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Valentine’s day3 桜
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冷えた指先が熱を帯びる頬を撫でる。目の前で細められた瞳が、あまりにも綺麗で。2人の吐いた息が白く天に昇っていく。
「俺は、明が思ってるような人じゃないっす。さっきだって明が紙袋持ってるのを見て、誰に渡すんだろうってモヤモヤして、苦しくて、避けようとしたんすよ」
明は頷きながら、俺の話に耳を傾ける。
「明が稲森に助けてもらった時も、俺がその場にいたら良かったのにって、明が助かったのは稲森のお陰なのに嫉妬して」
言いたくなかった。見せたくなった、こんなところ。けれど明が俺のことを信頼しきっているのが怖くて、どうにかわかって欲しくて、自分の嫌なところを曝け出す。嫌われるようなことをわざと言う。怖がられるようなことばかりが口を滑る。どうしたって俺は、明の隣に相応しくない。そんなことは自分が1番よく分かっている。
「そんな酷い奴なんすよ、俺って」
自嘲するように締めると、明が頬を緩めてふわりと微笑んだ。それは桜舞う校舎の影で再会したときに見た、あの日の笑顔によく似ていた。受験時に助けてくれた人だって微笑んでくれた、あの時の優しい笑みに。
心臓が掴まれたように痛い。ドキドキと騒がしいくらいに鳴り響いているのに心地良くて、身を委ねてしまいたくなる。
「桜はね、絶対私に怒りを向けないの」
「え?」
明は手を下ろし、再び真っ直ぐ見つめてくる。どういう意味かと思考を巡らせる前に、明が口を開いた。
「私が傷付いたら怒ってくれて、私を責めたりしない。私が悪いんだっていう人達と違う。助けてくれる。私を責めちゃう私から、悪いのはあっちだよって助けてくれるんだ」
明に言われて気付く。そういえばあの噂も、その顛末も、確か明のせいにして逃げるような最後だった。明の過去は聞いたことがないが、俺だけが違うというのならそういう風に責任転嫁して、明を傷付けるような奴ばかりだったのだろう。激しい怒りが渦巻くのを感じるが、それを見透かしたように明は呟く。
「私、自分が悪いんだって思ってた。だから痛いんだって。でも違うって教えてくれた。桜は、私のヒーローだね」
その言葉に、稲森の台詞がフラッシュバックする。
"好きな人のヒーローになりたいと思うのは、当たり前なんじゃないかな"
確かに、当たり前だ。そうじゃなきゃ、こんなに嬉しい気持ちになる筈がない。
嬉しくて嬉しくて、堪らない。
安堵と喜びが全身を包んで、泣きそうになる。
「まだ"好き"って気持ちが何なのかわからない。けど」
明はそこで言葉を区切る。何かを覚悟したように緊張した様子で、真剣にこちらを見つめる。
「どれだけ変な噂が流れたって、桜にだけは誤解されたくない。桜の傍に居たい。それが今の、私の気持ち」
知って欲しいと紡がれた言葉。それはほとんど告白みたいなもので、きっと明の本心なのだろう。
「…明、俺だって傍に居たいっす」
今更ながら気付く。明の為にって身を引いたのは、結局明を傷付けるのが怖かった自分のためでしかなかったことに。明が幸せで居れば良いって言い聞かせて、本当の心は封じ込めていた自分に。自分が幸せにするって宣言して、その気持ちが明を傷付けるのが怖かっただけなんだと。やっと気付いた。
「俺は明が好きっす。明が俺の傍に居て、それが心地良いって思って貰えたら凄く嬉しい。今は好きって気持ちが分からなくても構わないっすから、いつか俺のことを好きになってもらえるよう努力するのを、傍で見守っててくれないっすか?」
明が微かに頬を赤く染め、頷く。もう1度頷いて欲しくて、確認を込めて直球勝負を挑む。
「俺と、付き合ってください」
返事の代わりに、明が俺の胸に飛び込んできた。
「俺は、明が思ってるような人じゃないっす。さっきだって明が紙袋持ってるのを見て、誰に渡すんだろうってモヤモヤして、苦しくて、避けようとしたんすよ」
明は頷きながら、俺の話に耳を傾ける。
「明が稲森に助けてもらった時も、俺がその場にいたら良かったのにって、明が助かったのは稲森のお陰なのに嫉妬して」
言いたくなかった。見せたくなった、こんなところ。けれど明が俺のことを信頼しきっているのが怖くて、どうにかわかって欲しくて、自分の嫌なところを曝け出す。嫌われるようなことをわざと言う。怖がられるようなことばかりが口を滑る。どうしたって俺は、明の隣に相応しくない。そんなことは自分が1番よく分かっている。
「そんな酷い奴なんすよ、俺って」
自嘲するように締めると、明が頬を緩めてふわりと微笑んだ。それは桜舞う校舎の影で再会したときに見た、あの日の笑顔によく似ていた。受験時に助けてくれた人だって微笑んでくれた、あの時の優しい笑みに。
心臓が掴まれたように痛い。ドキドキと騒がしいくらいに鳴り響いているのに心地良くて、身を委ねてしまいたくなる。
「桜はね、絶対私に怒りを向けないの」
「え?」
明は手を下ろし、再び真っ直ぐ見つめてくる。どういう意味かと思考を巡らせる前に、明が口を開いた。
「私が傷付いたら怒ってくれて、私を責めたりしない。私が悪いんだっていう人達と違う。助けてくれる。私を責めちゃう私から、悪いのはあっちだよって助けてくれるんだ」
明に言われて気付く。そういえばあの噂も、その顛末も、確か明のせいにして逃げるような最後だった。明の過去は聞いたことがないが、俺だけが違うというのならそういう風に責任転嫁して、明を傷付けるような奴ばかりだったのだろう。激しい怒りが渦巻くのを感じるが、それを見透かしたように明は呟く。
「私、自分が悪いんだって思ってた。だから痛いんだって。でも違うって教えてくれた。桜は、私のヒーローだね」
その言葉に、稲森の台詞がフラッシュバックする。
"好きな人のヒーローになりたいと思うのは、当たり前なんじゃないかな"
確かに、当たり前だ。そうじゃなきゃ、こんなに嬉しい気持ちになる筈がない。
嬉しくて嬉しくて、堪らない。
安堵と喜びが全身を包んで、泣きそうになる。
「まだ"好き"って気持ちが何なのかわからない。けど」
明はそこで言葉を区切る。何かを覚悟したように緊張した様子で、真剣にこちらを見つめる。
「どれだけ変な噂が流れたって、桜にだけは誤解されたくない。桜の傍に居たい。それが今の、私の気持ち」
知って欲しいと紡がれた言葉。それはほとんど告白みたいなもので、きっと明の本心なのだろう。
「…明、俺だって傍に居たいっす」
今更ながら気付く。明の為にって身を引いたのは、結局明を傷付けるのが怖かった自分のためでしかなかったことに。明が幸せで居れば良いって言い聞かせて、本当の心は封じ込めていた自分に。自分が幸せにするって宣言して、その気持ちが明を傷付けるのが怖かっただけなんだと。やっと気付いた。
「俺は明が好きっす。明が俺の傍に居て、それが心地良いって思って貰えたら凄く嬉しい。今は好きって気持ちが分からなくても構わないっすから、いつか俺のことを好きになってもらえるよう努力するのを、傍で見守っててくれないっすか?」
明が微かに頬を赤く染め、頷く。もう1度頷いて欲しくて、確認を込めて直球勝負を挑む。
「俺と、付き合ってください」
返事の代わりに、明が俺の胸に飛び込んできた。
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