418 / 812
12月23日 用件
しおりを挟む
クリスマス直前というか、冬休み直前でも部活はあるらしい。私は特にやることはないので帰り支度をする。そこでたまたま、廊下をすれ違った五十嵐くんに気付く。五十嵐くんもこちらに気付いたらしく、ふっと笑顔を見せてくれる。
「やぁ、稲森さん」
「部活?」
「うん、まぁ。そんなとこ」
曖昧に笑う五十嵐くんに、何だか違和感を感じた。何かを隠して笑う人は、心の音を聞き取れる私には違和感として映る。そういう人が友人に多過ぎて、つい踏み込んでしまう。
「私も行っていい?」
「え、どうして?」
「少し前に、いくつか部活見学したんだ。科学部と天文部。それで、写真部も見てみたいなって」
「そうなんだ」
相槌を打つ五十嵐くんはどこか上の空で、なんとなく断りたがっているように見えた。見えたからと言って、空気を読むとは限らないけど。笑顔で了承してくれたが、向かうのは部室の方向ではなかった。気付いてはいても、それを指摘はしない。あまり人の来ない場所、前に霙が酸欠になった際に来ていた場所まで案内された。冬も本格的になってきた12月下旬に、風通しの良い廊下はとても寒い。マフラーや手袋で防寒をしていても震えてしまいそうだ。
「それで、本当の理由は?」
立ち止まった五十嵐くんが、振り向きながらそう言った。私の嘘に気付いていたらしい。嘘というか、適当に合わせて言っただけだ。
「本当の、って?」
「冬休み直前に部活見学なんてしないでしょ。ボクに何か話でもあるの?」
五十嵐くんに話、と聞いて思い出したのは半月前のこと。菜古ちゃんに相談されていたな、とふと思い出す。あの後爽に「馬鹿」と言われてすっかり忘れていた。
「まどろっこしい話は無しにしてさ。単刀直入に言ってよ」
ふっと笑う五十嵐くん。部活について話してくれたときはこんなにピリピリした笑顔を向けるようなことはなかった。何か、あったのだろうか。
「亜美が、好きだったの?」
私の直接的な言葉に、五十嵐くんは予想外だとでもいうように目を見開いて、やがて眉尻を下げて笑った。
「好きだったよ。わかりやすかった?」
本当は菜古ちゃんから聞いただけだが、それについては触れない方が良いだろう。沈黙を肯定と取ったらしい五十嵐くんは、風の根本、窓の方を見て笑った。
「ボクは割と一途でね。幼い頃から引っ越してくるまでずっと好きだった人がいたんだよ。親戚付き合いで遠い昔に何度か会っただけだけど、ボクを引っ張ってくれる彼女が好きだった。親の仕事の関係もあるけど、彼女との再会を夢見てこっちに来たんだ」
五十嵐くんは語り出す。いとこの少女との出会いを。オレンジのふわふわのショートカットに、黒縁眼鏡が似合う小柄な女の子のことを。
今入 紗奈のことを。
「やぁ、稲森さん」
「部活?」
「うん、まぁ。そんなとこ」
曖昧に笑う五十嵐くんに、何だか違和感を感じた。何かを隠して笑う人は、心の音を聞き取れる私には違和感として映る。そういう人が友人に多過ぎて、つい踏み込んでしまう。
「私も行っていい?」
「え、どうして?」
「少し前に、いくつか部活見学したんだ。科学部と天文部。それで、写真部も見てみたいなって」
「そうなんだ」
相槌を打つ五十嵐くんはどこか上の空で、なんとなく断りたがっているように見えた。見えたからと言って、空気を読むとは限らないけど。笑顔で了承してくれたが、向かうのは部室の方向ではなかった。気付いてはいても、それを指摘はしない。あまり人の来ない場所、前に霙が酸欠になった際に来ていた場所まで案内された。冬も本格的になってきた12月下旬に、風通しの良い廊下はとても寒い。マフラーや手袋で防寒をしていても震えてしまいそうだ。
「それで、本当の理由は?」
立ち止まった五十嵐くんが、振り向きながらそう言った。私の嘘に気付いていたらしい。嘘というか、適当に合わせて言っただけだ。
「本当の、って?」
「冬休み直前に部活見学なんてしないでしょ。ボクに何か話でもあるの?」
五十嵐くんに話、と聞いて思い出したのは半月前のこと。菜古ちゃんに相談されていたな、とふと思い出す。あの後爽に「馬鹿」と言われてすっかり忘れていた。
「まどろっこしい話は無しにしてさ。単刀直入に言ってよ」
ふっと笑う五十嵐くん。部活について話してくれたときはこんなにピリピリした笑顔を向けるようなことはなかった。何か、あったのだろうか。
「亜美が、好きだったの?」
私の直接的な言葉に、五十嵐くんは予想外だとでもいうように目を見開いて、やがて眉尻を下げて笑った。
「好きだったよ。わかりやすかった?」
本当は菜古ちゃんから聞いただけだが、それについては触れない方が良いだろう。沈黙を肯定と取ったらしい五十嵐くんは、風の根本、窓の方を見て笑った。
「ボクは割と一途でね。幼い頃から引っ越してくるまでずっと好きだった人がいたんだよ。親戚付き合いで遠い昔に何度か会っただけだけど、ボクを引っ張ってくれる彼女が好きだった。親の仕事の関係もあるけど、彼女との再会を夢見てこっちに来たんだ」
五十嵐くんは語り出す。いとこの少女との出会いを。オレンジのふわふわのショートカットに、黒縁眼鏡が似合う小柄な女の子のことを。
今入 紗奈のことを。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる