615 / 812
3月2日 口論再び
しおりを挟む
お菓子戦争で大いに盛り上がった後、テスト返却もそこそこにすぐに放課後になった。羅樹は今日用事があるとのことで、凄く渋られたが先に帰らせることにした。私のクラスではお菓子パーティの続きが多少行われていたため、それに参加したいと譲らなかったせいである。朝、少しだけしんみりした気分で登校して来たこともあり、卒業までの日数を数えて感傷的になってしまったのだ。残り1年となった高校生活を、少しでも楽しみたい。思い出を作りたい。そんな気分だった。
そうして残っていたところ、テスト採点や受験の準備で忙しいから早く帰れ、と青海川先生に注意されてしまった。まだ決着は付いてないと騒ぎ始めた紗奈と竜夜くんは、先生の命をうけた小野くんに喧嘩両成敗されていた。こういう時によく先生に使われる霙や、小野くんと同じく学級委員の由芽は演劇部の講演が近いこともあり、例外的に体育館で部活をしている。
私は霙の忘れ物を届けに行っていた関係上、その解散シーンはほとんど見ることなく終わってしまった。眞里阿から連絡を受けて、お菓子戦争もといお菓子パーティの閉幕を知ったのだ。慌てて教室に戻ろうとドアに手を掛けたところで、中から口論のような声が聞こえて来ることに気付いた。今日はよく言い争いしている場面に出会すなぁ、と思いながら伺っていると、それはお菓子戦争とは全く別の、むしろ口論とも呼べない一方的な怒声であることに気付いた。いけないとは思いつつもガラスから中を覗くと、見えたのは赤紫色の髪を毛先で縛った小柄な女の子だ。顔は見えないが、恐らく爽だろう。怒り声もよく聞くと彼女のものだとわかる。その怒号を一身に引き受けているのは、北原くん。眼鏡の反射で表情は読み取れないが、言われるがままになっている。反論しているのかは、ドア越しじゃ読み取れない。
どうすべきか、とりあえずほとぼりが冷めるまで何処か散歩でもしていようかとドアから体を離した瞬間、爽が北原くんに掴みかかった。襟に手を伸ばし、瞬間的に勢いよく引き寄せる。そこそこ背の高い北原くんは、小柄な爽にとってはかなりの身長差。その身長差を埋めるように引かれたことで北原くんのバランスが崩れる。そしてそのまま、掴みかかったままで、2人の顔が重なった。
私の位置からでは、決定的瞬間は見えなかった。けれど、恐らく。何故そうなったのかはわからないけれど、どうしてもそうにしか見えなかった。
キス、した───?
引き寄せた分だけ突き飛ばして、爽は机の上に置いていたバッグをひったくるように掴むと、ドアを勢いよく開けて走り去っていった。
一瞬見えた横顔には、涙が浮かんでいた。
そうして残っていたところ、テスト採点や受験の準備で忙しいから早く帰れ、と青海川先生に注意されてしまった。まだ決着は付いてないと騒ぎ始めた紗奈と竜夜くんは、先生の命をうけた小野くんに喧嘩両成敗されていた。こういう時によく先生に使われる霙や、小野くんと同じく学級委員の由芽は演劇部の講演が近いこともあり、例外的に体育館で部活をしている。
私は霙の忘れ物を届けに行っていた関係上、その解散シーンはほとんど見ることなく終わってしまった。眞里阿から連絡を受けて、お菓子戦争もといお菓子パーティの閉幕を知ったのだ。慌てて教室に戻ろうとドアに手を掛けたところで、中から口論のような声が聞こえて来ることに気付いた。今日はよく言い争いしている場面に出会すなぁ、と思いながら伺っていると、それはお菓子戦争とは全く別の、むしろ口論とも呼べない一方的な怒声であることに気付いた。いけないとは思いつつもガラスから中を覗くと、見えたのは赤紫色の髪を毛先で縛った小柄な女の子だ。顔は見えないが、恐らく爽だろう。怒り声もよく聞くと彼女のものだとわかる。その怒号を一身に引き受けているのは、北原くん。眼鏡の反射で表情は読み取れないが、言われるがままになっている。反論しているのかは、ドア越しじゃ読み取れない。
どうすべきか、とりあえずほとぼりが冷めるまで何処か散歩でもしていようかとドアから体を離した瞬間、爽が北原くんに掴みかかった。襟に手を伸ばし、瞬間的に勢いよく引き寄せる。そこそこ背の高い北原くんは、小柄な爽にとってはかなりの身長差。その身長差を埋めるように引かれたことで北原くんのバランスが崩れる。そしてそのまま、掴みかかったままで、2人の顔が重なった。
私の位置からでは、決定的瞬間は見えなかった。けれど、恐らく。何故そうなったのかはわからないけれど、どうしてもそうにしか見えなかった。
キス、した───?
引き寄せた分だけ突き飛ばして、爽は机の上に置いていたバッグをひったくるように掴むと、ドアを勢いよく開けて走り去っていった。
一瞬見えた横顔には、涙が浮かんでいた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる