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髪をとかして 作夜
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いつも女性が私の周りに集まってくる。私はどうすれば良いのかわからずただ困るだけ。だからか、私の周りに来ない女性が気になった。その中でも、1人の女性が気になった。勿論、少女漫画などでよくある「アイツ、絶対俺に振り向かせてやる」という恋愛的な気になるではなく、表情が気になったのだ。私や他人と話すときは優しい笑顔なのに、一人でいる時、たまに不快そうな顔をする。私が女性に囲まれている時は遠目から怪訝そうな顔をする。それが気になり、私は休憩時間に庭を歩いていた。すると、花によって影になっている場所に、女性の姿が見えた。
「あの…?」
思わず声をかけると、振り返りもせずに
「何ですか」
と冷たい声が響いた。背筋が冷えそうなほど冷たい声だったけれど、そこには本当の感情を隠しているような気もした。だから私は歩み寄ってみたくて、話を続けた。
「髪、直して良いですか?」
無反応な女性。嫌ならば「何処かへ行け」と拒絶すると思うが、そんな様子も感じられない。この人は、そんな気力さえも失われているようだった。
「少しだけだから…………髪綺麗…素敵だな」
扇様の世話のため、持てるものは常に持っている。髪など気にしない扇様が婚約者様に会った時、恥ずかしい思いをしないようになどの考えからだ。髪を触ると、それは元々とても気にしているようで、泥のついている所以外はサラサラだった。手櫛でも大丈夫そうなくらいに。やがて泥は落ち、ストレートに戻った。そこで終わりにしても良かったのだが、なんとなく私と対になる太い三つ編みを私から見て左側に結ぶ。綺麗に結び終わったことに満足し、手を離すと、女性は静かに礼を言った。私もどういたしまして、と返すと、そわそわしたように女性は呟いた。
「名前は…」
私はいきなり言われて少し驚いたが、まっすぐ目を見て言った。
「…片倉作夜です、以後お見知りおきを」
作夜、と聞いた瞬間、女性が怪訝そうな顔をした。この顔には見覚えがあり、名前を聞こうとすると、相手から名乗ってくれた。
「私は、稲峯花火と申します。宜しくお願い致しますわ」
花火、やはり。
集団の女性が噂をしていた。「仕事をそつなくこなすけれど、何か近寄りがたい」だとか「格が違う感じがする」とか「憧れる」とか。私が聞くのはそんな言葉ばかりだったけれど、稲峯さんの姿を見ると、それ以外の妬みの目で見る人もいるようだ。
そんなことを考えながら会話をしていると、稲峯さんは微かに唇と肩を震わせていた。女性が噂していた、と私が話した後くらいからだった。触れられたくなかったようだと気付いたのは、もう話した後だった。
「それでは戻りますわ。髪、ありがとうございました」
貼り付けたような笑顔でお辞儀をし、そのまま走って行ってしまう。
私はその背中を見ていた。
何故そんな小さな背中で背負わなければいけないのだろうか。
何故そんなに自分を隠すのだろうか。
「稲峯さん」をちゃんと見ていない人は、極少数なのに。
それに気付けぬ程に辛い思いをしているのだろうか。
私に、何か救える手立ては無いだろうか。
そんな事を考えながら私は扇様の世話に戻った。
「あの…?」
思わず声をかけると、振り返りもせずに
「何ですか」
と冷たい声が響いた。背筋が冷えそうなほど冷たい声だったけれど、そこには本当の感情を隠しているような気もした。だから私は歩み寄ってみたくて、話を続けた。
「髪、直して良いですか?」
無反応な女性。嫌ならば「何処かへ行け」と拒絶すると思うが、そんな様子も感じられない。この人は、そんな気力さえも失われているようだった。
「少しだけだから…………髪綺麗…素敵だな」
扇様の世話のため、持てるものは常に持っている。髪など気にしない扇様が婚約者様に会った時、恥ずかしい思いをしないようになどの考えからだ。髪を触ると、それは元々とても気にしているようで、泥のついている所以外はサラサラだった。手櫛でも大丈夫そうなくらいに。やがて泥は落ち、ストレートに戻った。そこで終わりにしても良かったのだが、なんとなく私と対になる太い三つ編みを私から見て左側に結ぶ。綺麗に結び終わったことに満足し、手を離すと、女性は静かに礼を言った。私もどういたしまして、と返すと、そわそわしたように女性は呟いた。
「名前は…」
私はいきなり言われて少し驚いたが、まっすぐ目を見て言った。
「…片倉作夜です、以後お見知りおきを」
作夜、と聞いた瞬間、女性が怪訝そうな顔をした。この顔には見覚えがあり、名前を聞こうとすると、相手から名乗ってくれた。
「私は、稲峯花火と申します。宜しくお願い致しますわ」
花火、やはり。
集団の女性が噂をしていた。「仕事をそつなくこなすけれど、何か近寄りがたい」だとか「格が違う感じがする」とか「憧れる」とか。私が聞くのはそんな言葉ばかりだったけれど、稲峯さんの姿を見ると、それ以外の妬みの目で見る人もいるようだ。
そんなことを考えながら会話をしていると、稲峯さんは微かに唇と肩を震わせていた。女性が噂していた、と私が話した後くらいからだった。触れられたくなかったようだと気付いたのは、もう話した後だった。
「それでは戻りますわ。髪、ありがとうございました」
貼り付けたような笑顔でお辞儀をし、そのまま走って行ってしまう。
私はその背中を見ていた。
何故そんな小さな背中で背負わなければいけないのだろうか。
何故そんなに自分を隠すのだろうか。
「稲峯さん」をちゃんと見ていない人は、極少数なのに。
それに気付けぬ程に辛い思いをしているのだろうか。
私に、何か救える手立ては無いだろうか。
そんな事を考えながら私は扇様の世話に戻った。
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