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庭仕事の指導 花火
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キースは庭で丁寧に間引きをし、一部の花を切り、枯れた花を優しく摘んでいた。最初に来た時のように雑な扱いではなく、一つ一つを優しく慎重に扱っていた。
「キ…」
私はキースに呼びかけようとして、やめた。キースは私に気付いていないようだし、このまま少し見ていようと思った。
それにしても、キースは庭園にいると本当に絵になる。綺麗なブロンドの髪。ガラス玉のようにきらきら光る、大きなピンクがかったサファイア色の瞳。異国の人だと一目でわかるその目立つ容姿は、庭園で花と戯れるだけでここがヨーロッパかどこかのお嬢様の日常に思えてくる。そんな雰囲気だった。
「キース」
私じゃない男の声で、キースの名前が呼ばれた。キースは顔を上げて、心の底から嬉しそうに笑った。
「作夜さん!」
花がもう一輪、咲いたようだった。同性でも見惚れるその笑顔が、まっすぐ片倉くんに向かう。キースは片倉くんと話している間、ずっと目を輝かせていた。たまに恥ずかしそうに頬を赤らめながら目を逸らし、それでも堪え切れないという様子で微笑み、片倉くんと話を続けていた。
それを見ていた私の胸が、ちくりと痛んだ。左肩に垂らした三つ編みが嫌になって、解こうとする。しかし一歩手前で、仕事中に髪を結ぶのは仕事に差し支えると気付き、髪留めから手を離した。
私はその場から離れようとした。片倉くんに庭仕事を教わっているのならば安心だし、私が絶対に教えなくてはならないわけではない。分かってるから大丈夫。むしろ他の人にキースの指導をして貰えるなら、私はお嬢様の世話が出来るのでありがたい。そう思って離れようとした、のに。
「…?…!稲峰さん!」
泣きそうになる。自分ではよく分からないけど、私の名前を呼ぶ片倉くんの声を聞いて泣きそうになった。それでも私は仕事中だからそんな感情を出さないように気を付け、振り返った。
「どうかしましたか」
「いえ、姿が見えたので…」
いつも通りぼんやりした表情に見えたが、声のどこかに慌てているような、不思議な様子が混じっていた。
「姿が見えたからといって、毎回挨拶しなくても大丈夫ですよ」
「そう、なんですけど…稲峰さんには挨拶したくて」
「何ですか、それ」
言い訳をする姿が子供みたいで、私は思わず笑う。久しぶりに他の使用人達の前で表情を崩した気がして、我に返って少し恥ずかしくなる。私は慌てていつもの表情に戻し、会話を続ける。
「キースの庭仕事が、以前よりもとても上達していると聞きました。貴方が教えたのですか」
「あ、はい…基本事項は。自分から積極的に来てくれたので、私が教えたという感じではないと思います」
自分から積極的に、という言葉に引っかかったが、気にしていないふりをして、そうですか、と言った。
「それでも教えたのは貴方でしょう。ありがとうございます」
私が深くお辞儀をすると、片倉くんは戸惑いながら謙遜した。お礼を終えたので仕事に戻ろうとすると、視界の端でキースが一瞬、恐ろしい形相で睨んでいるように見えた。
「キ…」
私はキースに呼びかけようとして、やめた。キースは私に気付いていないようだし、このまま少し見ていようと思った。
それにしても、キースは庭園にいると本当に絵になる。綺麗なブロンドの髪。ガラス玉のようにきらきら光る、大きなピンクがかったサファイア色の瞳。異国の人だと一目でわかるその目立つ容姿は、庭園で花と戯れるだけでここがヨーロッパかどこかのお嬢様の日常に思えてくる。そんな雰囲気だった。
「キース」
私じゃない男の声で、キースの名前が呼ばれた。キースは顔を上げて、心の底から嬉しそうに笑った。
「作夜さん!」
花がもう一輪、咲いたようだった。同性でも見惚れるその笑顔が、まっすぐ片倉くんに向かう。キースは片倉くんと話している間、ずっと目を輝かせていた。たまに恥ずかしそうに頬を赤らめながら目を逸らし、それでも堪え切れないという様子で微笑み、片倉くんと話を続けていた。
それを見ていた私の胸が、ちくりと痛んだ。左肩に垂らした三つ編みが嫌になって、解こうとする。しかし一歩手前で、仕事中に髪を結ぶのは仕事に差し支えると気付き、髪留めから手を離した。
私はその場から離れようとした。片倉くんに庭仕事を教わっているのならば安心だし、私が絶対に教えなくてはならないわけではない。分かってるから大丈夫。むしろ他の人にキースの指導をして貰えるなら、私はお嬢様の世話が出来るのでありがたい。そう思って離れようとした、のに。
「…?…!稲峰さん!」
泣きそうになる。自分ではよく分からないけど、私の名前を呼ぶ片倉くんの声を聞いて泣きそうになった。それでも私は仕事中だからそんな感情を出さないように気を付け、振り返った。
「どうかしましたか」
「いえ、姿が見えたので…」
いつも通りぼんやりした表情に見えたが、声のどこかに慌てているような、不思議な様子が混じっていた。
「姿が見えたからといって、毎回挨拶しなくても大丈夫ですよ」
「そう、なんですけど…稲峰さんには挨拶したくて」
「何ですか、それ」
言い訳をする姿が子供みたいで、私は思わず笑う。久しぶりに他の使用人達の前で表情を崩した気がして、我に返って少し恥ずかしくなる。私は慌てていつもの表情に戻し、会話を続ける。
「キースの庭仕事が、以前よりもとても上達していると聞きました。貴方が教えたのですか」
「あ、はい…基本事項は。自分から積極的に来てくれたので、私が教えたという感じではないと思います」
自分から積極的に、という言葉に引っかかったが、気にしていないふりをして、そうですか、と言った。
「それでも教えたのは貴方でしょう。ありがとうございます」
私が深くお辞儀をすると、片倉くんは戸惑いながら謙遜した。お礼を終えたので仕事に戻ろうとすると、視界の端でキースが一瞬、恐ろしい形相で睨んでいるように見えた。
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