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5月20日 種目決め
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ガラッと、先生がドアを開ける音がした。制服の中に一人紛れる体育着。先生は怪訝そうな顔をして、三原さんに話しかけた。
「三原さん、制服は?」
しばらくの沈黙。三原さんはもう何も感じないかのように、あらかじめ考えていたのであろう言葉を吐いた。
「………忘れました」
「…またですか?何度目ですか?全くいつになったら直すのか…」
ため息をつく先生に、私は昨日の写真を思い出す。
なんで。どうして気付かないの、先生。忘れたんじゃない、破られたというのに。
さりげなく由芽を見ると、由芽はいけ、という合図を私に出した。心臓が、ドクンっとはねた。そして手と同時に反撃の狼煙を上げる。
「先生、それは違うんじゃないですか?」
静まり返る教室内。私はポケットに隠したボイスレコーダーをぎゅっと握った。表面上だけでも、叩き潰すようにいかなくては。
先生は困惑しながら、やはり怪訝そうな顔で私を見た。
「何です?稲森さん。忘れが多いから言ってるので……」
「三原さんは1度も忘れていませんよ」
遮るように言う。三原さんが怯えた目で私を見た。さっきまでの慣れたような言い訳を言っていた時とは違う。震えていた。
そりゃそうよ。あんなことに、慣れちゃいけない。
私は、本気で叩き潰しにいく。覚悟は出来ている。独りになんてならない。私には、由芽がいる。そして、羅樹もいるから。
「毎回毎回、制服切り裂いて嬉しそうに笑う。そんな事が平然と学校で起こっているのに先生は気付かない。」
「ちょっと何の話!?三原が忘れただけじゃない!授業進めなさいよ」
ガタン、と椅子を後ろに倒す音が聞こえた。それに混じる、優等生と言われ続ける彼女のヒステリックな声。私は不思議そうに首をかしげた。由芽が私の視界の端でにやりと笑った。
「え?どうしたの…さん、そんな焦って私の会話に入るって。ねぇ?」
彼女の息を飲む音。このクラス中が私と彼女のこの後の展開を待っている。私は一呼吸置いて、続ける。
「何で入って来たの?教えてよ、ねぇ?」
「え?どういう事?」
私と彼女の会話について行けない、何もわからない、気付かない先生の声。私は、由芽に言われた通りに、先生すらも罵倒した。
「そんな事にも気が付かないのですか?よく担任で恥ずかしくないですね」
先生の顔がかぁっと赤くなる。成績が下がるかも、と変に冷静な自分がいた。私は先生にも分かるように、はっきりと言った。
「要するに、貴方がいじめのリーダーよね?そんなに三原さんが運動得意なの嫌?他に自分に才能が無いから?」
図星だから、動揺する彼女。叫ぶように言った。
「しょ、証拠は何処にあるの?」
「…そうよ!…さんがやる筈無いわ!」
「…ふぅん、宗教みたいで怖いわね。でもさ、証拠出す前に自白した方が良いと思うよ?」
証拠の持ち主は容赦ないから、という言葉は飲み込んで、彼女をじっと見る。彼女は証拠なんてあるはずがない、と高を括っているのだろうか。舐めないでもらいたい。入学して一週間で学校全員の名前を覚えた学校一の情報屋を。
私は、そっとボイスレコーダーを再生した。
「三原さん、制服は?」
しばらくの沈黙。三原さんはもう何も感じないかのように、あらかじめ考えていたのであろう言葉を吐いた。
「………忘れました」
「…またですか?何度目ですか?全くいつになったら直すのか…」
ため息をつく先生に、私は昨日の写真を思い出す。
なんで。どうして気付かないの、先生。忘れたんじゃない、破られたというのに。
さりげなく由芽を見ると、由芽はいけ、という合図を私に出した。心臓が、ドクンっとはねた。そして手と同時に反撃の狼煙を上げる。
「先生、それは違うんじゃないですか?」
静まり返る教室内。私はポケットに隠したボイスレコーダーをぎゅっと握った。表面上だけでも、叩き潰すようにいかなくては。
先生は困惑しながら、やはり怪訝そうな顔で私を見た。
「何です?稲森さん。忘れが多いから言ってるので……」
「三原さんは1度も忘れていませんよ」
遮るように言う。三原さんが怯えた目で私を見た。さっきまでの慣れたような言い訳を言っていた時とは違う。震えていた。
そりゃそうよ。あんなことに、慣れちゃいけない。
私は、本気で叩き潰しにいく。覚悟は出来ている。独りになんてならない。私には、由芽がいる。そして、羅樹もいるから。
「毎回毎回、制服切り裂いて嬉しそうに笑う。そんな事が平然と学校で起こっているのに先生は気付かない。」
「ちょっと何の話!?三原が忘れただけじゃない!授業進めなさいよ」
ガタン、と椅子を後ろに倒す音が聞こえた。それに混じる、優等生と言われ続ける彼女のヒステリックな声。私は不思議そうに首をかしげた。由芽が私の視界の端でにやりと笑った。
「え?どうしたの…さん、そんな焦って私の会話に入るって。ねぇ?」
彼女の息を飲む音。このクラス中が私と彼女のこの後の展開を待っている。私は一呼吸置いて、続ける。
「何で入って来たの?教えてよ、ねぇ?」
「え?どういう事?」
私と彼女の会話について行けない、何もわからない、気付かない先生の声。私は、由芽に言われた通りに、先生すらも罵倒した。
「そんな事にも気が付かないのですか?よく担任で恥ずかしくないですね」
先生の顔がかぁっと赤くなる。成績が下がるかも、と変に冷静な自分がいた。私は先生にも分かるように、はっきりと言った。
「要するに、貴方がいじめのリーダーよね?そんなに三原さんが運動得意なの嫌?他に自分に才能が無いから?」
図星だから、動揺する彼女。叫ぶように言った。
「しょ、証拠は何処にあるの?」
「…そうよ!…さんがやる筈無いわ!」
「…ふぅん、宗教みたいで怖いわね。でもさ、証拠出す前に自白した方が良いと思うよ?」
証拠の持ち主は容赦ないから、という言葉は飲み込んで、彼女をじっと見る。彼女は証拠なんてあるはずがない、と高を括っているのだろうか。舐めないでもらいたい。入学して一週間で学校全員の名前を覚えた学校一の情報屋を。
私は、そっとボイスレコーダーを再生した。
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