255 / 812
10月19日 質問の意味
しおりを挟む
菜古ちゃんの、亜美への愛は止まらなかった。悔しさ、自分の性別への恨み、苦しみ、辛さ、痛み、その中でも同性同士だからこその幸せ、嬉しかったことがあったという。それらが混ざり合って、溶けて、菜古ちゃんを複雑な感情にしたまま、諦めて飲み込ませてくれない。
私は立ち上がって、一番近くにある窓を開けた。そこから風とともに入り込んでくる白と黄色の小さな花に触れる。その花は一瞬にして花びらとなり、空中を舞い踊る。顔を上げた菜古ちゃんは、季節外れにも程があるその花を見て、驚いて目を見開いた。
「リナリア。花言葉は、この恋に気付いて」
気付いて欲しい。苦しい。でも、気付かないで欲しい。私は、まだ、亜美先輩と仲良くしていたい。
心の声が、鮮明に聞こえた。
菜古ちゃんは自分の手元に落ちた花を手で包み込むようにして持つ。小さい花の連なった可愛らしい花。小柄で可愛い菜古ちゃんにぴったりだった。菜古ちゃんは花を見つめ、ふっと微笑む。その様子は絵画を見ているように美しくて、綺麗だった。
「…私、亜美先輩に想いを伝えることはしないけど…もう少しだけ、諦めがつくまで…側にいたい」
「…うん、そうね」
私はそっとしゃがんだままの菜古ちゃんの頭をぽんぽんする。菜古ちゃんは驚いた様子で顔を上げ、またふわっと微笑んだ。私もつられて微笑み、菜古ちゃんを引っ張って立ち上がらせる。菜古ちゃんが持っていた花は、いつの間にか花びらとなって舞いながら窓の外へ飛んで行ってしまった。
「…菜古、ここにいたの?」
声が聞こえて、私と菜古ちゃんは一斉にそちらを向く。そこには、先程クラスに来た時に一緒にいた、眼帯をした女の子がいた。
「降琉!ごめんね…っえ?」
降琉と呼ばれたその子は、菜古ちゃんの頭にスポーツ飲料水をコツン、とついた。菜古ちゃんは驚いたように目を瞑った。
「目、赤いよ。どうせ泣いてたんでしょ。冷やすついでに水分補給しなよ。あげるから」
「!…ありがとう」
菜古ちゃんは嬉しそうにペットボトルを受け取った。それを見た降琉ちゃんは、私の方にまっすぐ体を向けた。さっきの教室のドアの前で菜古ちゃんの後ろに隠れた時とは違う、堂々とした態度だった。
「菜古の友達の月宮 降琉です。菜古を慰めて頂いてありがとうございました」
「あ、いえいえ…いきなり連れ出して、置いて行っちゃってごめんね」
丁寧にお辞儀をされ、戸惑う。するとそれを感じ取ったのか、にこっと笑って言葉を繋いだ。
「…梶栗先輩は、彼女さんと仲良さそうですか?」
「えっ」
突然の質問に驚く。竜夜くんと紗奈の様子を思い出し、私は笑顔で答えた。
「うん、すごく仲良いよ」
「…そうですか、ありがとうございます。…そろそろ教室に戻りますね」
お辞儀されたので、私もお辞儀を返す。姿が見えなくなって不思議に思う。
降琉ちゃんは、どうして竜夜くんと紗奈の仲を聞いてきたのだろうか、と。
私は立ち上がって、一番近くにある窓を開けた。そこから風とともに入り込んでくる白と黄色の小さな花に触れる。その花は一瞬にして花びらとなり、空中を舞い踊る。顔を上げた菜古ちゃんは、季節外れにも程があるその花を見て、驚いて目を見開いた。
「リナリア。花言葉は、この恋に気付いて」
気付いて欲しい。苦しい。でも、気付かないで欲しい。私は、まだ、亜美先輩と仲良くしていたい。
心の声が、鮮明に聞こえた。
菜古ちゃんは自分の手元に落ちた花を手で包み込むようにして持つ。小さい花の連なった可愛らしい花。小柄で可愛い菜古ちゃんにぴったりだった。菜古ちゃんは花を見つめ、ふっと微笑む。その様子は絵画を見ているように美しくて、綺麗だった。
「…私、亜美先輩に想いを伝えることはしないけど…もう少しだけ、諦めがつくまで…側にいたい」
「…うん、そうね」
私はそっとしゃがんだままの菜古ちゃんの頭をぽんぽんする。菜古ちゃんは驚いた様子で顔を上げ、またふわっと微笑んだ。私もつられて微笑み、菜古ちゃんを引っ張って立ち上がらせる。菜古ちゃんが持っていた花は、いつの間にか花びらとなって舞いながら窓の外へ飛んで行ってしまった。
「…菜古、ここにいたの?」
声が聞こえて、私と菜古ちゃんは一斉にそちらを向く。そこには、先程クラスに来た時に一緒にいた、眼帯をした女の子がいた。
「降琉!ごめんね…っえ?」
降琉と呼ばれたその子は、菜古ちゃんの頭にスポーツ飲料水をコツン、とついた。菜古ちゃんは驚いたように目を瞑った。
「目、赤いよ。どうせ泣いてたんでしょ。冷やすついでに水分補給しなよ。あげるから」
「!…ありがとう」
菜古ちゃんは嬉しそうにペットボトルを受け取った。それを見た降琉ちゃんは、私の方にまっすぐ体を向けた。さっきの教室のドアの前で菜古ちゃんの後ろに隠れた時とは違う、堂々とした態度だった。
「菜古の友達の月宮 降琉です。菜古を慰めて頂いてありがとうございました」
「あ、いえいえ…いきなり連れ出して、置いて行っちゃってごめんね」
丁寧にお辞儀をされ、戸惑う。するとそれを感じ取ったのか、にこっと笑って言葉を繋いだ。
「…梶栗先輩は、彼女さんと仲良さそうですか?」
「えっ」
突然の質問に驚く。竜夜くんと紗奈の様子を思い出し、私は笑顔で答えた。
「うん、すごく仲良いよ」
「…そうですか、ありがとうございます。…そろそろ教室に戻りますね」
お辞儀されたので、私もお辞儀を返す。姿が見えなくなって不思議に思う。
降琉ちゃんは、どうして竜夜くんと紗奈の仲を聞いてきたのだろうか、と。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる