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花の名前 竜夜
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優しくしたい。笑顔にさせたい。なんて思ってても出来なくて。俺はそんな自分が嫌だった。まぁ、嫌いってわけじゃなくて、あと少し素直になれたらなぁ…って事なんだが。
なんて俺は思いながらホームルームを終え、いつものように階段を下りた。そして数分間今入と言い合いをして、時間になったら今入が帰る。毎日恒例の事が終わると、ため息をつきたくなる。
今日も笑顔に出来なかった。
いや、今入は俺をからかったりするとき笑顔だ。でもそれは俺の見たい笑顔じゃない。もっと幸せそうで、嬉しそうな笑顔が見たい。
「あ~ぁ…なんで俺は…」
「俺は?」
臆病なんだろう、と呟こうとするとその言葉を遮る声がした。そちらを見ると、稲森 夕音がいた。稲森は俺を見上げて、楽しそうに笑っていた。その姿が、今入に重なってドキっとした。
「ねぇ、君はなんで自信がないの?」
稲森の赤い瞳が俺を問い詰めるようだった。身体が冷えていくのがわかった。通り過ぎていく風の音が妙に大きくて、俺の心を揺さぶった。
「…そ、んなの…わかんねぇ…よ…」
呟いた言葉は、勝手に口から出ていた。
「教えてあげようか?」
赤い瞳の中に映る俺は、とても小さく見えた。もう言葉を発することもままならない状態で、俺は頷いた。
「…ベゴニア」
「え?」
桃色の花を俺に差し出した。いつの間に持っていたのかはよくわからなかったが、その花は淡く光っているように見えた。
「ベゴニア・センパフローレンスの花だよ…これ。花言葉は『片思い』」
俺はビクッと震えた。目の前で唇だけが微笑んでいるように見える女が、一瞬怖かった。
「君に似合ってるよ。…なを…紗奈を困らせちゃえ。きっと、想いは届くから…」
受け取った花を力強く握りしめた。心臓が煩かった。
翌日。
煩い心臓に、聞こえないふりをしていつも通り階段を下りた。
からかってくる声が、楽しそうに笑う表情が、可愛くて仕方なかった。
「どうしたの?なんか元気ないね」
今入が心配そうに首を傾げて言った。俺は唐突に話し始めた。
「前、神様が言ってたんだ」
稲森を神様に例えて話す。今入は「神様?」と混乱していた。
「『気付かないなら、言って困らせちゃえ』って」
「気付かないって誰が何を…」
「今入」
「え!?」
自分の事だとは思っていなかったらしく、驚いて目を見開いた。そして少し眉を吊り上げながら
「私が何に気付いてないって!?」
と言った。俺の心臓が大きな音を立てた。
「今入」
今入は俺の冷静な声を聞いてビクリと震えた。そして俺の顔をじっと見つめた。本能的にか、慌てて俺に背を向けた。
「そろそろ帰らなきゃーーーーー」
逃げ出そうとする目の前の兎を捕らえるように腕を掴んだ。少しだけ引っ張って耳元に唇を近付けた。
「好きだ」
振り返った今入は顔が真っ赤に染まっていて。瞳にはうっすらと雫が溜まっていた。
その姿を見て、俺の顔は蒼白になったのかもしれない。怖くて、フラれるのが怖くて。ぱっと腕を離して顔を伏せて
「それだけ」
と言うと踵を返して俺は逃げた。
「…どうしよう」
恥ずかしくて、倒れてしまいそうだ。校舎を出て、裏門の陰に座り込む。俺は、明日からどう接すればあいつは笑ってくれるだろうか、と考えて帰路についた。
なんて俺は思いながらホームルームを終え、いつものように階段を下りた。そして数分間今入と言い合いをして、時間になったら今入が帰る。毎日恒例の事が終わると、ため息をつきたくなる。
今日も笑顔に出来なかった。
いや、今入は俺をからかったりするとき笑顔だ。でもそれは俺の見たい笑顔じゃない。もっと幸せそうで、嬉しそうな笑顔が見たい。
「あ~ぁ…なんで俺は…」
「俺は?」
臆病なんだろう、と呟こうとするとその言葉を遮る声がした。そちらを見ると、稲森 夕音がいた。稲森は俺を見上げて、楽しそうに笑っていた。その姿が、今入に重なってドキっとした。
「ねぇ、君はなんで自信がないの?」
稲森の赤い瞳が俺を問い詰めるようだった。身体が冷えていくのがわかった。通り過ぎていく風の音が妙に大きくて、俺の心を揺さぶった。
「…そ、んなの…わかんねぇ…よ…」
呟いた言葉は、勝手に口から出ていた。
「教えてあげようか?」
赤い瞳の中に映る俺は、とても小さく見えた。もう言葉を発することもままならない状態で、俺は頷いた。
「…ベゴニア」
「え?」
桃色の花を俺に差し出した。いつの間に持っていたのかはよくわからなかったが、その花は淡く光っているように見えた。
「ベゴニア・センパフローレンスの花だよ…これ。花言葉は『片思い』」
俺はビクッと震えた。目の前で唇だけが微笑んでいるように見える女が、一瞬怖かった。
「君に似合ってるよ。…なを…紗奈を困らせちゃえ。きっと、想いは届くから…」
受け取った花を力強く握りしめた。心臓が煩かった。
翌日。
煩い心臓に、聞こえないふりをしていつも通り階段を下りた。
からかってくる声が、楽しそうに笑う表情が、可愛くて仕方なかった。
「どうしたの?なんか元気ないね」
今入が心配そうに首を傾げて言った。俺は唐突に話し始めた。
「前、神様が言ってたんだ」
稲森を神様に例えて話す。今入は「神様?」と混乱していた。
「『気付かないなら、言って困らせちゃえ』って」
「気付かないって誰が何を…」
「今入」
「え!?」
自分の事だとは思っていなかったらしく、驚いて目を見開いた。そして少し眉を吊り上げながら
「私が何に気付いてないって!?」
と言った。俺の心臓が大きな音を立てた。
「今入」
今入は俺の冷静な声を聞いてビクリと震えた。そして俺の顔をじっと見つめた。本能的にか、慌てて俺に背を向けた。
「そろそろ帰らなきゃーーーーー」
逃げ出そうとする目の前の兎を捕らえるように腕を掴んだ。少しだけ引っ張って耳元に唇を近付けた。
「好きだ」
振り返った今入は顔が真っ赤に染まっていて。瞳にはうっすらと雫が溜まっていた。
その姿を見て、俺の顔は蒼白になったのかもしれない。怖くて、フラれるのが怖くて。ぱっと腕を離して顔を伏せて
「それだけ」
と言うと踵を返して俺は逃げた。
「…どうしよう」
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