53 / 84
53
しおりを挟む
俺たちは、幽霊の部屋の前まで来ていた。
ふすまの前で足を止め、じっと飴玉を供えた場所を見つめる。
「……誰が確認する?」
俺が小声で尋ねると、安田がサッと一歩引いた。
「俺、ちょっとカメラ係やるわ」
「いやいや、誰も撮影しろなんて言ってねぇだろ」
藤木が呆れた顔をする。
「ほら、怖がってないで開けちまいな!」
田辺さんは豪快に安田の背中をバン!と叩く。
「ぐっ……お、おばちゃん……容赦ねぇ……」
「何言ってんだい、あんたたち男だろ?」
「いやもう、そういう問題じゃ……」
ぶつぶつ文句を言いながら、安田が震える手でふすまを開ける。
ス……
全員が息を飲んだ。
「……あれ?」
そこには、飴玉が綺麗になくなっていた。
「……え、マジで?」
安田が目を丸くする。
「いや、待てよ……虫とか、小動物が持ってった可能性も……」
藤木が現実的な線を考えようとするが、田辺さんは「いやいや、そりゃないよ」と笑う。
「だって、ほら」
俺たちが視線を向けると、飴玉を供えた場所のすぐ近くの畳に、うっすらと小さな手形が残っていた。
「……うわあああああ!!!」
安田が飛び退く。
「マジかよ……」
斉藤が目を細める。
「飴玉、食べたってことか?」
高橋が冷静に言う。
「いや、マジでどういうことなんだよ……」
安田が頭を抱える。「……もう、無視できねぇじゃん」
「まぁ、いいことなんじゃないの?」
田辺さんは愉快そうに笑う。「受け取ってもらえたってことは、少なくとも怒ってるわけじゃないし」
「……そう、なのか?」
「そうさ。お供えを受け取るってことは、あんたたちを認めたってことだろ?」
「認めた……?」
「これからもよろしくってことかもしれないよ?」
「いや、ちょっと待って、それはそれで嫌なんだけど……!」
「まぁまぁ、幽霊がいても暮らしていけるでしょ!」
「そんな前向きな……」
俺たちは苦笑しながら、飴玉の消えた部屋を見つめた。
これでこの幽霊が満足してくれたならいいんだが……。
ただ、この旅館での生活は、ますます奇妙なものになりそうだった。
「……で、問題はコイツらをどうするかだな」
旅館の窓から外を覗くと、ゾンビたちは未だにうろついていた。幸い、数はそれほど多くないが、それでも放置しておけばじわじわと増えていく可能性がある。
「このままにしといたら、他のゾンビも引き寄せるかもしれねぇな」
藤木が腕を組んで言う。
「だな。旅館の場所がバレるのは避けたい。ここは静かで安全なのが強みなんだから」
「うーん……どうやって処理するかだな」
安田が頭をかく。「まともに戦ったらリスク高いし、なるべく安全にやりたいよな」
「俺たち、ゾンビに関しては近接戦闘向いてないからな……。政府の推奨してた方法、つまり“押さえ込み”と“閉じ込め”を活用するのが良さそうだな」
「罠にかけるとか?」
「あるいは、地形を利用して転倒させるとか」
「なら、山道を利用するのはどうだ?」
高橋が提案した。「この辺りの地形を考えると、坂道に誘導して転ばせるってのが現実的かもしれん」
「確かに、ゾンビはバランス感覚が悪いし、急斜面に誘導すれば勝手に転がってくれるかもしれないな」
「ちょっとちょっと、あんたたち、そんな面白そうなことやるなら私も手伝うよ!」
田辺さんが腕をまくる。
「いやいや、おばちゃん、今回は夕飯作りをお願いしたいんですよ」
「え~? せっかくの戦力なのに~」
「おばちゃんの料理の方が戦力ですって!」
「まぁ、そう言われると悪い気はしないけどさ……しょうがないねぇ、今日はたっぷり旨いもん作ってやるから、しっかりゾンビ退治してきな!」
田辺さんは満足そうに台所へ向かっていった。
「さて、じゃあ作戦開始だな」
俺たちは旅館の外にいるゾンビたちを、なるべく安全に処理するための作戦を練り始めた。
ふすまの前で足を止め、じっと飴玉を供えた場所を見つめる。
「……誰が確認する?」
俺が小声で尋ねると、安田がサッと一歩引いた。
「俺、ちょっとカメラ係やるわ」
「いやいや、誰も撮影しろなんて言ってねぇだろ」
藤木が呆れた顔をする。
「ほら、怖がってないで開けちまいな!」
田辺さんは豪快に安田の背中をバン!と叩く。
「ぐっ……お、おばちゃん……容赦ねぇ……」
「何言ってんだい、あんたたち男だろ?」
「いやもう、そういう問題じゃ……」
ぶつぶつ文句を言いながら、安田が震える手でふすまを開ける。
ス……
全員が息を飲んだ。
「……あれ?」
そこには、飴玉が綺麗になくなっていた。
「……え、マジで?」
安田が目を丸くする。
「いや、待てよ……虫とか、小動物が持ってった可能性も……」
藤木が現実的な線を考えようとするが、田辺さんは「いやいや、そりゃないよ」と笑う。
「だって、ほら」
俺たちが視線を向けると、飴玉を供えた場所のすぐ近くの畳に、うっすらと小さな手形が残っていた。
「……うわあああああ!!!」
安田が飛び退く。
「マジかよ……」
斉藤が目を細める。
「飴玉、食べたってことか?」
高橋が冷静に言う。
「いや、マジでどういうことなんだよ……」
安田が頭を抱える。「……もう、無視できねぇじゃん」
「まぁ、いいことなんじゃないの?」
田辺さんは愉快そうに笑う。「受け取ってもらえたってことは、少なくとも怒ってるわけじゃないし」
「……そう、なのか?」
「そうさ。お供えを受け取るってことは、あんたたちを認めたってことだろ?」
「認めた……?」
「これからもよろしくってことかもしれないよ?」
「いや、ちょっと待って、それはそれで嫌なんだけど……!」
「まぁまぁ、幽霊がいても暮らしていけるでしょ!」
「そんな前向きな……」
俺たちは苦笑しながら、飴玉の消えた部屋を見つめた。
これでこの幽霊が満足してくれたならいいんだが……。
ただ、この旅館での生活は、ますます奇妙なものになりそうだった。
「……で、問題はコイツらをどうするかだな」
旅館の窓から外を覗くと、ゾンビたちは未だにうろついていた。幸い、数はそれほど多くないが、それでも放置しておけばじわじわと増えていく可能性がある。
「このままにしといたら、他のゾンビも引き寄せるかもしれねぇな」
藤木が腕を組んで言う。
「だな。旅館の場所がバレるのは避けたい。ここは静かで安全なのが強みなんだから」
「うーん……どうやって処理するかだな」
安田が頭をかく。「まともに戦ったらリスク高いし、なるべく安全にやりたいよな」
「俺たち、ゾンビに関しては近接戦闘向いてないからな……。政府の推奨してた方法、つまり“押さえ込み”と“閉じ込め”を活用するのが良さそうだな」
「罠にかけるとか?」
「あるいは、地形を利用して転倒させるとか」
「なら、山道を利用するのはどうだ?」
高橋が提案した。「この辺りの地形を考えると、坂道に誘導して転ばせるってのが現実的かもしれん」
「確かに、ゾンビはバランス感覚が悪いし、急斜面に誘導すれば勝手に転がってくれるかもしれないな」
「ちょっとちょっと、あんたたち、そんな面白そうなことやるなら私も手伝うよ!」
田辺さんが腕をまくる。
「いやいや、おばちゃん、今回は夕飯作りをお願いしたいんですよ」
「え~? せっかくの戦力なのに~」
「おばちゃんの料理の方が戦力ですって!」
「まぁ、そう言われると悪い気はしないけどさ……しょうがないねぇ、今日はたっぷり旨いもん作ってやるから、しっかりゾンビ退治してきな!」
田辺さんは満足そうに台所へ向かっていった。
「さて、じゃあ作戦開始だな」
俺たちは旅館の外にいるゾンビたちを、なるべく安全に処理するための作戦を練り始めた。
10
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。
現在1945年中盤まで執筆
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
百の話を語り終えたなら
コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」
これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。
誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。
日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。
そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき——
あなたは、もう後戻りできない。
■1話完結の百物語形式
■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ
■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感
最後の一話を読んだとき、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる