神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
285 / 812

11月14日 犯人へ問う

しおりを挟む
何も言えなかった。口を開こうにも、片倉さんの気迫に圧倒されて何も言えなかった。扇様も戸惑っていたが、花火が片倉さんに抱えられているのを見つけ、階段を駆け下りていった。
「花火、花火!!大丈夫!?」
「平気です、お嬢様…片倉くんのおかげで…」
ちらっと片倉さんの様子を見て、慌てて目を逸らす花火。その後ハッと気付いて離れようとするが、片倉さんはそれに気付かずにこちらを睨みつけている。
「…あの…違うの…」
花火の隣にいたメイドの女性は、震えながら口元を隠す。目が泳ぎ、落ち着かない様子である。
私はその様子を見て、花火の怪我や倒れた時のことなどが思い浮かんで、無意識に口を動かしていた。
「…花火の荷物にカッターの刃を入れたのは貴方ですか」
「…!夕音…!?」
花火の慌てる声が聞こえる。私の方に意識を集中させているせいか、動揺して気が緩んだのが、怪我した手が扇様の目に映る。片倉さんもそれに気付き、目を見開いて驚きを表情に表す。
「…キースさんが片倉さんに懐いたタイミングで入れ始めましたよね」
「えっ…」
キースさんが静かに動揺する。私はそれに構うことが出来ず、私の意思に関係なく、勝手に言葉が紡がれる。私は震えて動かない女性に近寄り、耳元で囁いた。
「…片倉さんが、他の女性に恋情を抱いているのがそんなに悔しかった?分かりやすくて、なのに本人は鈍感で、それが許せなかった?」
「…っ…」
「そんな中キースさんが来て、彼女に罪をなすりつけて花火を傷付けようとしたの?」
私が推理したわけではないのに、何故かそんな推測が私の口から溢れ出る。怖いくらいにするすると、第三者の視点から語られる。
私は彼女の耳元から唇を離して、じっと彼女の瞳を見つめた。そのタイミングで、体がやっと私の意思に従うようになった。さっきまで、別の人に体を乗っ取られていたみたいだ。
「…違うの…違うのよ…っ!」
膝から崩れ落ちてしゃがみこむ女性。
「あの…」
「この方は私がメイド長さんの元へ連れて行きます。夕音さんは、花火さんをお願いします」
キースさんがそっと呟く。私は先程までの気迫を失い、キースさんの意思に従うしかなかった。
キースさんが女性を連れてその場を去るのを見て、私は花火の元へ駆け寄った。花火はやっと片倉さんから解放されて、恥ずかしさからか頬を赤らめていた。
「…花火さん、その怪我は…」
「やめなさい作夜」
片倉さんがそう聞こうとするのを扇様が制する。
「客人にこんなところ見せて申し訳ないわ。作夜、花火、貴方達がちゃんとけじめをつけないからこうなるのよ。しっかりしなさい」
流石お嬢様、といったところか。付き人への指示に威厳がある。
「…は、はい…?」
花火は首を傾げていたが、片倉さんは視線を落として静かに頷いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

讃美歌 ② 葛藤の章               「崩れゆく楼閣」~「膨れ上がる恐怖」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...