終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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夜の話し合いが一段落し、各自が湯冷めしないように毛布を肩にかけながら座っていた。フローラルな香りが旅館の広間にほのかに漂っているのが、今の状況と妙に噛み合わなくて、なんとも言えない気持ちになる。

「……それで、今後の食糧についてだけど」

斉藤が静かに切り出した。

「今のところ、買い出しで手に入れた食料、農家からもらった野菜、鹿肉……まあ、すぐにどうこうなるわけじゃないが、長期的に考えると不安が残る」

「物流が完全に止まったら、もうスーパーには頼れなくなるもんな」

藤木が腕を組む。

「あと、人の動きが激しくなればなるほど、ゾンビや略奪のリスクも増える。都市部の混乱はこっちに直接影響しなくても、逃げてきた生存者や追われたゾンビが山の方に入り込んでくる可能性は十分ある」

「……だから、今のうちに食糧を蓄えるべきってことか」

「そういうことだ」

高橋が頷く。「この旅館の周辺は山だし、うまくやれば何かしらの食料は確保できるはず。少なくとも、街で奪い合いに参加するよりはよっぽど安全だ」

「具体的に言うと?」

「まずは山菜採りだな」

高橋が地図を広げ、旅館の周辺を指でなぞる。「タラの芽やワラビ、ゼンマイ、コシアブラ……今の時期なら、探せばそれなりに採れるはずだ」

「おお、それなら俺でもわかるかも!」安田がやる気を見せる。「昔、親父に教わったことあるんだよな」

「キノコはどうだ?」

「キノコは慎重に見極めないと危ないが、シイタケやマイタケみたいな安全なやつなら問題ないな。ただ、変に手を出すとヤバい毒キノコもあるから、見分けられないならスルーしたほうがいい」

「なるほどな」

俺は山菜採りの可能性を考えながら、もう一つ気になっていたことを口にした。

「狩猟は?」

藤木がすぐに頷いた。「俺もそれを考えてた。崖下で鹿を拾ったみたいに、このあたりには野生動物がいるはずだ。鹿やイノシシが狩れれば、貴重なタンパク源になる」

「でも、どうやって?」

「罠を仕掛けるしかないな。くくり罠や落とし穴を作れれば、うまくいけば鹿くらいは捕まえられる」

「……狩猟経験あるのか?」

「ないけど、ネットで調べれば最低限のやり方は分かる。今のうちなら、まだネットが生きてるから情報を集めておける」

「それなら、釣りはどうだ?」

高橋が新たな案を出す。「旅館の近くに川があるなら、釣りができるかもしれない。魚が獲れれば、かなり助かるぞ」

「なるほどな……」

こうしてみると、山の中という立地は悪くない。食料の確保さえできれば、この旅館は十分に生存拠点として機能する。

「明日は、山菜採りの下見と、罠を仕掛ける準備をするか」

「そうだな。罠はすぐに結果が出るものじゃないし、早めに仕掛けておいた方がいい」

「キノコは、少し慎重にいこう。間違えるとシャレにならない」

「魚は……釣り道具があるかどうか確認してみる」

計画がまとまり、俺たちはそれぞれ明日に向けて準備を始めた。

「しかし、ついさっきまで風呂のことばっか考えてたのに、もう狩猟の話か……」

安田が苦笑する。

「生きるってのはそういうもんだろ」藤木が肩をすくめる。「今のうちに動いておかないと、後々もっとしんどいことになる」

「……そうだな」

生存のために、やるべきことは山ほどある。

俺たちは、翌日の作業に備え、それぞれ眠りについた。
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