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2月26日 抱え込む
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先生が安堵の息を吐いて、青海川くんが寝ている隣の部屋にお茶を用意してくれた。私もその向かいに座り、先生の昔話に付き合うことにした。
「星空から聞いたかもしれないが、あいつは昔から雪を見ると体調を崩すんだ。小さい頃は魘されて、いつも何かを呟くんだ。誰かを呼んでるみたいだった。けど、いつも誰を呼んでるのかわからなくて、俺も両親も困っていた。会わせてやりたくとも、相手が誰かわからなかったからな」
目を細めて隣の部屋に続く襖を見ながら、先生はポツポツと話をする。恐らく前世の奥方様の名前を呼んでいたのだろう。私もあの言葉は聞き取れないから、きっと時代の変化と共に失われた発音なのだろう。
「最近は落ち着いてるみたいだったから、幼少期特有の何かだって片付けてたんだけど、そうか。我慢…してたのかもしれないな」
青海川くんは、家族の間で前世の記憶は子供の戯言だと扱われていると話していた。きっとそう仕向けたのだろう。話さないことで、内に溜めることで家族からの排斥を逃れた。ヒトは理解出来ないことを嫌うから。私だって、無意識とはいえ同じことをしたから、わかる。
それでも青海川くんが壊れないでいたのは、真摯に向き合ってくれた片倉さんがいたからだろう。誰にも理解されなかった悩みを茶化さず聞いてくれて、むしろ好きだと言ってくれて、それがどれほどの救いになったかなんて想像もつかない。けれど、それは家族ではなれなかった。きっと近いからこそ、同情だと疑われ関係は余計に拗れてしまっただろう。一友人という立場だったからこそ、青海川くんも悩みを打ち明けることが出来たのだろう。私が蓮乃くんに対してそうだったように。"この人は大丈夫"という確証がなければ、人は存外動けないものなのだ。
「先生は」
無意識のうちに口が動いていた。弟と同じ隈のある青緑色の瞳がきょとんとこちらを向く。先生の言葉を反芻して、聞きたいと思ったことを言葉にする。
「先生は、青海川くん…星空くんが昔と同じだって気付いて、どう思いましたか」
治ったと思っていたことが、再び目の前に現れる。安心出来たと思ったら、また不安が押し寄せる。それは怖いことなのではないだろうか。もしかしたら今度こそ、離れたくなるのではないだろうか。
「え、あー…うーん…?」
悩んだ様子の先生が、たっぷりと時間を掛けて思考した後で口を開く。思わず零れた、という風に。
「気付いてやれなくて申し訳なかったのと、今度こそ頼ってほしい、だな」
「…え?」
「見えないところで苦しんでたってことだろ?その苦しみを分けてほしい。俺はあいつの、たった1人の兄弟なんだから」
先生の言葉が、ぐるぐると脳内を回った。
「星空から聞いたかもしれないが、あいつは昔から雪を見ると体調を崩すんだ。小さい頃は魘されて、いつも何かを呟くんだ。誰かを呼んでるみたいだった。けど、いつも誰を呼んでるのかわからなくて、俺も両親も困っていた。会わせてやりたくとも、相手が誰かわからなかったからな」
目を細めて隣の部屋に続く襖を見ながら、先生はポツポツと話をする。恐らく前世の奥方様の名前を呼んでいたのだろう。私もあの言葉は聞き取れないから、きっと時代の変化と共に失われた発音なのだろう。
「最近は落ち着いてるみたいだったから、幼少期特有の何かだって片付けてたんだけど、そうか。我慢…してたのかもしれないな」
青海川くんは、家族の間で前世の記憶は子供の戯言だと扱われていると話していた。きっとそう仕向けたのだろう。話さないことで、内に溜めることで家族からの排斥を逃れた。ヒトは理解出来ないことを嫌うから。私だって、無意識とはいえ同じことをしたから、わかる。
それでも青海川くんが壊れないでいたのは、真摯に向き合ってくれた片倉さんがいたからだろう。誰にも理解されなかった悩みを茶化さず聞いてくれて、むしろ好きだと言ってくれて、それがどれほどの救いになったかなんて想像もつかない。けれど、それは家族ではなれなかった。きっと近いからこそ、同情だと疑われ関係は余計に拗れてしまっただろう。一友人という立場だったからこそ、青海川くんも悩みを打ち明けることが出来たのだろう。私が蓮乃くんに対してそうだったように。"この人は大丈夫"という確証がなければ、人は存外動けないものなのだ。
「先生は」
無意識のうちに口が動いていた。弟と同じ隈のある青緑色の瞳がきょとんとこちらを向く。先生の言葉を反芻して、聞きたいと思ったことを言葉にする。
「先生は、青海川くん…星空くんが昔と同じだって気付いて、どう思いましたか」
治ったと思っていたことが、再び目の前に現れる。安心出来たと思ったら、また不安が押し寄せる。それは怖いことなのではないだろうか。もしかしたら今度こそ、離れたくなるのではないだろうか。
「え、あー…うーん…?」
悩んだ様子の先生が、たっぷりと時間を掛けて思考した後で口を開く。思わず零れた、という風に。
「気付いてやれなくて申し訳なかったのと、今度こそ頼ってほしい、だな」
「…え?」
「見えないところで苦しんでたってことだろ?その苦しみを分けてほしい。俺はあいつの、たった1人の兄弟なんだから」
先生の言葉が、ぐるぐると脳内を回った。
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