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部活adventure 実栗
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お兄ちゃんに彼女ができた。そんなことを聞いて早一ヶ月。私は今日、お兄ちゃんの高校へ行ってきます。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
「さっきからなんか…音楽室の前うろうろしている人がいるんすけど…」
「あー、あれ?確か藤上の妹だよ。確か実栗ちゃん」
「藤上の?俺、ちょっと行ってきます」
「…初めまして。えっと…藤上さん?」
「っみ、実栗に何のご用ですか!!」
話しかけてきた吹奏楽部っぽいお兄さんの顔が引きつっていた。
「冬間くん、どうし…あれ?どうしたのその子」
優しそうなハーフアップのお姉さんが通りがかったので、実栗は咄嗟に叫ぶ。
「ゆ、結佑人兄のす、好きな人って誰ですか!?」
「え!?え…えっと…」
お姉さんはチラッとさっきのお兄さんを確認する。耳打ちでこそっと
「演劇部にいるんじゃないかしら…?」
と言ってくれた。
「ここが演劇部…」
実栗はそっとドアを開けた。キィイ…っと扉が軋んだ。
『あんた…何よ…!!それじゃあ…最初から私は……っだったのね!!』
演劇部であろう声が聞こえる。実栗はその声の主をじっと見ていた。水色のシュシュで髪を結び、肩に下ろした女の子だった。
いつの間にか隣に、白いパーカーを被り、ほぼ姿が見えない人が立っていた。
「どうしたの?見学?」
声は女の子らしかった。実栗は慌てて話す。
「結佑人兄の好きな人…知りませんか?」
「藤上くん?えーっと…どうだろう。あのお姉さんに聞くと良いかも」
指さしたのは、さっき大きな声で演技をしていたお姉さん。
「ねぇ霙、藤上くんの好きな人って誰かわかるよね?」
「は!?な、何…が…っ」
お姉さんの顔が真っ赤になった。
「そっかぁ、わかんないかぁ。でもここにはいないかなー?そうだ!一つ一つ部活回ってみたらどうかな?」
白いパーカーのお姉さんがにこにこと話す。さらり、と秋のイチョウ色の髪が肩に落ちた。サイドテールをフードの中に隠していたらしい。
「は、はいっ!」
実栗は廊下を一人で歩いていた。教室の札のようなものに「写真部」と書かれていたので、入ってみた。
「ようこそ、写真部へ!」
前髪を左右で2つずつピンで留めた、ショートカットのお姉さんがそう話してくれた。私は同じ質問を繰り返したけれど、写真部にはいないようだった。
それから、
「…女子テニス部」には毛先の白いお姉さんが。
「美術部へようこそ!」とふわふわのショートカットに眼鏡のお姉さんが。
「…漫研」と長い黒髪を左側だけ小さなピンで留めたお姉さんが。
「卓球!」と元気いっぱいの口調が方言のようなお姉さんが。
「PC」と複雑な髪の毛をしたお姉さんが。
「「帰宅部」」と太めの三つ編みをしたお姉さんと、咳をたくさんしていた髪の色が薄いお姉さんが。
「水泳」と眼鏡をしたお兄さんが。声をかけられて少し怖かった。
「こんにちは、科学部です」と優しそうな、カラフルなピンを3つつけたお兄さんが。
実栗は結構回った。まだ行っていないところもあるけれど、全然見つからない。お兄ちゃんも見つからない。
「もう!お兄ちゃん何処!?」
「あの、大丈夫?」
目の前には、さほど身長の変わらないお姉さんがいた。歳はわからないけれど、制服だから先輩だろう。実栗は寂しくなって涙をこぼした。
「実栗?」
実栗の名前を呼ぶ声がした。実栗はその声の主を知っているからか、安心して涙が止まらなくなった。
「す、すいません!な、泣き出してしまって、どうしていいか…」
「だって…だってぇ…」
実栗はしゃくりあげながら言葉を紡いだ。
「お、おにぃちゃんの…っ好きな人、探しても…みつかりゃないし…っか、かのじょになったのに…二股して、る…とかぁ…」
「み、みく…」
「お兄ちゃんの、お兄ちゃんのっ…ばかぁあっ」
実栗が泣いているのを見て、1つため息を吐くと頭を撫でてくれた。体温が、気持ちよかった。
いつの間にか、お兄ちゃんと家に帰っていた。寝てしまったようで、おぶって帰ってくれたようだ。
実栗のお兄ちゃんは、割と優しい。
そんなこと、一生言わないけれど。
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「さっきからなんか…音楽室の前うろうろしている人がいるんすけど…」
「あー、あれ?確か藤上の妹だよ。確か実栗ちゃん」
「藤上の?俺、ちょっと行ってきます」
「…初めまして。えっと…藤上さん?」
「っみ、実栗に何のご用ですか!!」
話しかけてきた吹奏楽部っぽいお兄さんの顔が引きつっていた。
「冬間くん、どうし…あれ?どうしたのその子」
優しそうなハーフアップのお姉さんが通りがかったので、実栗は咄嗟に叫ぶ。
「ゆ、結佑人兄のす、好きな人って誰ですか!?」
「え!?え…えっと…」
お姉さんはチラッとさっきのお兄さんを確認する。耳打ちでこそっと
「演劇部にいるんじゃないかしら…?」
と言ってくれた。
「ここが演劇部…」
実栗はそっとドアを開けた。キィイ…っと扉が軋んだ。
『あんた…何よ…!!それじゃあ…最初から私は……っだったのね!!』
演劇部であろう声が聞こえる。実栗はその声の主をじっと見ていた。水色のシュシュで髪を結び、肩に下ろした女の子だった。
いつの間にか隣に、白いパーカーを被り、ほぼ姿が見えない人が立っていた。
「どうしたの?見学?」
声は女の子らしかった。実栗は慌てて話す。
「結佑人兄の好きな人…知りませんか?」
「藤上くん?えーっと…どうだろう。あのお姉さんに聞くと良いかも」
指さしたのは、さっき大きな声で演技をしていたお姉さん。
「ねぇ霙、藤上くんの好きな人って誰かわかるよね?」
「は!?な、何…が…っ」
お姉さんの顔が真っ赤になった。
「そっかぁ、わかんないかぁ。でもここにはいないかなー?そうだ!一つ一つ部活回ってみたらどうかな?」
白いパーカーのお姉さんがにこにこと話す。さらり、と秋のイチョウ色の髪が肩に落ちた。サイドテールをフードの中に隠していたらしい。
「は、はいっ!」
実栗は廊下を一人で歩いていた。教室の札のようなものに「写真部」と書かれていたので、入ってみた。
「ようこそ、写真部へ!」
前髪を左右で2つずつピンで留めた、ショートカットのお姉さんがそう話してくれた。私は同じ質問を繰り返したけれど、写真部にはいないようだった。
それから、
「…女子テニス部」には毛先の白いお姉さんが。
「美術部へようこそ!」とふわふわのショートカットに眼鏡のお姉さんが。
「…漫研」と長い黒髪を左側だけ小さなピンで留めたお姉さんが。
「卓球!」と元気いっぱいの口調が方言のようなお姉さんが。
「PC」と複雑な髪の毛をしたお姉さんが。
「「帰宅部」」と太めの三つ編みをしたお姉さんと、咳をたくさんしていた髪の色が薄いお姉さんが。
「水泳」と眼鏡をしたお兄さんが。声をかけられて少し怖かった。
「こんにちは、科学部です」と優しそうな、カラフルなピンを3つつけたお兄さんが。
実栗は結構回った。まだ行っていないところもあるけれど、全然見つからない。お兄ちゃんも見つからない。
「もう!お兄ちゃん何処!?」
「あの、大丈夫?」
目の前には、さほど身長の変わらないお姉さんがいた。歳はわからないけれど、制服だから先輩だろう。実栗は寂しくなって涙をこぼした。
「実栗?」
実栗の名前を呼ぶ声がした。実栗はその声の主を知っているからか、安心して涙が止まらなくなった。
「す、すいません!な、泣き出してしまって、どうしていいか…」
「だって…だってぇ…」
実栗はしゃくりあげながら言葉を紡いだ。
「お、おにぃちゃんの…っ好きな人、探しても…みつかりゃないし…っか、かのじょになったのに…二股して、る…とかぁ…」
「み、みく…」
「お兄ちゃんの、お兄ちゃんのっ…ばかぁあっ」
実栗が泣いているのを見て、1つため息を吐くと頭を撫でてくれた。体温が、気持ちよかった。
いつの間にか、お兄ちゃんと家に帰っていた。寝てしまったようで、おぶって帰ってくれたようだ。
実栗のお兄ちゃんは、割と優しい。
そんなこと、一生言わないけれど。
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