。旅館での生活を安定させるには、もう少し物資が必要だった。特に食料や水の確保は急務だ。都会ほどの混乱はないはずだが、それでも事態が悪化しているのは間違いない。

「……さて、どこを回るか」

運転席の俺がそう言うと、助手席の安田がスマホを弄りながら答えた。

「近くのスーパーに行ってみるか。でも、都心部ほどじゃなくても、買い占めは始まってるだろうな」

「だろうな。開店前から行列とかになってたら最悪だな」

「まあ、その場合は別のルートを考えよう。コンビニとかドラッグストアとか……まだ穴場が残ってるかもしれない」

俺たちは慎重に道を進んだ。山道を抜け、国道へ出ると、思った以上に交通量が少なかった。大きな渋滞はないが、幹線道路には路肩に止まった車がちらほら見える。

「燃料切れか?」

「かもな。スタンドも営業停止してるところが増えてるみたいだし」

しばらく走ると、町のスーパーが見えてきた。駐車場にはすでに何台もの車が停まっており、店の前には人が並んでいる。

「……やっぱりな」

安田がため息をつく。「都会ほどじゃなくても、みんな焦り始めてるな」

俺たちは車を停め、スーパーの様子を確認した。店の中にはまだ十分な商品があるように見えたが、レジには長蛇の列ができている。買い物カートに大量の食品を積み込んだ客が多く、店員は慌ただしく補充作業をしていた。

「これ、入れたとしてもかなり時間かかるぞ」

「とりあえず、行くだけ行ってみるか。何も買えずに帰るわけにもいかないし」

俺たちは慎重にスーパーへ入り、必要なものを手早くカゴに入れた。米、レトルト食品、乾パン、インスタントラーメン、缶詰、調味料など、保存が効くものを優先的に選ぶ。水もできる限り確保したが、すでに品薄になっていた。

「あと、できれば調理道具とかも見ておきたいな。ライターとか、カセットボンベとか……」

「そっちはドラッグストアのほうがいいかもな」

会計を済ませ、俺たちは急いで店を出た。思った以上に時間がかかり、駐車場では焦ったように荷物を積み込む客たちが増えていた。

「なんか、みんな落ち着きがなくなってきてるな」

「この状況じゃ仕方ないさ。混乱が広がるのは時間の問題だ」

俺たちは車に乗り、次の目的地を考えながら走り出した。

しばらく進むと、道沿いに小さな無人販売所が見えてきた。

「お、あれまだやってるのか?」

「いや、無人販売所の横に誰か立ってるな……」

車を減速しながら様子を見ると、農家らしき年配の男性が、持ち込んだ野菜を手渡していた。数人の客が並び、大根やキャベツ、ジャガイモを受け取っている。

「……野菜を配ってる?」

俺たちは車を停め、降りてみることにした。

「おじさん、これは?」

安田が尋ねると、農家の男性は苦笑しながら答えた。

「流通が止まっちまってな。このままじゃ出荷もできねぇし、倉庫で腐らせるよりは、食べてもらった方がいいと思ってよ」

「……助かります。いいんですか?」

「ああ、持っていきな。大したもんじゃねえが、今は食い物を確保するほうが大事だろ?」

俺たちは礼を言い、いくつかの野菜を分けてもらった。

「こういう人もいるんだな……」

車に戻りながら、安田がしみじみと呟いた。

「みんながパニックになってるわけじゃないってことだな」

「でも、こういう善意がどこまで続くかは分からない。今のうちに、できる限り備えておいたほうがいい」

俺たちは再び車を走らせ、旅館への帰路についた。
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