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翌朝。
旅館の外は、穏やかに鳥のさえずりが響いていた。朝日が障子越しに差し込み、昨夜の不気味な出来事がまるで夢だったかのように思える。
「……おはよう」
俺はまだ少しぼんやりとした頭で起き上がる。隣では安田が寝袋から半分はみ出し、口を開けて寝ていた。
「……おい、起きろ」
足で軽く揺すると、安田はうーんと唸って目をこする。
「うわ、朝か……生きてるな、俺」
「なんだその感想」
昨夜のことがあって、全員寝つきは悪かったが、それでも夜通し見張りをしていたおかげで特に異常はなかった。
「みんな、起きてるか?」
俺は広間を見渡す。
藤木と斉藤はすでに起きており、焚き火を使って湯を沸かしていた。
「おはよう。コーヒー……とはいかないが、お茶ならあるぞ」
藤木が湯気の立つカップを差し出してくる。
「助かる」
口をつけると、ほのかに温かく、昨夜の冷たい緊張が少し和らいだ気がした。
「……で、昨夜のアレはどうする?」
斉藤が焚き火を見つめながら言った。
「“無視されたくない幽霊”ってやつか?」
安田が寝ぼけたまま言う。
「無視してたわけじゃないんだけどな」
俺が肩をすくめる。
「でも、アレはどう見ても“見てほしい”って感じだったよな」
藤木がため息混じりに言った。「わざわざゾンビを遠ざけてまで、俺たちの関心を引こうとしてる」
「……このまま放っておいたら、もっと強引な手段に出るかもな」
高橋が腕を組む。
「ちょっと待てよ。幽霊とどうやって“コミュニケーション”取るんだよ?」
安田が眉をひそめる。
「さあな……でも、少なくとも、俺たちが気づいていることを示せば、満足する可能性はある」
「つまり、話しかければいいってことか?」
「いや、それはさすがに気が引ける」
「じゃあ、どうすんだ?」
俺たちは顔を見合わせた。
幽霊がいると分かった以上、無視を続けるのは得策ではない。だが、どう接するべきかも分からない。
「……ひとまず、今日も旅館内を確認しながら考えよう」
「それがいいか」
朝の静けさの中、俺たちは改めて、幽霊とどう向き合うかを考え始めた。
「幽霊が子供の可能性もあるなら……試しに、何か供えてみるか?」
俺がそう言うと、安田が「供えるって……?」と怪訝そうな顔をした。
「手形が小さかったし、日記にも“あの子”って書いてあっただろ?」
藤木が補足する。「もし旅館にいた子供の霊だとしたら、何かしらの形で気持ちを示せば、俺たちを脅かさなくなるかもしれない」
「じゃあ……お供えって、何を?」
「子供なら、甘いものとか好きなんじゃないか?」
俺はポケットを探る。すると、スーパーで買った非常食の中に、小さな飴玉の包みがあった。
「飴玉……?」
「ダメ元で置いてみる」
「いやいや、お前本当にやるのかよ……」
安田が呆れたように頭を抱える。
「何もしないよりはいいだろ」
俺はふすまが勝手に開いたあの部屋の前に立ち、そっと小さな飴玉を畳の上に置いた。
「……これでいいのか?」
「まあ、試しにな」
「マジかよ……おばあちゃんの家じゃねぇんだから」
安田がぼやくが、誰もそれを否定はしなかった。
「……様子を見よう」
俺たちは飴玉を置いたまま、その場を離れることにした。幽霊が相手だ、これで何か変化があるかは分からない。でも、無視されるのを嫌がっているなら、こういう小さな“気づいてるよ”という意思表示が何かのきっかけになるかもしれない。
あとは、どうなるかを待つだけだった。
旅館の外は、穏やかに鳥のさえずりが響いていた。朝日が障子越しに差し込み、昨夜の不気味な出来事がまるで夢だったかのように思える。
「……おはよう」
俺はまだ少しぼんやりとした頭で起き上がる。隣では安田が寝袋から半分はみ出し、口を開けて寝ていた。
「……おい、起きろ」
足で軽く揺すると、安田はうーんと唸って目をこする。
「うわ、朝か……生きてるな、俺」
「なんだその感想」
昨夜のことがあって、全員寝つきは悪かったが、それでも夜通し見張りをしていたおかげで特に異常はなかった。
「みんな、起きてるか?」
俺は広間を見渡す。
藤木と斉藤はすでに起きており、焚き火を使って湯を沸かしていた。
「おはよう。コーヒー……とはいかないが、お茶ならあるぞ」
藤木が湯気の立つカップを差し出してくる。
「助かる」
口をつけると、ほのかに温かく、昨夜の冷たい緊張が少し和らいだ気がした。
「……で、昨夜のアレはどうする?」
斉藤が焚き火を見つめながら言った。
「“無視されたくない幽霊”ってやつか?」
安田が寝ぼけたまま言う。
「無視してたわけじゃないんだけどな」
俺が肩をすくめる。
「でも、アレはどう見ても“見てほしい”って感じだったよな」
藤木がため息混じりに言った。「わざわざゾンビを遠ざけてまで、俺たちの関心を引こうとしてる」
「……このまま放っておいたら、もっと強引な手段に出るかもな」
高橋が腕を組む。
「ちょっと待てよ。幽霊とどうやって“コミュニケーション”取るんだよ?」
安田が眉をひそめる。
「さあな……でも、少なくとも、俺たちが気づいていることを示せば、満足する可能性はある」
「つまり、話しかければいいってことか?」
「いや、それはさすがに気が引ける」
「じゃあ、どうすんだ?」
俺たちは顔を見合わせた。
幽霊がいると分かった以上、無視を続けるのは得策ではない。だが、どう接するべきかも分からない。
「……ひとまず、今日も旅館内を確認しながら考えよう」
「それがいいか」
朝の静けさの中、俺たちは改めて、幽霊とどう向き合うかを考え始めた。
「幽霊が子供の可能性もあるなら……試しに、何か供えてみるか?」
俺がそう言うと、安田が「供えるって……?」と怪訝そうな顔をした。
「手形が小さかったし、日記にも“あの子”って書いてあっただろ?」
藤木が補足する。「もし旅館にいた子供の霊だとしたら、何かしらの形で気持ちを示せば、俺たちを脅かさなくなるかもしれない」
「じゃあ……お供えって、何を?」
「子供なら、甘いものとか好きなんじゃないか?」
俺はポケットを探る。すると、スーパーで買った非常食の中に、小さな飴玉の包みがあった。
「飴玉……?」
「ダメ元で置いてみる」
「いやいや、お前本当にやるのかよ……」
安田が呆れたように頭を抱える。
「何もしないよりはいいだろ」
俺はふすまが勝手に開いたあの部屋の前に立ち、そっと小さな飴玉を畳の上に置いた。
「……これでいいのか?」
「まあ、試しにな」
「マジかよ……おばあちゃんの家じゃねぇんだから」
安田がぼやくが、誰もそれを否定はしなかった。
「……様子を見よう」
俺たちは飴玉を置いたまま、その場を離れることにした。幽霊が相手だ、これで何か変化があるかは分からない。でも、無視されるのを嫌がっているなら、こういう小さな“気づいてるよ”という意思表示が何かのきっかけになるかもしれない。
あとは、どうなるかを待つだけだった。
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