終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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杉本は車の荷台に荷物を積み込みながら、軽く息を吐いた。

「いやぁ……本当に助かったよ。発電機の設置がうまくいって、ダムと村の通信ができるようになっただけでも大きな進歩だった」

彼はそう言いながら、次の目的地に向かう準備を進めていた。

「それで、次はどこへ行くつもりなんだ?」藤木が尋ねる。

杉本は地図を開きながら、目的地を指した。

「ここだ。隣の町にある避難所跡。元々、役場が指定してた避難所のひとつなんだけど、すでに人がいなくなってる可能性が高い。でも、通信機器や電力設備が無事なら、そこを拠点にもう一つローカルネットワークを作れるかもしれない」

「……つまり、今度はダムと村だけじゃなく、さらに別の拠点と繋げようってことか?」斉藤が確認する。

「そういうこと。拠点を増やせば、少しずつ通信範囲が広がる。俺たちみたいに孤立してる生存者がどこかにいるはずだから、そいつらと情報を共有できるようにしたい」

「なるほどな……」俺は地図を覗き込む。「でも、一人で行くのか?」

「まぁな」杉本は笑った。「複数人いたほうが安全なのは分かってる。でも、その分、動きが鈍くなるし、物資の消費も増える。それに、通信の復旧作業は基本的に俺一人でもできる。だから、一人でやるのが一番効率的なんだ」

安田が苦笑しながら腕を組む。「まぁ、あんたの言うことは分かるけどよ……一人でうろつくのは危険だぜ?」

「分かってる。でも、俺の目的は『できるだけ多くの拠点を復旧させること』だからな」

杉本はそう言って、荷物を確認する。

「とりあえず、食糧は最低限確保しておきたいな……」

田辺さんが、大きめのリュックを持ってきた。「ほら、あんたが一人で動くなら、少しでも栄養のあるもん持ってきな」

「おお、ありがたい」杉本は受け取る。「助かるよ」

「あと、移動手段だけど……」俺は安田の方を見た。「車、貸してやるか?」

安田は渋い顔をしたが、すぐに「……しゃーねぇな」と言って車のキーを投げた。

「おお、マジで? 助かる」杉本はキャッチしながら、軽く笑った。「正直、徒歩移動はきついと思ってたんだ」

「まぁ、俺たちが車なしでもやっていけるくらいには、ここの拠点は安定してきたしな」藤木が言う。「お前のほうが車を必要としてるなら、貸してやるのが筋だろ」

「感謝する」杉本は車のボンネットを叩きながら、「燃料は?」と確認する。

「満タンではないけど、しばらくは持つはず。村で追加の燃料を調達しとけよ」

「了解」

荷物の最終確認を終えると、杉本は運転席に乗り込んだ。

「じゃあ、俺は行く。もし何かあったら、ダムのローカルネット経由で村に伝えてくれ。そっちの通信はしばらく生きてるはずだから」

「おう、気をつけろよ」

エンジンがかかると、車はゆっくりとダムを離れていく。

俺たちは見送る側に立ち、杉本の車が見えなくなるまで、その姿を目で追った。

「……すげぇな、あいつ」安田がポツリと言う。「こんな状況でも、一人で動こうってんだからよ」

「通信が復活すれば、状況は確実に良くなる」藤木が腕を組む。「ただ、どこまで広げられるかだな」

「……そうだな」

杉本の旅が成功すれば、生存者同士のネットワークが広がる。

それがこの崩壊した日本にとって、どれだけの希望になるのかはまだ分からない。

だが、俺たちの世界は少しずつ繋がろうとしていた。
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