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"化かし日和のともしび" 8
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悲鳴合唱の大混乱。そんな風に騒がれた方が、もしかしたら分かりやすくて良かったかもしれない。
"それ"は突然やって来た。唐突に人々の命を脅かし、苦しめ、波が引くように奪い去っていった。世界中で転々と命だったものが転がる。どこから来たのかも分からない。何が起こったのかも分からない。ただただ命が亡くなっていくニュースを、ひたすら見聞きし続けた。それは直接的に命の危機を感じていなかった人も疲弊するほどに。
彼らは呪詛を吐き続けた。
"どうして私がこんな目に"
"お前のせいだ"
"貴方のせいよ"
"世界が悪い"
"社会が憎い"
押し付けあった責任と、その責を誰かに押し付けるまで引き受けた人の声。その中にプラスなものが少なかったのは確かで、膨れ上がった悪意は元々限界に近かったこの世界に更に流れ込んだ。だから加速した。生者の世界に漏れ出た悪意は、その場にいる人々に影響し始めて。
とうとう、人は、互いを攻撃し始めた。
「…? 待って、あれ、待って、なんで」
「どうしたの?」
アマネ(霙)は混乱し、そんな彼女にセイ(由芽)は優しく微笑む。アマネはぐるぐると回る思考の中で、必死に言葉を紡いだ。
「どうして、セイはこの流れを、"いつもの"だって言ったの?」
"この"世界の管理人であれば、この世界が悪意に満ちて満杯になるところなんて初めて見る筈だろう。どうして知っているのだ。溜め込んだ筈の悪意が漏れ出て人々が困惑する姿を、どうして何度も見て来たかのように言うのだ。この世界は何度もリセットされているのか。それとも同じような世界が複数あって、満杯になる度世界ごと廃棄しているのか。
「セイは、何度も人の悪意が満ちる姿を、見て来たの?」
アマネの問いに、セイは一瞬ゾッとするほど冷たい表情を見せる。
「それを知って、君はどうするの?君の命はもうすぐ尽きるのに」
「…え?」
「人の悪意に満ちた世界に放り込まれて、人が形を保っていられると思った?染み出した悪意ですら人は影響を受けるのに、その悪意のど真ん中に突っ込んで影響を受けないとでも思ったのかな」
セイはにこりと笑うが、その瞳は弑虐的に歪んでいる。手向けがわりに遊ぼうと誘われた時と同じように、こちらを弄ぶ目をしている。
「そんなわけないよ。君は、君の心は悪意に影響を受けて、蝕まれて、やがて一体化してこの世界に溶ける。君はその溶けるスピードが遅そうだったから、僕が干渉することになったんだけどね」
「遅そう…?」
セイはくすりと笑って、アマネの鼻筋の上に指を乗せた。双眸を指差して、嫌らしく笑う。
「君の目には絶望が見えない。きっと好奇心だろうけど、それが邪魔して悪意が溶けきれない。だから君の好奇心を満たしてあげた。そうすれば君を取り込む世界の邪魔にならないから」
「…っ!」
「地獄巡りは楽しかった?それじゃあそろそろサヨナラの時間だ」
セイに突き放されて、アマネは愕然とした。そして膝から頽れて、顔を覆う。絶望が足元から這い上がる音がした。
"それ"は突然やって来た。唐突に人々の命を脅かし、苦しめ、波が引くように奪い去っていった。世界中で転々と命だったものが転がる。どこから来たのかも分からない。何が起こったのかも分からない。ただただ命が亡くなっていくニュースを、ひたすら見聞きし続けた。それは直接的に命の危機を感じていなかった人も疲弊するほどに。
彼らは呪詛を吐き続けた。
"どうして私がこんな目に"
"お前のせいだ"
"貴方のせいよ"
"世界が悪い"
"社会が憎い"
押し付けあった責任と、その責を誰かに押し付けるまで引き受けた人の声。その中にプラスなものが少なかったのは確かで、膨れ上がった悪意は元々限界に近かったこの世界に更に流れ込んだ。だから加速した。生者の世界に漏れ出た悪意は、その場にいる人々に影響し始めて。
とうとう、人は、互いを攻撃し始めた。
「…? 待って、あれ、待って、なんで」
「どうしたの?」
アマネ(霙)は混乱し、そんな彼女にセイ(由芽)は優しく微笑む。アマネはぐるぐると回る思考の中で、必死に言葉を紡いだ。
「どうして、セイはこの流れを、"いつもの"だって言ったの?」
"この"世界の管理人であれば、この世界が悪意に満ちて満杯になるところなんて初めて見る筈だろう。どうして知っているのだ。溜め込んだ筈の悪意が漏れ出て人々が困惑する姿を、どうして何度も見て来たかのように言うのだ。この世界は何度もリセットされているのか。それとも同じような世界が複数あって、満杯になる度世界ごと廃棄しているのか。
「セイは、何度も人の悪意が満ちる姿を、見て来たの?」
アマネの問いに、セイは一瞬ゾッとするほど冷たい表情を見せる。
「それを知って、君はどうするの?君の命はもうすぐ尽きるのに」
「…え?」
「人の悪意に満ちた世界に放り込まれて、人が形を保っていられると思った?染み出した悪意ですら人は影響を受けるのに、その悪意のど真ん中に突っ込んで影響を受けないとでも思ったのかな」
セイはにこりと笑うが、その瞳は弑虐的に歪んでいる。手向けがわりに遊ぼうと誘われた時と同じように、こちらを弄ぶ目をしている。
「そんなわけないよ。君は、君の心は悪意に影響を受けて、蝕まれて、やがて一体化してこの世界に溶ける。君はその溶けるスピードが遅そうだったから、僕が干渉することになったんだけどね」
「遅そう…?」
セイはくすりと笑って、アマネの鼻筋の上に指を乗せた。双眸を指差して、嫌らしく笑う。
「君の目には絶望が見えない。きっと好奇心だろうけど、それが邪魔して悪意が溶けきれない。だから君の好奇心を満たしてあげた。そうすれば君を取り込む世界の邪魔にならないから」
「…っ!」
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