神様自学

天ノ谷 霙

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11月14日 怪我した手

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雨が酷く心の中に降る。恋使になって、この力を知ってから覚悟はしていたつもりだけど、やはり目の前で失恋する女の子を見るのは辛い。未来の私を見せられている気分になる。一歩すら踏み出せない私の行く先か、勇気を出した私の行く先か。それに、失恋の後押しをしたみたいな先程の行動を思い出し、胸が痛くなる。
私が好きかどうか聞いたのに、その後何も言わずに黙っているとキースさんが口を開いた。
「…さく…片倉さんは、花火さんのところに行きました?」
「えっ」
その問いはほとんど正解で、勇気を出した片倉さんは花火のところへ行こうとしていた。仕事中なので行けるかどうかは分からないが、行く気であるかという問いであれば正解だ。私はキースさんが的確に当ててきたことに驚いて、隠すことも出来ずに思い切り表情に出ていたと思う。何で、と口パクでしか言えなかったが、彼女はそれを読み取って悲しそうに微笑んだ。
「…知っていましたから。片倉さんが花火さんのことを見ているの。片倉さんは秋バラを彼女に渡そうとしていました。花火さんはバラが好きですし、最近倒れたと聞いた時、片倉さんが1番慌てていたんです」
「…そう、なんですか」
「はい。結構分かりやすいんです、片倉さん。でも花火さんは全く気付いていない様子で、周りの人は皆気付いていて。片倉さんはお嬢様に仕えている中でも若く、女性にとても人気があるのですが、これがどういう意味か分かりますか?」
キースさんの私を見つめるまっすぐな視線に、緊張が走る。痛いくらいに心臓が跳ね、冷や汗が背中を伝う。瞬きの瞬間にまぶたの裏に見えたのは、花火の怪我した手。
「…まさか!」
私の顔から血の気が引いていくのが分かる。花火から唯一相談を受けていたのに、忘れていた。片倉さんとの話にばかり、気を取られていた。
キースさんは目を閉じて頷いた。そして私のすぐ側に来て、耳元で囁いた。
「花火さん、怪我の隠し方が上手なんです。前にぼーっとしていた時に、こちらには気付いていない様子で手を机の上に乗せていて、やっと気付きました。指先や手の平に絆創膏がたくさん貼ってあるのを見たんです」
私も思い出す。花火は怪我なんて絶対に見せてくれない。弱いところなんて晒さない。倒れるまで頑張ってしまう。
「だから、その、花火さんが仕事場に連れてくるくらい信用されている貴女なら、花火さんを支えて…」
「花火は今、どこにいるんですか?」
「えっ?」
私はキースさんの話が耳に入って来なかった。片倉さんが行動してしまったら、行動しようとしているのを知ってしまったら、それの前に止めようとするだろう。蒼くんに自覚させまいと利羽を追い詰めてしまったあの女の子のように。
「花火が、花火が危ない!!」
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