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7月16日 淑乃と2人きりで
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「よろしくね」
「うん、よろしく」
放課後、他クラスにも廊下にもほとんど人がいない教室で、淑乃と2人きりになる。
「どんな話にしようかな」
わくわくしたような好奇心に溢れた瞳で、ペンをくるくると回しながら考える淑乃。
「うーん。童話みたいな感じが、一番やりやすいのかな」
「あ、王子様とお姫様の恋とか!」
「そうそう!どんな物語にするの?」
「えっとね、今パッと思い浮かんだのは…」
昔々、ある一国の姫は幼い頃に王妃様から鍵を貰いました。
「何かあったとしても、この鍵は手放してはいけないよ。いつか必要な日が来るから、それまでずっと持っておきなさい」
その王妃様の言葉を忘れないように、姫はいつも鍵を首から下げていました。その鍵は、太陽の光を反射してきらきらと光る鍵でした。姫はその鍵が大好きで、何があっても外そうとしませんでした。おまじないのようにぎゅっと握りしめて、その度王妃様との約束を思い出していました。
姫が16になる前日のことでした。いつも通り木漏れ日の綺麗な庭の木の根元に座り、本を読んでいました。どのくらいの時間が経ったのでしょうか。ふと顔を上げると、そこはさっきまでいた庭ではなく、白い砂浜と、エメラルドがかった青い海が広がる浜辺でした。
「えっ、な、なんで…」
慌てる姫に、答える者は誰もいません。姫は誰か人を探そうと…。
「このくらいかな。ちょっと、おとぎ話に似ちゃったけど」
「す、すごいね…」
あんな短時間で、ここまでの文章が思い浮かぶなんで思わなかった。文章を書く人はこれくらい集中してパッと思いつくものなのだろうか。そうだとしたら私が苦手なのも頷ける。自分で言葉を選んで、それを聞く人が想像しやすいように文章を組み立てるなんて、私には難しい。
「すっごく楽しい!これならすぐ書けそう」
瞳にどんどん光が溢れてくる。私は、そんな様子を見つめながら、つい顔が緩んだ。
10分ほど経った頃、淑乃が唐突に顔を上げて私に言った。
「ねぇ夕音、ここの戦闘シーンが実感がわかなくて書けないのだけど、ちょっとやってみて貰っても良い?」
「うん、どんな感じ?」
「えっとね…姫が王子に会いに行くんだけど、その時途中で会った騎士と、衛兵の戦闘シーンかな。夕音が騎士になって、ちょっとやってみてほしい」
「はーい」
騎士の動きってどんな感じなんだろう、と考えながら剣を持っているふりをする。
たくさんの人が迫ってくるなら、避けながら、こう…。で、隙があったら、そこを突く。
制服が私の動きに合わせて舞う。息も切れてきた。一通り倒したふりをして淑乃の方を見ると、さっきよりも大きく目を見開いて、さっきよりもきらきらした少女、いや少年のような目で私を見ていた。
なんか、恥ずかしい。
「…こ、これで書けそう?」
「うん、ばっちり!ありがとう」
淑乃はその後、ものすごい集中力を見せ、あっという間に書き終えた。一度通し読みをしておかしいところがないかチェックをして、終える。
「夕音のおかげで最高作が書けたよ!ありがとう!」
「い、いえいえ…役に立てたのなら…」
正直、淑乃がたまに、どんな立ち回りをさせるか迷った時に動いたくらいで、ほとんど何もしていない気がした。
「うん、ありがとう!じゃあまた明日ね」
「うん、また明日」
嬉しそうな顔で手を振って走り去る。
「すごいなぁ…」
私の呟きは、誰もいない廊下にかき消された。
「うん、よろしく」
放課後、他クラスにも廊下にもほとんど人がいない教室で、淑乃と2人きりになる。
「どんな話にしようかな」
わくわくしたような好奇心に溢れた瞳で、ペンをくるくると回しながら考える淑乃。
「うーん。童話みたいな感じが、一番やりやすいのかな」
「あ、王子様とお姫様の恋とか!」
「そうそう!どんな物語にするの?」
「えっとね、今パッと思い浮かんだのは…」
昔々、ある一国の姫は幼い頃に王妃様から鍵を貰いました。
「何かあったとしても、この鍵は手放してはいけないよ。いつか必要な日が来るから、それまでずっと持っておきなさい」
その王妃様の言葉を忘れないように、姫はいつも鍵を首から下げていました。その鍵は、太陽の光を反射してきらきらと光る鍵でした。姫はその鍵が大好きで、何があっても外そうとしませんでした。おまじないのようにぎゅっと握りしめて、その度王妃様との約束を思い出していました。
姫が16になる前日のことでした。いつも通り木漏れ日の綺麗な庭の木の根元に座り、本を読んでいました。どのくらいの時間が経ったのでしょうか。ふと顔を上げると、そこはさっきまでいた庭ではなく、白い砂浜と、エメラルドがかった青い海が広がる浜辺でした。
「えっ、な、なんで…」
慌てる姫に、答える者は誰もいません。姫は誰か人を探そうと…。
「このくらいかな。ちょっと、おとぎ話に似ちゃったけど」
「す、すごいね…」
あんな短時間で、ここまでの文章が思い浮かぶなんで思わなかった。文章を書く人はこれくらい集中してパッと思いつくものなのだろうか。そうだとしたら私が苦手なのも頷ける。自分で言葉を選んで、それを聞く人が想像しやすいように文章を組み立てるなんて、私には難しい。
「すっごく楽しい!これならすぐ書けそう」
瞳にどんどん光が溢れてくる。私は、そんな様子を見つめながら、つい顔が緩んだ。
10分ほど経った頃、淑乃が唐突に顔を上げて私に言った。
「ねぇ夕音、ここの戦闘シーンが実感がわかなくて書けないのだけど、ちょっとやってみて貰っても良い?」
「うん、どんな感じ?」
「えっとね…姫が王子に会いに行くんだけど、その時途中で会った騎士と、衛兵の戦闘シーンかな。夕音が騎士になって、ちょっとやってみてほしい」
「はーい」
騎士の動きってどんな感じなんだろう、と考えながら剣を持っているふりをする。
たくさんの人が迫ってくるなら、避けながら、こう…。で、隙があったら、そこを突く。
制服が私の動きに合わせて舞う。息も切れてきた。一通り倒したふりをして淑乃の方を見ると、さっきよりも大きく目を見開いて、さっきよりもきらきらした少女、いや少年のような目で私を見ていた。
なんか、恥ずかしい。
「…こ、これで書けそう?」
「うん、ばっちり!ありがとう」
淑乃はその後、ものすごい集中力を見せ、あっという間に書き終えた。一度通し読みをしておかしいところがないかチェックをして、終える。
「夕音のおかげで最高作が書けたよ!ありがとう!」
「い、いえいえ…役に立てたのなら…」
正直、淑乃がたまに、どんな立ち回りをさせるか迷った時に動いたくらいで、ほとんど何もしていない気がした。
「うん、ありがとう!じゃあまた明日ね」
「うん、また明日」
嬉しそうな顔で手を振って走り去る。
「すごいなぁ…」
私の呟きは、誰もいない廊下にかき消された。
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