終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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山の中の静けさが、風に揺れる木々の葉音だけを響かせていた。

俺たちは食糧調達のために山へ出ていた。昨日の鹿の肉もあるが、保存食として確保したい。山菜や木の実の採取に加え、高橋が川で釣りをしてくれることになった。

「うまく釣れるかねぇ」

安田が笑いながら高橋を見送る。

「静かにしてろ、魚が逃げる」

高橋は淡々と竿を垂らし、じっと水面を見つめていた。

俺たちはそれぞれ山菜を探したり、罠を確認したりしていたが、ふと高橋が視線を上げ、川の向こう側をじっと見ていることに気づいた。

「……どうした?」

「……あれ」

高橋が顎で指した方向を見ると、遠くの山道に人影が見えた。

「おばちゃん?」

藤木が眉をひそめる。

「……いや、ヤバい。後ろ……!」

その言葉に俺たちは全員息を呑んだ。

おばちゃんの背後に、複数のゾンビが群がっていた。

「クソッ、見つかってる!」

「旅館の方角に向かってるぞ……!」

おばちゃんは息を切らしながら、必死に斜面を駆け下りていた。全力で逃げてはいるが、足元は不安定で何度もよろめく。

後ろのゾンビたちが徐々に距離を詰めている。

「助けるぞ!」

「おう!」

俺たちは一斉に旅館の方向へ走った。

おばちゃんの目の前に旅館が見えてきた瞬間、彼女はラストスパートをかけるように全力で駆け出した。

「こっちだ!」

俺たちは声を上げ、バリケードの隙間から入れるように誘導する。

「あと少し!」

安田と高橋が支えるように両側から手を伸ばし、おばちゃんの腕を引いた。

「くそっ、来るぞ!」

後ろのゾンビたちが旅館の敷地内に迫りつつある。

「刺股、行くぞ!」

藤木がすかさず防犯用の刺股を構え、ゾンビの動きを封じるように押し返した。

「バリケードを固めろ!」

俺は高橋と安田に指示を出し、扉を閉める準備をする。

おばちゃんが旅館の中に飛び込むのを確認した瞬間、俺たちは一斉に入口を塞いだ。

「よし……!」

外ではゾンビが扉に手を伸ばし、ガラス越しにぼんやりとした白濁した目を向けている。

「……なんとかなったか?」

「一応な」

全員が息を整えながら、おばちゃんの方を振り返った。

彼女は肩で息をしながら、放心したように座り込んでいた。

「助かった……ありがとう……」

おばちゃんの目には涙が浮かんでいた。

「大丈夫ですか?」

藤木が水を差し出すと、彼女は震える手でそれを受け取った。

「……なんとか。しばらくは山の方で一人で暮らしてたんだけど、食べ物が尽きかけて、山を下りたらあいつらに……」

「そうか……」

「本当に、ありがとうね……」

彼女は俺たちを見回し、ホッとしたように微笑んだ。

こうして、旅館には新たな生存者が加わることになった。
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