神様自学

天ノ谷 霙

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12月9日 夢術

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目が覚めたのは、午後6時過ぎだった。薬のおかげか、寝たからか、身体の怠さは少しだけ軽減されていた。自分の額を触ってみるが、熱いかどうかは分からなかった。服の中を伝う汗が気持ち悪くて、近くに置かれていたタオルで適当に拭う。少し快適になったところで、私はもう一度ベッドに寝そべった。
何度も夢を見ている気がするのに、起きたら苦しいのに、何の夢を見たか思い出せなかった。喉元で引っかかるむず痒さが気持ち悪くて、変な感じがする。「覚えてないならそんなに大切なことじゃないんだ」と自分に言い聞かせて忘れたいのに、どうしても私の奥の方が警鐘を鳴らして、忘れさせてくれない。必死に思い出そうと脳が回転する。けれど今は体力を既に消耗している状態。脳に回す糖分が不足していて、結局思う通りに脳を働かせることが出来ない。余計むず痒くなるだけだった。
はぁ、と。
1つ溜め息をついて、毛布から両手を出す。天井に向けて伸ばしたその手を、私はじっと見つめる。力を入れても、何かを念じても、変わることはない両の手。視界の中でグラグラと揺れ、力を抜いた瞬間ベッドに勢いよく落下する。暇潰しにもなりはしないその行動に、少しだけ楽しさというか心地良さを感じた。だがもう一度やろうと思うほどではない。私は毛布で再び全身を覆って、眠りについた。

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

どうしてなんだろう。どうしてあの娘は、稲森 夕音は、私の術を破ることが出来るのかしら。
彼女の枕元に降りて、私はそっと口の中でひとりごちる。彼女が眠る度に体を奪おうとしているのに、その"恋使"の能力ちからを奪おうと悪夢を見せているのに、彼女が屈服することは無かった。それどころか自分の黒い部分も受け入れて浄化してしまった。
どうして?どうしてそんなに強くなれるの?
私は恋使あなたの力を得て、強くなって、それで、それで────。
それで?
私はどうすれば良いの?
あの人は、私の愛しいあの人は、もう、いないのに。

私は気付いてはいけなかった。気付いてはいけない筈だった。ヒトへの想いに。神とヒトとの身分差に。埋まらない時の差に。愛しいという気持ちさえ、神が個人に抱いてはいけない感情だった。その筈なのに。私はいつの間にか戻れないところまで来ていた。恋情に揺り動かされて、気付けなくなっている。簡単な問いに、私はもはや気付けないでいる。多分、稲荷も。私も稲荷も、落ちたものね。あの子の気配を感じ取れないなんて。
そんな感想は、全てが終わった今だから言えるんだけどね。
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