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稲荷の言葉
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「姉神様が、恋をして。わたしはそれを理解出来なかった。ヒトという種族と交わす想いが、理解出来なかった。理解したかった。姉神様は、わたしのことを気に掛けてくれて、苦しい時は側に居てくれたから。今度はわたしの番だと思ったのに、その想いが分からなかった。わたしは、姉神様を理解したかった」
思い出すように、一つ一つの考えをなぞるように、稲荷様は話し出す。
「だからヒトと、そして恋を理解しようと思った。その時にちょうど祈りに来たのが、夕音だった。毎日毎日祈る姿に、もしかしたらこの子を通してならヒトと恋を理解出来るかもしれないと、思ったのだ」
目を瞑り、瞼の裏にかつての記憶を写しながら話す。稲荷様はそう思っていたのかと、一方的に祈りを捧げていたあの日々をふと思い出す。
「そうして見続けていれば想いは募るというもので。わたしは夕音と言葉を交わしたくなっていた。見て、話して、理解して。同種族のそれを願った。そうした結果、伏見はヒトの生を失ったというのに。姉神様は喪失感に苛まれ、壊れてしまったというのに」
その言葉には、それを"過ち"と認識している様子が窺えた。けれど言葉には出さない。稲荷様の想いを全て聞くまで何も言わない。そうしなければ、私達は進めない。
「それを、使に指摘されて。姉神様が苦しい時に側に寄り添えなかったことと、伏見のことを考えてあげられなかったことを思い出して。わたしはいつでもわたしのことばかりだと嫌気が差して。罪悪感で限界で、壊れる寸前だったんだ。考えてるふりをして自分のことばかりだと、考えるための行動が足りないと思い知らされたようで。自分勝手、なんだけど」
それは私が指摘したことにも当てはまる。稲荷様は私のことを考えているようで考えていなかった。虹様も自分のことを優先して恋使を殺そうとしたので、神という種族に共通するものだと言われたらそれまでかもしれない。わからないから、私はただ稲荷様の話を聞く。
「だからあの日、限界だったわたしの前に夕音が現れてくれて、凄く嬉しかった。言葉を交わして使になると宣言してくれて、わたしはやっと姉神様のために動けると。伏見をはじめとした使の負担を減らせると。わたしは浅慮にも、そう、思ったのだよ」
稲荷様の瞳から雫が落ちる。自分の過ちを悔いるように、繰り返した悲劇を嘆く。周りの不幸を齎したのは自分だと省みる。
けれどそれ以外の選択肢が分からないことと、どうしてそれが間違いになってしまったのかという理由については、まだ分かっていないようだった。
言い訳がましい本心が透けて見える。
それを正したい衝動に駆られて、理性が止める。
どうしてそれを選んだのか、間違っているのは分かるがどうして間違ってしまったのか。その点を自覚して改善したいと願わせることに意味があると思ったから、私はただ、ひたすらに黙って話を聞いていた。
思い出すように、一つ一つの考えをなぞるように、稲荷様は話し出す。
「だからヒトと、そして恋を理解しようと思った。その時にちょうど祈りに来たのが、夕音だった。毎日毎日祈る姿に、もしかしたらこの子を通してならヒトと恋を理解出来るかもしれないと、思ったのだ」
目を瞑り、瞼の裏にかつての記憶を写しながら話す。稲荷様はそう思っていたのかと、一方的に祈りを捧げていたあの日々をふと思い出す。
「そうして見続けていれば想いは募るというもので。わたしは夕音と言葉を交わしたくなっていた。見て、話して、理解して。同種族のそれを願った。そうした結果、伏見はヒトの生を失ったというのに。姉神様は喪失感に苛まれ、壊れてしまったというのに」
その言葉には、それを"過ち"と認識している様子が窺えた。けれど言葉には出さない。稲荷様の想いを全て聞くまで何も言わない。そうしなければ、私達は進めない。
「それを、使に指摘されて。姉神様が苦しい時に側に寄り添えなかったことと、伏見のことを考えてあげられなかったことを思い出して。わたしはいつでもわたしのことばかりだと嫌気が差して。罪悪感で限界で、壊れる寸前だったんだ。考えてるふりをして自分のことばかりだと、考えるための行動が足りないと思い知らされたようで。自分勝手、なんだけど」
それは私が指摘したことにも当てはまる。稲荷様は私のことを考えているようで考えていなかった。虹様も自分のことを優先して恋使を殺そうとしたので、神という種族に共通するものだと言われたらそれまでかもしれない。わからないから、私はただ稲荷様の話を聞く。
「だからあの日、限界だったわたしの前に夕音が現れてくれて、凄く嬉しかった。言葉を交わして使になると宣言してくれて、わたしはやっと姉神様のために動けると。伏見をはじめとした使の負担を減らせると。わたしは浅慮にも、そう、思ったのだよ」
稲荷様の瞳から雫が落ちる。自分の過ちを悔いるように、繰り返した悲劇を嘆く。周りの不幸を齎したのは自分だと省みる。
けれどそれ以外の選択肢が分からないことと、どうしてそれが間違いになってしまったのかという理由については、まだ分かっていないようだった。
言い訳がましい本心が透けて見える。
それを正したい衝動に駆られて、理性が止める。
どうしてそれを選んだのか、間違っているのは分かるがどうして間違ってしまったのか。その点を自覚して改善したいと願わせることに意味があると思ったから、私はただ、ひたすらに黙って話を聞いていた。
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