神様自学

天ノ谷 霙

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3月16日 店内へ

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由芽の母だと名乗ったその女性は、あまりにも若々しい容姿をしていて私達は混乱した。20代と言われても納得してしまう年齢不詳の美人が、高校生の子供を持つ人妻だと誰が思うだろうか。少なくとも私と、私と同じような反応をしている紗奈と眞里阿は思わなかった。確かによく見ると顔立ちや色みがそっくりである。どちらかというと男勝りな面の目立つ由芽と結び付かなかったのは、雰囲気やその身に纏っている可愛らしいエプロンドレスのせいだろうか。
「とりあえず、中に入らない?ここで話してるのもアレだし…」
制服姿の4人組と、由芽の母親である店員さんの容姿はかなり目立つ。人通りが少ないとはいえ0ではないので視線が集まっているのが分かるし、その中でも由芽は私の切なくもに隠れてしがみついているのだからかなり目立つ。甘い香りに当てられてお腹も空いて来たし、何でもいいから席に着いてしまいたかった。
「ここ、入る気…?」
「当たり前でしょ!ここまで来たんだから堪能しないわけにはいかない!」
「私のおすすめ、由芽ちゃんにも食べて欲しいです…」
「…っぐ、ぅ……」
紗奈のテンションの高さと眞里阿の切実なお願いに、由芽も折れたらしい。私の背に隠れたままだが、少しだけ頷くのが見えた。
「あら、じゃあ4名様ご案内、ね」
鼻歌でも歌い出しそうなご機嫌な雰囲気のまま、店員さんこと由芽のお母さんは私達を店内に案内してくれる。中に入ると、大きなショーケースの中にキラキラしたたくさんのケーキが並び、壁際に置かれた焼き菓子やホットスイーツからは甘い香りが漂って来ている。小さな店ではあるがイートインも完備されているようで、ドアから向かって左手側には、いくつかのテーブルと椅子が用意されていた。その全てに繊細な木彫り細工が施され、御伽噺の世界に迷い込んでしまったような気分になる。私と由芽は先に席に着き、ホッと一息ついた。
「私は眞里阿のおすすめが食べたいな。後で払うから選んで来てくれる?」
「勿論です!どれがいいかなぁ…っ!」
「由芽は?自分で選ぶ?それとも私たちが選んでいい?」
「…桃…」
「え?」
「あ、いや。選んで来てくれると助かる」
「わかった!とびっきりの選んでくるねー!」
おおはしゃぎの2人を見送って、私は由芽と待つことにした。視界から逃れるように窓際かつ隣が壁の席をゲットした由芽に引っ張られ、私は肉壁となって由芽を隠している。きっと2人は何の疑問も持たずに向かいに座るだろうが、それを待っている間隣同士というのは何となく気まずいような、気恥ずかしいような気分がした。
「由芽、ここ来るの久しぶりなの?」
「え?あ、うん。そうだけど…」
「お母さんと会うのも?」
「いやそれは全然。今朝も会ったし。ここはお店専用で、家から通ってるから」
「なるほど」
暇潰しついでに気になっていたことを聞こうと、適当に話を振る。結構攻めたことを聞いてみたが特に気にする様子はないので、この辺りに地雷はないらしい。良かったと安心するべきか、尚更最初の態度に疑問を抱くべきか。
まぁどちらでもいいか。
鼻腔をくすぐる芳しい甘い焼き菓子の香りに、私の思考はすっかり奪われてしまっていた。
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