終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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懐中電灯の光が通路の奥を照らすと、長年閉ざされていたせいか、空気がひどく淀んでいた。動くたびに埃が舞い上がり、喉がイガイガする。

「……すげぇホコリ。マスクしてくればよかった」

安田が顔をしかめながら手で口を覆う。

「長いこと放置されてたみたいだな」

高橋が壁を指でなぞると、灰色の粉がこびりつくほどの厚い埃がこびりついていた。

「これ、いつから使われてないんだ?」

藤木が辺りを見回しながら呟く。

「少なくとも、俺たちが来るよりずっと前からだな」

「でも、完全に封鎖されてたわけじゃないんだよな?」

「増築の影響で使わなくなっただけ、かもしれん」

俺たちは慎重に足を進めた。床は古く、一歩ごとにギシギシと軋む。天井の低い通路は窮屈で、身をかがめながら歩かなければならなかった。

「この先、何があるんだ……?」

薄暗い廊下の奥に、うっすらと扉のようなものが見えた。

「……行ってみるか」

全員、無言で頷き、ゆっくりと進んでいった。

扉の前に立つと、より一層、埃の濃さが増していた。懐中電灯の光が揺れるたびに、空気中の無数の微粒子が舞い上がる。

「……なんか、息するだけで喉が痛くなるな」

安田が軽く咳をしながら、袖で口元を覆った。

「この部屋、相当長いこと使われてなかったんだろうな」

藤木が扉の取っ手を試しに押してみる。木製の扉はギシギシと軋む音を立てたが、かろうじて開いた。

「……開いた」

扉の隙間から、さらに冷たい空気が漏れ出してきた。

「行くか?」

誰も返事をしない。だが、引き返す理由もなかった。

俺たちは慎重に扉を開き、懐中電灯の光を部屋の中へ向けた。

部屋の中は、さらに厚い埃に覆われていた。元は客室だったのか、古びた布団が畳の上に無造作に積まれている。隅には木製の古い棚があり、その上には小さな箱や陶器の置物が並んでいた。

「なんだ、ただの物置か?」

安田が鼻をすすりながら奥へ進む。

「いや……」

俺は部屋の隅に目を凝らした。

畳の上には、何かが置かれていた。

「……ノート?」

埃を払いながら手に取ると、それは古びた手帳だった。表紙はすでに変色し、端がボロボロになっている。

「誰かの日記か?」

斉藤が興味深そうに覗き込む。

俺は慎重にページを開いた。

──最初の数ページは、すでに読めなくなっていた。しかし、後半のページに、まだはっきりとした文字が残っていた。

「また、あの子が夜中に泣いていた」

「……あの子?」

安田がぽつりと呟く。

俺はページをめくる。

「誰もいないはずなのに、畳の上に小さな足跡がついていた。廊下を歩く音が聞こえるのは、私の気のせいだろうか」

「……」

「これって、もしかして……」

藤木が言葉を詰まらせる。

「まだ続きがある」

俺は次のページをめくった。

「旅館の奥の部屋は、もう使わないことになった。理由は言われなかったが、あの場所はよくない」

「奥の部屋……?」

この部屋のことなのか? それとも……。

ページをめくろうとした瞬間、ふと、背筋がぞわりと寒くなった。

「……今、何か聞こえなかったか?」

斉藤が囁くように言った。

全員が息を潜めた。

すると──

コト……コト……

部屋の隅で、微かに何かが動いた音がした。

懐中電灯の光を向ける。

そこには、埃をかぶった古い雛人形が、静かにこちらを向いていた。
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