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3月7日 存在意義
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伸びをして立ち上がった北原くんは、私を振り返って揶揄うように笑った。
「こんなところで俺と話してていいのか?」
「え?」
「いや、何、稲森の過保護なカレシ様が俺を敵視するんじゃないかってヒヤヒヤしてるだけだよ」
「彼っ………そんなことしないでしょ!」
「どうだか。んじゃ、俺は帰るよ。じゃあな」
「………うん、またね」
最後に綺麗に話を変えられてしまった気がするが、北原くんが楽になったみたいなので良しとしよう。いややっぱり羅樹が北原くんを敵視するようなことは起こらないだろうし、その点についてはきっちり弁解させてほしい。確かに過保護ではあるが。
そんなことを心の中で考えながら、北原くんの背を見送る。潮賀くんの亜美に対する複雑な感情だった。どれだけ仲が良くても、大好きな友達だったとしても、それに水を差してしまうのが恋というものなのだ。
かつて虹様も、恋に生きるために稲荷様や他の神様と仲を違えていた。その感情1つあるだけで、他の全てと天秤に掛けられてしまう難しい感情。
今更ながら、私はその感情を伝える"恋使"なのだと思い返した。
「…こんな複雑な感情、稲荷様は聞いてて面倒に思わないのかな」
そう考えてから、何かに引っ掛かる。稲荷様が"恋使"を作り出したのは、どうしてだろう。そういえばちゃんと聞いたことはなかった。初代"恋使"である恋音は、虹様との連絡役を担っていた。以前見た記録を整理すると、恋音が虹様の元に通っている頃は既に虹様は人に恋をしていた筈だ。
もし、もし"恋使"という役職が、虹様の恋心を理解するために作られたものだとしたら。
虹様との件が解決した今、"恋使"の存在は何のためにあるのだろうか。
私と稲荷様をつなぐ唯一は、何に守られているのだろうか。
急に怖くなる。確かに長い年月が経っている訳ではないが、私にとってこの日々はあまりにも強烈すぎた。人ならざる力を手に入れて、それを使用して、たくさんの恋が"晴れ"るのを見て来た。勿論降り止まない雨もあったけれど、それでも皆最後は"晴れ"模様を見せてくれた。たくさんの感情を見て来た。知らない葛藤を知った。私が忘れていた大切な記憶を思い出した。
あまりにも濃厚で、忘れることのない1年間。
それの下地となっていた稲荷様との絆が、今になって不安定に揺れる。
「…私は、"恋使"のままでいていいの…?」
個に肩入れしすぎると身を滅ぼす。
それは虹様の件でよく知っている。
でも。それじゃあ。
今私という個を、意味もなく使の立場に置いている稲荷様は、どうなるのだろうか。
「こんなところで俺と話してていいのか?」
「え?」
「いや、何、稲森の過保護なカレシ様が俺を敵視するんじゃないかってヒヤヒヤしてるだけだよ」
「彼っ………そんなことしないでしょ!」
「どうだか。んじゃ、俺は帰るよ。じゃあな」
「………うん、またね」
最後に綺麗に話を変えられてしまった気がするが、北原くんが楽になったみたいなので良しとしよう。いややっぱり羅樹が北原くんを敵視するようなことは起こらないだろうし、その点についてはきっちり弁解させてほしい。確かに過保護ではあるが。
そんなことを心の中で考えながら、北原くんの背を見送る。潮賀くんの亜美に対する複雑な感情だった。どれだけ仲が良くても、大好きな友達だったとしても、それに水を差してしまうのが恋というものなのだ。
かつて虹様も、恋に生きるために稲荷様や他の神様と仲を違えていた。その感情1つあるだけで、他の全てと天秤に掛けられてしまう難しい感情。
今更ながら、私はその感情を伝える"恋使"なのだと思い返した。
「…こんな複雑な感情、稲荷様は聞いてて面倒に思わないのかな」
そう考えてから、何かに引っ掛かる。稲荷様が"恋使"を作り出したのは、どうしてだろう。そういえばちゃんと聞いたことはなかった。初代"恋使"である恋音は、虹様との連絡役を担っていた。以前見た記録を整理すると、恋音が虹様の元に通っている頃は既に虹様は人に恋をしていた筈だ。
もし、もし"恋使"という役職が、虹様の恋心を理解するために作られたものだとしたら。
虹様との件が解決した今、"恋使"の存在は何のためにあるのだろうか。
私と稲荷様をつなぐ唯一は、何に守られているのだろうか。
急に怖くなる。確かに長い年月が経っている訳ではないが、私にとってこの日々はあまりにも強烈すぎた。人ならざる力を手に入れて、それを使用して、たくさんの恋が"晴れ"るのを見て来た。勿論降り止まない雨もあったけれど、それでも皆最後は"晴れ"模様を見せてくれた。たくさんの感情を見て来た。知らない葛藤を知った。私が忘れていた大切な記憶を思い出した。
あまりにも濃厚で、忘れることのない1年間。
それの下地となっていた稲荷様との絆が、今になって不安定に揺れる。
「…私は、"恋使"のままでいていいの…?」
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それは虹様の件でよく知っている。
でも。それじゃあ。
今私という個を、意味もなく使の立場に置いている稲荷様は、どうなるのだろうか。
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