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姉妹の回想
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「は、」
稲荷様は怪訝な声を虹様に向けようとするが、こちらを見た瞬間青褪めた。何かと思えば、稲荷様の瞳越しに見る虹様の表情には怒りが滲んでいる。
「私と同じ道を歩むなとは言ったけれど、だからといって何度も同じ過ちを繰り返すのを許した訳ではないのよ」
「過ち、など。わたしは、生物の理にも触れていませんし、禁忌も犯していません」
「そうね、触れてはいない。けれど通ってはいる」
虹様の指先が稲荷様からその隣へと移る。稲荷様の斜め後ろには、恋音さんが佇んでいた。
「その子を人として何度も転生させる為に、貴方は何をした?」
びくりと震える恋音さん。稲荷様は苦虫を噛み潰したような顔をした。
その記録は、私も知っている。稲荷様は。
「魂の管理者と転生の手続きを行う者の間で生じる隙を利用して、運命に手を加えた。一つの魂を私たちの好き勝手に動かすことは許されていないけれど、自然に任せた魂が勝手に私たちの望む方へ動くことは禁じられていない。禁じる方法なんて無いもの。貴方達はそれを利用した。干渉ではなく偶然のふりをして、何度もその子の運命に触れて来た」
「何、を」
「人の世界に"気の流れが違う者"が紛れ込んでいて、私が気付かないわけないでしょう」
恋音さんが何度も稲荷様達の偶然という名の干渉を経て、縁に引っ張られたことによる"気の流れ"が出来た。それは普通の人間にはあり得ないことで、気の流れを管理する虹様が気付かない筈がなかった。当然調査も行われ、稲荷様と恋音さんの関係は知られることとなったのだ。
「そん、な…っ!わたしには、何も!」
「えぇ。干渉も口出しも禁じられたの」
「誰に!」
「天女神様に」
虹様の静かな声に、稲荷様がひゅっと息を呑む。天女神様、つまり否守様の命。神という人よりも遥かに上に位置する存在の、その頂点に位置する2柱の1つ。全ての神の束ね役で、全ての管理者である彼の方の判断だった。
「どう、いう」
「勿論報告したわ。縁に引っ張られて変な曲がり方をしてるんだもの。段々と命も変な尽き果て方をするようになっていたし、このままでは不幸になるだけだとね。天女神様はそれを了承し、手を回した」
虹様の言葉に、ごくりと喉を鳴らす稲荷様。
「貴方達がその子をもうヒトの世に転生させないと決めたのは何故?」
「それは、あまりにも呆気なく生を終え、こちらに近過ぎる存在となっていることに気付いたから…」
「どうして気付けたの?」
「え?」
虹様の問いに、稲荷様はぱちぱちと瞳を瞬いた。
「こちらに近いものだと、何で判断したの?」
「それは、確かヒトならざるモノに好かれる姿を見て、いや違う。それは元々の性質で、ヒトとしての最後の生が、悪霊に、呑まれたから…」
「その悪霊は、本当に悪霊だった?」
言われて、記録を遡る。確かに悪霊に憑かれたかのように命を終えたが、疑念を抱いて見てみれば違和感を抱く。どうして悪霊は、まだ力の顕現も不明な幼子に近付いたのか。わざわざ姿を現して動いたのか。何故私達は、あれを見て悪霊のようだと感じたのか。
ざわり、と背筋が騒めく。
「そういう化かし方が得意な、いたずら好きがいるでしょう」
ヒトならざる何かを悪霊と勘違いさせるいたずら好きの神様。
体育祭で出会った悪戯好きの神様が、脳裏を過った。徒という名の、神様が。
「まさか!」
「…徒自身は、知らなかったみたいだけどね」
身近なモノを一つ、ヒトとしての恋音さんに宿らせた。それは彼女の命を奪う直接的な原因ではなかったのだろう。けれど稲荷様達はそれが悪霊だと認識し、原因だと思い込んだ。そうするように仕組まれた。天女神様の思し召しで。
ヒトの生を引っ掻き回すそれが"過ち"であると、教える為に。
天女神様が、歯車を回したのだ。
稲荷様は怪訝な声を虹様に向けようとするが、こちらを見た瞬間青褪めた。何かと思えば、稲荷様の瞳越しに見る虹様の表情には怒りが滲んでいる。
「私と同じ道を歩むなとは言ったけれど、だからといって何度も同じ過ちを繰り返すのを許した訳ではないのよ」
「過ち、など。わたしは、生物の理にも触れていませんし、禁忌も犯していません」
「そうね、触れてはいない。けれど通ってはいる」
虹様の指先が稲荷様からその隣へと移る。稲荷様の斜め後ろには、恋音さんが佇んでいた。
「その子を人として何度も転生させる為に、貴方は何をした?」
びくりと震える恋音さん。稲荷様は苦虫を噛み潰したような顔をした。
その記録は、私も知っている。稲荷様は。
「魂の管理者と転生の手続きを行う者の間で生じる隙を利用して、運命に手を加えた。一つの魂を私たちの好き勝手に動かすことは許されていないけれど、自然に任せた魂が勝手に私たちの望む方へ動くことは禁じられていない。禁じる方法なんて無いもの。貴方達はそれを利用した。干渉ではなく偶然のふりをして、何度もその子の運命に触れて来た」
「何、を」
「人の世界に"気の流れが違う者"が紛れ込んでいて、私が気付かないわけないでしょう」
恋音さんが何度も稲荷様達の偶然という名の干渉を経て、縁に引っ張られたことによる"気の流れ"が出来た。それは普通の人間にはあり得ないことで、気の流れを管理する虹様が気付かない筈がなかった。当然調査も行われ、稲荷様と恋音さんの関係は知られることとなったのだ。
「そん、な…っ!わたしには、何も!」
「えぇ。干渉も口出しも禁じられたの」
「誰に!」
「天女神様に」
虹様の静かな声に、稲荷様がひゅっと息を呑む。天女神様、つまり否守様の命。神という人よりも遥かに上に位置する存在の、その頂点に位置する2柱の1つ。全ての神の束ね役で、全ての管理者である彼の方の判断だった。
「どう、いう」
「勿論報告したわ。縁に引っ張られて変な曲がり方をしてるんだもの。段々と命も変な尽き果て方をするようになっていたし、このままでは不幸になるだけだとね。天女神様はそれを了承し、手を回した」
虹様の言葉に、ごくりと喉を鳴らす稲荷様。
「貴方達がその子をもうヒトの世に転生させないと決めたのは何故?」
「それは、あまりにも呆気なく生を終え、こちらに近過ぎる存在となっていることに気付いたから…」
「どうして気付けたの?」
「え?」
虹様の問いに、稲荷様はぱちぱちと瞳を瞬いた。
「こちらに近いものだと、何で判断したの?」
「それは、確かヒトならざるモノに好かれる姿を見て、いや違う。それは元々の性質で、ヒトとしての最後の生が、悪霊に、呑まれたから…」
「その悪霊は、本当に悪霊だった?」
言われて、記録を遡る。確かに悪霊に憑かれたかのように命を終えたが、疑念を抱いて見てみれば違和感を抱く。どうして悪霊は、まだ力の顕現も不明な幼子に近付いたのか。わざわざ姿を現して動いたのか。何故私達は、あれを見て悪霊のようだと感じたのか。
ざわり、と背筋が騒めく。
「そういう化かし方が得意な、いたずら好きがいるでしょう」
ヒトならざる何かを悪霊と勘違いさせるいたずら好きの神様。
体育祭で出会った悪戯好きの神様が、脳裏を過った。徒という名の、神様が。
「まさか!」
「…徒自身は、知らなかったみたいだけどね」
身近なモノを一つ、ヒトとしての恋音さんに宿らせた。それは彼女の命を奪う直接的な原因ではなかったのだろう。けれど稲荷様達はそれが悪霊だと認識し、原因だと思い込んだ。そうするように仕組まれた。天女神様の思し召しで。
ヒトの生を引っ掻き回すそれが"過ち"であると、教える為に。
天女神様が、歯車を回したのだ。
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