神様自学

天ノ谷 霙

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優しいの意味 由芽

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帰り道。もうすっかり暗くなった空は、満天の星空だった。
「ごめんね…ジュース買った後、今日理科室に忘れ物したこと思い出して、取ってる間に鍵閉められたみたいで…」
「別に大丈夫だよ、気にするな」
「ありがとう。…小野くん、さ…。さっき私のこと[由芽]って呼んだよね?」
「へ!?あっ、あれは…切羽詰まってたから…」
「えーじゃあこれからは呼んでくれないの?」
「えっ…」
ドキドキと鳴る心臓が煩くて。私はその声をかき消すように振り返って呟いた。勝手に唇が動いていた。
「好きだよ、小野くん」
「え…っ…?」
「好き」
自分でも何を言っているのか理解するのに時間がかかった。口をついて出たということは、これが私の本音なのかもしれない。
「お、俺もっ好きじゃなくもない…」
「どっちよ」
嬉しくて笑ってしまう。ふいに抱きしめられた時、小野くんの心臓の音が私に伝わってドキドキする。
「えと?」
「付き合ってください、由芽」
「っ…喜んで」
とても、幸せだ。嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。でも。
「あの、私…情報収集が得意で、たくさん酷いことして来た。思い出せないくらい、小さい頃から。それでも、それでも好きって…言ってくれる?」
震えながら問いかける。腕の中でゆっくりと小野くんの顔を見る。小野くんは目を丸く開けて、私を見ていた。
「…俺は、まだ由芽のこと全部知らない。けれど、由芽が優しい人だって気付いているから…大丈夫。好きだよ」
そう、言ってくれた。嬉しくて、でも気になったから聞いてみた。そうしたら、「優しい」の意味が分かった。
それは私が情報を使って他人ひとを救うから。私が見ていた「自分」の情報を使った場面は、いつも脅迫や従順に従わせるところだった。けれど私は無意識のうちに、他人を救うために使っていたらしい。脅迫や従順にさせた時は、他人の気持ちを優先している時が多いらしい。全く気付かなくて、言われても実感がなかった。
けれど、私の情報は役に立つ。優しさの面でも、切羽詰まった状態でも。有利に駒を進めることができる。その駒が進めば進むほど、楽で幸せな道へ進むことができた。
私は亜美あみちゃんに言われるまで気付かなかった。何を言っているのかよくわからなかった。私が見ていた一部分の自分は、真っ暗闇な腹黒女だった。
その部分もひっくるめて、「空原  由芽」は完成する。

後日。
柔らかな陽射しが、カーテンを揺らして私を包んだ。図書室で一緒に仕事をしていた小野くんも、低い本棚に体重を預け、空を見上げていた。時が止まったような、優しい時間だった。
ふと舞い降りてきた一輪の花が、私の手にふわりと乗った。その瞬間、意識のはざまに文字が浮かび上がった。
[繊細、日陰者]
あぁ、私にぴったりだ。白くて小さな花を、色の濃淡が少ない小さな葉で包んでいる。
まばたきをした瞬間。それは何もなかったかのように消えていた。
「え…?」
驚いた声は、海斗にも聞こえたらしかった。私も説明に困ったので「なんでもない」と苦笑いすると、海斗も首を傾げて微笑んだ。
ふわっと、さっきの花と同じ香りがした。
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