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3月15日 恐怖+思考
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特に挨拶すべき、またはしたい先輩もいないため、他の人に時間を譲って私は早々に帰宅した。羅樹は私のお母さんに連れられて病院に行っているらしく、書き置きから状況を把握して私は深く息を吐いた。
「熱、高かった…」
脳裏に蘇るのは、38℃を超えた体温計の表示。私は自覚している以上に動揺して、遅刻ギリギリになるまでバタバタと慌てていた。今思えば、病人の近くであんなに騒ぐのは良くなかったのではないだろうか。それ程までに他に目が向かなかった。気を配れず、ただ羅樹のことだけに一直線になっていた。自分のことなんてどうでもよくて、早く良くなってもらうためにあの手この手を思い付けば実践して、たった2、30分の時間だったけれど、私からすれば1日にも一瞬にも思える時間で。
利羽の言った通り、私は初めて心配する側の気持ちを知ったのだ。
勿論、親が体調を崩すことだってあったし、友達の家にプリントを届けに行ったこともある。けれどそれはいつだって数日後には良くなるもので、常に心配で何も手につかないなんてことあり得なかった。小、中は私が体調を崩すことも少なくなり、そんな神経を削るようなやりとりがあったことさえ忘れていた。そもそも私は自分の虚弱さなんて忘れていた。恋音に目隠しされて、ヒトではないものを見なくなって、それからずっと私はただの人間だと思って生きて来た。確かにヒトとは思えない音が聞こえて来たけれど、私は蓋された記憶の中で無意識にそれらの正体がわかっていたから、誰かに言ったり騒いだりすることなく平穏に暮らして来た。
けれど平穏だったのは私だけだ。
羅樹は私が目の前で消えるところを見ていた。
私が何もないところから帰って来る姿も、人ならざるモノとの関わりも知っていた。
理解は出来ずとも、私のヒトとは違う部分を知った上で、側にいてくれたのだ。
それなのに私は、自分のことすら忘れて羅樹のことも避けて、自分勝手に平和な世界を生きて来た。羅樹は大事な人が消える恐怖を知っているのに、いなくならないと約束しておいて。
違う。それはきちんと守ると決めた。羅樹の不安の種を知って、羅樹の恐怖に気付いて、私がその原因にならないように行動すると、決めた。
今私が怖いのは何だ。
私が不安に思って怯えてるのは、何なのだ。
ぎゅっと目を瞑って自身に問い掛ける。空色の瞳が細められて、ふわりと笑みを零した。
「…あぁ、そっか」
羅樹が抱いた不安を、知った私が抱かない訳がない。いつだって思考というのは、自分がするかもしれない可能性に縛られるものだから。
私は、羅樹がいなくなるのが怖いのだ。
私がいなくならないという約束ではなく、それを待つ羅樹が消えることが怖いのだ。
「熱、高かった…」
脳裏に蘇るのは、38℃を超えた体温計の表示。私は自覚している以上に動揺して、遅刻ギリギリになるまでバタバタと慌てていた。今思えば、病人の近くであんなに騒ぐのは良くなかったのではないだろうか。それ程までに他に目が向かなかった。気を配れず、ただ羅樹のことだけに一直線になっていた。自分のことなんてどうでもよくて、早く良くなってもらうためにあの手この手を思い付けば実践して、たった2、30分の時間だったけれど、私からすれば1日にも一瞬にも思える時間で。
利羽の言った通り、私は初めて心配する側の気持ちを知ったのだ。
勿論、親が体調を崩すことだってあったし、友達の家にプリントを届けに行ったこともある。けれどそれはいつだって数日後には良くなるもので、常に心配で何も手につかないなんてことあり得なかった。小、中は私が体調を崩すことも少なくなり、そんな神経を削るようなやりとりがあったことさえ忘れていた。そもそも私は自分の虚弱さなんて忘れていた。恋音に目隠しされて、ヒトではないものを見なくなって、それからずっと私はただの人間だと思って生きて来た。確かにヒトとは思えない音が聞こえて来たけれど、私は蓋された記憶の中で無意識にそれらの正体がわかっていたから、誰かに言ったり騒いだりすることなく平穏に暮らして来た。
けれど平穏だったのは私だけだ。
羅樹は私が目の前で消えるところを見ていた。
私が何もないところから帰って来る姿も、人ならざるモノとの関わりも知っていた。
理解は出来ずとも、私のヒトとは違う部分を知った上で、側にいてくれたのだ。
それなのに私は、自分のことすら忘れて羅樹のことも避けて、自分勝手に平和な世界を生きて来た。羅樹は大事な人が消える恐怖を知っているのに、いなくならないと約束しておいて。
違う。それはきちんと守ると決めた。羅樹の不安の種を知って、羅樹の恐怖に気付いて、私がその原因にならないように行動すると、決めた。
今私が怖いのは何だ。
私が不安に思って怯えてるのは、何なのだ。
ぎゅっと目を瞑って自身に問い掛ける。空色の瞳が細められて、ふわりと笑みを零した。
「…あぁ、そっか」
羅樹が抱いた不安を、知った私が抱かない訳がない。いつだって思考というのは、自分がするかもしれない可能性に縛られるものだから。
私は、羅樹がいなくなるのが怖いのだ。
私がいなくならないという約束ではなく、それを待つ羅樹が消えることが怖いのだ。
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