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1月27日 幻の代償
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帰路を歩む中、話の糸口を探していた私に羅樹が先に口を開いた。
「今日はずっと下ろしてたの?」
「へ?」
その視線が髪に注がれていることに気付き、私は小さく頷いた。問い掛けてきた割にはその後の相槌も何となく素っ気ないもので、会話は弾まない。
「あ、朝も言ったけど急いでたし。結ぼうにもしっかりした櫛がないと、私の長さじゃちゃんと結べないから」
「うん」
流石に大きくてしっかりした櫛を持ってる人は友人達の中にいなかった。演劇部や手芸部なら持っているだろうという話は出たが、わざわざ取りに行ってもらうのは忍びなかったので遠慮したのだ。
言い訳のようになってしまった説明に冷や汗をかきながら、羅樹の機嫌を伺う。何だかいつもと違って、少し険しい顔をしている気がする。長い付き合いだからこそわかる程度のような、いつもと変わらないような、その程度だ。
「ら、羅樹?」
「また疲れが出てるのかもね。帰ったらゆっくり休んだ方が良いよ。あ、熱も測った方が良いかも。危なそうだったら明日も休んで…」
「羅樹!」
私が名前を叫ぶと、羅樹は目をぱちくりとして私の方を向いた。やっぱり変だ。私は眉を寄せて首を傾げた。
「何を怒ってるの?私が何かしたなら謝るから、ちゃんと説明して」
「…え?」
私の言葉に、羅樹は何度かその大きな水色の瞳を瞬く。「おこ、る」と壊れた機械のように呟くと、顔を赤く染めてそっぽを向いてしまった。羅樹の行動が理解出来なくて、今度は私が不機嫌になる。
「何?」
「ごめん、違う…怒ってない、よ」
「嘘。ならさっきの不機嫌そうな態度は何?」
「…そ、れは…」
さっきの饒舌は何処へやら。歯切れ悪く口の中でモゴモゴと呟く羅樹に、鋭い目を向ける。羅樹は何かに納得しているが、私は何が何やらわかっていないのだ。羅樹は罰が悪そうな顔をすると、きょろきょろと辺りを見回した後で私を真っ直ぐ見つめた。
「夕音って、髪を下ろしてると凄く雰囲気が変わるよね」
「うん?」
「皆が見てた。3組の人も他のクラスの人も、皆夕音に注目してたよ。それがちょっと嫌だったみたい。当たってごめんね」
「…んん?」
羅樹の言葉の意味が分からなくて、理解するのに10秒くらい要した。そんなの、まるで。
「ヤキモチ妬いたってこと?」
半信半疑どころか9割疑った状態で問い掛けると、羅樹は一瞬硬直して、恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべた。その笑顔にサクッと心臓を貫かれた後、その表情の意味を飲み込む。
「そんな恋人みたいな…」
「恋人でしょ?」
私がいまいち飲み込めていない現実を、羅樹は当然のように突きつけてくる。恥ずかしさで倒れてしまいそうになりながら、良い振りが来たと口を必死に動かす。
「なら、恋人なら、今週末とか、出掛けない?」
しどろもどろになりながら言葉を紡ぐ。チラッと羅樹の顔を見上げると、きょとんとしていた顔がみるみる明るくなって、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔にも胸の奥が熱くなる。
「いいよ!何処行こうか?」
「えぇっと…」
後の帰路は、デートの計画立案に使われた。
「今日はずっと下ろしてたの?」
「へ?」
その視線が髪に注がれていることに気付き、私は小さく頷いた。問い掛けてきた割にはその後の相槌も何となく素っ気ないもので、会話は弾まない。
「あ、朝も言ったけど急いでたし。結ぼうにもしっかりした櫛がないと、私の長さじゃちゃんと結べないから」
「うん」
流石に大きくてしっかりした櫛を持ってる人は友人達の中にいなかった。演劇部や手芸部なら持っているだろうという話は出たが、わざわざ取りに行ってもらうのは忍びなかったので遠慮したのだ。
言い訳のようになってしまった説明に冷や汗をかきながら、羅樹の機嫌を伺う。何だかいつもと違って、少し険しい顔をしている気がする。長い付き合いだからこそわかる程度のような、いつもと変わらないような、その程度だ。
「ら、羅樹?」
「また疲れが出てるのかもね。帰ったらゆっくり休んだ方が良いよ。あ、熱も測った方が良いかも。危なそうだったら明日も休んで…」
「羅樹!」
私が名前を叫ぶと、羅樹は目をぱちくりとして私の方を向いた。やっぱり変だ。私は眉を寄せて首を傾げた。
「何を怒ってるの?私が何かしたなら謝るから、ちゃんと説明して」
「…え?」
私の言葉に、羅樹は何度かその大きな水色の瞳を瞬く。「おこ、る」と壊れた機械のように呟くと、顔を赤く染めてそっぽを向いてしまった。羅樹の行動が理解出来なくて、今度は私が不機嫌になる。
「何?」
「ごめん、違う…怒ってない、よ」
「嘘。ならさっきの不機嫌そうな態度は何?」
「…そ、れは…」
さっきの饒舌は何処へやら。歯切れ悪く口の中でモゴモゴと呟く羅樹に、鋭い目を向ける。羅樹は何かに納得しているが、私は何が何やらわかっていないのだ。羅樹は罰が悪そうな顔をすると、きょろきょろと辺りを見回した後で私を真っ直ぐ見つめた。
「夕音って、髪を下ろしてると凄く雰囲気が変わるよね」
「うん?」
「皆が見てた。3組の人も他のクラスの人も、皆夕音に注目してたよ。それがちょっと嫌だったみたい。当たってごめんね」
「…んん?」
羅樹の言葉の意味が分からなくて、理解するのに10秒くらい要した。そんなの、まるで。
「ヤキモチ妬いたってこと?」
半信半疑どころか9割疑った状態で問い掛けると、羅樹は一瞬硬直して、恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべた。その笑顔にサクッと心臓を貫かれた後、その表情の意味を飲み込む。
「そんな恋人みたいな…」
「恋人でしょ?」
私がいまいち飲み込めていない現実を、羅樹は当然のように突きつけてくる。恥ずかしさで倒れてしまいそうになりながら、良い振りが来たと口を必死に動かす。
「なら、恋人なら、今週末とか、出掛けない?」
しどろもどろになりながら言葉を紡ぐ。チラッと羅樹の顔を見上げると、きょとんとしていた顔がみるみる明るくなって、嬉しそうに微笑んだ。その笑顔にも胸の奥が熱くなる。
「いいよ!何処行こうか?」
「えぇっと…」
後の帰路は、デートの計画立案に使われた。
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