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暗闇sky 来
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「来ー、ちょっと明日の朝のパン買って来てー」
階段下から母の声が聞こえた。僕は「はーい」と返事をして一階へ降りた。
「今日買い忘れちゃって…ごめんねー。お釣りはあげるから」
「わかりましたっ。いってきまーす」
貰った千円札を財布に入れ、外へ出る。夕暮れ時を少し過ぎた空は一番星が輝いていた。小さい頃、グラデーションと呼んでいた色の違う空は美しくて、思わず見惚れていた。
買い物を済まして、ビニール袋を揺らしながら帰り道を行く。すっかり暗くなった空は、満月が眩しかった。
その時だった。奥から凄い勢いで走ってくる女の子を見たのは。
どんっ
ぶつかった衝撃でよろける女の子を、支えると女の子は焦ったように「すみません!」と謝った。僕はその声と姿に見覚えがあった。
「き、桐竜さん…?」
「…へ?」
顔を上げた桐竜さんは僕のことを見て驚いたように目を見開いた。
「し、潮賀くんっ!どうしたの!?」
「え、えっ?桐竜さんこそ、どうしたのですか!?」
「あ、ご、ごめんねっ!ぶつかっちゃって…痛くなかった!?」
話が飛び飛びになっている上、いきなり謝る桐竜さんを見て思わず笑みがこぼれた。
「ふふっ…桐竜さん、深呼吸して下さい」
「えっ、えっと…」
目を瞑って大きく呼吸をする。桐竜さんは月の光が顔に当たり美しかった。ひとつ、大きな呼吸をすると大きな丸い瞳をあけて
「あ、ありがとう!」
と言った。僕はその様子に微笑んだ。
「どういたしまして。そんなに焦って、どうしたのですか?」
「え、と…お守り、頂いてきて…」
「あぁ、霜月神社近いですもんね!あそこ、想う人には強いみたいですよ」
お守り。桐竜さんが走ってきた方を見つめると、確かあちらには霜月神社があったな、と思い出す。確か娘が二人いるのに、片方は滅多に見られないからそちらを見ると幸運が訪れる、とか…ラッキーとか、噂になっていたなと思い出した。その時。
「し、潮賀くん!!」
桐竜さんに思いっきり服を掴まれた。僕は驚いて桐竜さんを見つめてしまった。
「き、桐竜さん…?大丈夫ですか?」
「…ぁ、え、っと…」
言葉に詰まった桐竜さんを見て、頬が赤く染まっているのが見えた。何かわからないけれど、照れているようだ。落ち着かせる為、妹によくやるように頭に手を乗せる。
「帰りましょうか。送りますよ」
「うんっ!ありがとう」
僕が話を切るとほっとしたように笑った。
それから一緒に歩いて帰った。
満月の下、桐竜さんは儚い輝きを帯びて美しく存在していた。学校一モテる女の子と噂されるのが納得できる人だと思う。
「桐竜さんの家ってどこですか?」
「えっと…夏みかん公園の近く、かな」
「あっそうなんですか!?僕も夏みかん公園の近くですよ!なんか、嬉しいです」
桐竜さんみたいに可愛くて素直な女の子と家が近いなんて、嬉しいなぁ…。
僕はそう思って、自然と笑顔になった。すふと隣にいる桐竜さんは顔を真っ赤にして僕を見る。
「桐竜さん?」
「あっ、は、はいっ!?」
「どうしたんですか?もう、夏みかん公園に着きますよ」
指をさすと、前方に見えてくるのは夏みかん公園。子供達の大好きな遊具がパステルカラーに彩られて所狭しと並んでいる。
「あっ本当だ…っ。送ってくれてありがとう、潮賀くん」
「いいえ。えっと、家までちゃんと送りますよ?」
「あっ、あそこなの。だから大丈夫!」
桐竜さんが指さしたのは薄いレモン色の壁が特徴的な一軒家。雰囲気が似ている、可愛らしい家だと思った。
「あ、そうなのですか?じゃあここで、お別れですね…」
少し寂しくなって苦笑いになってしまう。それに気付いたのか桐竜さんは「あ、あのっ」と言った。
「今日は、ありがとう。帰り道、楽しかった…です」
「僕も楽しかったです。ありがとうございました、桐竜さん」
「あっえっと、また学校で!」
「はい、また学校で」
そう言うと、桐竜さんは照れながら手を振ってくれた。僕は嬉しくなって笑顔で手を振り返し、桐竜さんが家に入ったタイミングで僕も帰路につく。桐竜さんの家から2、3分。瑠璃色の屋根が特徴的な一軒家。それが僕の家。
楽しかったなぁ。
僕はそう思いながら、玄関の扉を開けた。
階段下から母の声が聞こえた。僕は「はーい」と返事をして一階へ降りた。
「今日買い忘れちゃって…ごめんねー。お釣りはあげるから」
「わかりましたっ。いってきまーす」
貰った千円札を財布に入れ、外へ出る。夕暮れ時を少し過ぎた空は一番星が輝いていた。小さい頃、グラデーションと呼んでいた色の違う空は美しくて、思わず見惚れていた。
買い物を済まして、ビニール袋を揺らしながら帰り道を行く。すっかり暗くなった空は、満月が眩しかった。
その時だった。奥から凄い勢いで走ってくる女の子を見たのは。
どんっ
ぶつかった衝撃でよろける女の子を、支えると女の子は焦ったように「すみません!」と謝った。僕はその声と姿に見覚えがあった。
「き、桐竜さん…?」
「…へ?」
顔を上げた桐竜さんは僕のことを見て驚いたように目を見開いた。
「し、潮賀くんっ!どうしたの!?」
「え、えっ?桐竜さんこそ、どうしたのですか!?」
「あ、ご、ごめんねっ!ぶつかっちゃって…痛くなかった!?」
話が飛び飛びになっている上、いきなり謝る桐竜さんを見て思わず笑みがこぼれた。
「ふふっ…桐竜さん、深呼吸して下さい」
「えっ、えっと…」
目を瞑って大きく呼吸をする。桐竜さんは月の光が顔に当たり美しかった。ひとつ、大きな呼吸をすると大きな丸い瞳をあけて
「あ、ありがとう!」
と言った。僕はその様子に微笑んだ。
「どういたしまして。そんなに焦って、どうしたのですか?」
「え、と…お守り、頂いてきて…」
「あぁ、霜月神社近いですもんね!あそこ、想う人には強いみたいですよ」
お守り。桐竜さんが走ってきた方を見つめると、確かあちらには霜月神社があったな、と思い出す。確か娘が二人いるのに、片方は滅多に見られないからそちらを見ると幸運が訪れる、とか…ラッキーとか、噂になっていたなと思い出した。その時。
「し、潮賀くん!!」
桐竜さんに思いっきり服を掴まれた。僕は驚いて桐竜さんを見つめてしまった。
「き、桐竜さん…?大丈夫ですか?」
「…ぁ、え、っと…」
言葉に詰まった桐竜さんを見て、頬が赤く染まっているのが見えた。何かわからないけれど、照れているようだ。落ち着かせる為、妹によくやるように頭に手を乗せる。
「帰りましょうか。送りますよ」
「うんっ!ありがとう」
僕が話を切るとほっとしたように笑った。
それから一緒に歩いて帰った。
満月の下、桐竜さんは儚い輝きを帯びて美しく存在していた。学校一モテる女の子と噂されるのが納得できる人だと思う。
「桐竜さんの家ってどこですか?」
「えっと…夏みかん公園の近く、かな」
「あっそうなんですか!?僕も夏みかん公園の近くですよ!なんか、嬉しいです」
桐竜さんみたいに可愛くて素直な女の子と家が近いなんて、嬉しいなぁ…。
僕はそう思って、自然と笑顔になった。すふと隣にいる桐竜さんは顔を真っ赤にして僕を見る。
「桐竜さん?」
「あっ、は、はいっ!?」
「どうしたんですか?もう、夏みかん公園に着きますよ」
指をさすと、前方に見えてくるのは夏みかん公園。子供達の大好きな遊具がパステルカラーに彩られて所狭しと並んでいる。
「あっ本当だ…っ。送ってくれてありがとう、潮賀くん」
「いいえ。えっと、家までちゃんと送りますよ?」
「あっ、あそこなの。だから大丈夫!」
桐竜さんが指さしたのは薄いレモン色の壁が特徴的な一軒家。雰囲気が似ている、可愛らしい家だと思った。
「あ、そうなのですか?じゃあここで、お別れですね…」
少し寂しくなって苦笑いになってしまう。それに気付いたのか桐竜さんは「あ、あのっ」と言った。
「今日は、ありがとう。帰り道、楽しかった…です」
「僕も楽しかったです。ありがとうございました、桐竜さん」
「あっえっと、また学校で!」
「はい、また学校で」
そう言うと、桐竜さんは照れながら手を振ってくれた。僕は嬉しくなって笑顔で手を振り返し、桐竜さんが家に入ったタイミングで僕も帰路につく。桐竜さんの家から2、3分。瑠璃色の屋根が特徴的な一軒家。それが僕の家。
楽しかったなぁ。
僕はそう思いながら、玄関の扉を開けた。
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