神様自学

天ノ谷 霙

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2月14日 考え事happening

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考え事に夢中になって、フォークを皿の上に置いたまま止まってしまっていたらしい。羅樹はそんな私に首を傾げ、呼び掛けたり顔の前で手を振ったりとしてくれたらしいが、私は全く気付いていなかった。
気付いたのは、事件が起こった後だった。

~*~*~*~

最近、何かがずっと心の中で引っかかっている。忘れていることがある。そう思うのに、何に関しての記憶がないのか見当がつかない。羅樹に関することなのか家族に関することなのか、それとも私か。正解だと教えてくれる便利な機能もないので、ただモヤモヤしたものが心の奥に溜まっていくだけ。違和感だらけなのに、その正体に近付くことは出来なくてもどかしい。
私はふぅ、と小さくため息を吐いて、フォークを動かそうとしたその時だった。ぐいっと肩を掴まれる感覚がして、視界が急激に動く。目の前には水色の双眸が瞬いている。晴天の空よりも澄んでいて綺麗なその瞳は、茶色がかった髪の奥で強い光を称えている。
「へ、え」
「夕音!」
形の良い唇から、凛々しく私の名前を呼ぶ声が紡がれる。それはいつもより低く、焦ったような声色。何が何だか分からないが、至近距離にいることだけは分かった。
「なっ、え、あっ」
情けない、言葉にもならない言葉が口の端から溢れる。顔は急激に熱を帯びているし、きっと真っ赤なのだろう。それを目の前にいるこの人が察してくれるはずもなく、むしろ真剣な様子で私に近付いてくる。戸惑った私は後退りをしようとして、手を滑らせてしまった。突如ガクンっと肘の先から力が抜けていく。後ろに倒れる、と気付いた時には目を瞑っていた。覚悟を決めて衝撃に備えるが、いつまで経っても襲って来ない。恐る恐る目を開けると、私の顔は柔らかい布に埋まっていた。頬にはサラサラと糸のような何かが当たって、くすぐったい。
「…っ、夕音!大丈夫!?」
突如離れた布と糸。それは羅樹の服と髪であった。また同じくらいの至近距離で羅樹が私を見つめてくる。違うのは、髪が重力に負けているのか私に向かって垂れていることだ。つまり重力の先が私側にある。
理解した瞬間、脳内で花火が爆ぜた。

今、私は羅樹に押し倒される格好になっている。

手を滑らせ倒れそうになった私を咄嗟に抱え、守ってくれたのだと思う。そして無事を確認しようと体を離せば、そういう姿勢になった。脳が凄い勢いで現状把握に動いてくれているので理解してはいるが、この状況になった理由も羅樹が近い理由も全然分からない。誰かに説明してほしいくらいだ。そう現実逃避をしていると、羅樹が私の頬にするりと手を滑らせた。
「夕音、大丈夫!?」
至近距離で瞳を覗かれ、その瞬間全てが大丈夫でなくなった。私は何かを悟るように、意識を手放した。
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