神様自学

天ノ谷 霙

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11月14日 バラ3本

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温かいものがじんわりと伝わってくる。"晴れ"が冷えた空気を温めていくようだった。
「花火の、鈍感な上に気遣い屋なところ…どうにかなりませんかね…」
天さんの心配を聞いて、私はそっと微笑む。
「多分、大丈夫だと思いますよ?」
ぱたぱたと音が聞こえ、それが足音だと判断する。ノックの音と失礼しますの声の後、入って来たのは花火。
「あ、あれ…夕音と、天ちゃん?」
天さんが立ち上がったので、私もつられて立ち上がる。
「扇様と紺様はお二人で散歩がしたいと仰るので、私は夕音とお話させて頂いていましたわ」
「そうなのね。えっと、夕音もごめんね。ずっと放置になっちゃって」
「大丈夫だよ。天さんと話してたし。それより、片倉さんとお話は出来た?」
私の言葉に、花火は頬を赤く染めて俯く。目を逸らそうとするが、その反応にある程度察しがつく。
「…あ、あの…バラを3本渡されて…」
「バラを3本?」
天さんの口調から敬語が少しずつ外れていく。私はそれに気付かないふりをして、3本のバラの意味を脳裏に浮かべた。
「『告白』、『愛しています』だったよね」
花火ははにかんで、ゆっくりと頷いた。幸せそうな表情に、私も天さんもつられて笑顔になる。
「やっと、ね」
「ですね」
「やっと??」
私と天さんの見守るような笑顔を見て、花火は恥ずかしそうに怒る。その時、ノックとドアの開く音がした。ドアの奥から現れたのは、扇様と紺様。
「あら花火、話は終わったの?」
「お嬢様。えぇ、お陰様で」
「そう、なら良かったわ。お仕事も忘れないでね」
「はい。勿論私はお嬢様最優先です」
にこっと笑う花火に、嬉しそうに笑う扇様。紺様は扇様の奥から顔を出し、天さんの側に寄った。
「何があったんだい?」
「後でお話し致します」
天さんは先程の柔らかい表情から、凛とした仕事モードにいつの間にか変わっていた。
「…紺様、お話しは済みましたか?」
「あぁ。後は今日の夜の会食だなぁ…」
「承知致しました」
私はそっと花火の方に寄り、会食について聞く。扇様のお父さんを始めとした澪愛家と、紺様の鳳凰家で食事をするという。なんだか、忙しい時に来てしまったなぁと思う。
「それじゃあ私はもう帰るよ。準備とかで忙しいだろうし」
「えっ…まだお話…全然…」
扇様が名残惜しそうに呟いたのが聞こえ、そっと振り返る。
「また今度、呼んで頂ければ来ます。だからその時にたくさんお話ししましょう」
笑顔で私はそう告げた。扇様は「次」があることに喜び、了承してくれた。
「またね、夕音」
「はい、また」
私は花火に連れられて、使用人塔から出る。
「今日はごめんなさいね」
「大丈夫だよ。無理しないでね」
「ありがとう、またね」
「うん、またね」
そう言って私は、その場を後にした。

「…あの子が、新しい恋使か」

呟く誰かの声は、私の耳に届かなかった。
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