神様自学

天ノ谷 霙

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1月9日 変化

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やっと落ち着いた私から、ゆっくりと稲荷様が離れる。その頬は少し赤く染まっていて、ヒトと同じように照れているのだとわかった。
「ありがとうございました」
「あぁ」
私はすっと立ち上がって、障子に手を掛ける。確認だけしたかったのだ。あまり長居をして帰りが遅くなれば、散歩と称して神社まで来たことがバレて親に怒られてしまう。神社までは電車に乗る必要があるので、もはや散歩ではないことがバレてしまう。流石に退院した直後でここまで動いたことが知られれば信用は地に落ちるだろう。何が何でも出掛ける際に羅樹やら誰やらをけしかけられる恐れがある。
「夕音」
ふと背中に声を掛けられて、私は半身で振り返る。
「わたしの恋使とはいえ、夕音は人間だ。ヒトは脆く儚く弱い者。…無理はするな」
「…わかりました。気を付けます」
そう言って微笑み、そっと障子を閉めた。再度狐に案内され、稲荷様の元を後にする。

私のいなくなった部屋で、使いの狐が稲荷様に問い掛ける。
「…稲荷様、どうかなさったんですか?」
「何がだ?」
「夕音様にあのような注告をなされたので」
「…あぁ。大したことはない。少し、気になっただけだ」
「気になった?」
稲荷様は頷き、目を閉じて先程までの出来事を思い出す。同時に思い出すのは、数百年前の記憶。ヒトにとっては長い年月も、神と崇められる者にとっては瞬きの間でしかない。まだ鮮明に浮かぶ、元恋使との別れの記憶が瞼の裏で密かに痛みを訴えた。それはまるで、注告であるかのように。
「…夕音の力が、以前より変わりつつある。繋ぎ直した時から感じていたが、今日、目の前にして改めて感じた」
「そんな筈は。我々の力は不変で御座います。成長した、ならば理解出来ますが」
「違う。あれは根本が変わりつつある。力が変化している、としか形容出来ない。あんなことは、我々にも起こり得ない」
稲荷様はそこで言葉を区切り、深く息を吐いた。赤の瞳に宿す妖力に、以前との差異を感じた。蓮乃のように色で見分ける能力はない稲荷様には、感覚としか言えないそれで夕音の力の変化を感じ取っていた。しかし経験のない出来事に、戸惑いを隠せない。考えても答えは出ない。けれども、問い掛けざるを得ない。
「───夕音に一体、何が起きている?」

そんな会話に気付くこともなく、夕音は1人帰路を歩んでいた。サクサクと歩き進めて、あっという間に家に着く。「ただいま」と声を上げて中に入れば、優しく声が返って来た。神社まで行ったことには気付かれていないようだ。ホッと安堵しつつ、扉を閉める。力の異変に、気付かぬままに。
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