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神様自学
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稲荷様は霜月神社に帰って来た。恋音さんはとうとう力を回復したらしく、私から離れても平気そうだ。元々、稲荷様の判断に気付いて主人の元に戻っていたらしい。その際に私と稲荷様の繋がり同様、恋音さんとの供給関係も切れていたようで、今更繋ぎ直さずとも大丈夫そうだとのことだった。
虹様は神々の世界に残り、また罪を贖う日々に戻ったという。使であるリーロは虹様を慕って側にいたので、これからも側にいるため共に禊を行なっているとのことだった。
あの時唐突に消えてしまった否守様は、本来ヒトの世界に出張ってくるようなモノではなく、今回は神の過ちを正すために私に依頼する形で現れたようだった。それでもヒトを含めた生物を普遍的に愛しているようで、時折現れては言葉を交わすのが好きなのだそうだ。何故それを知っているかと言うと、霜月神社に訪れると時折見掛けるからだ。
魔法は解けて、私は私のままここにいる。
ヒトならざるモノを目に映し、彼らと言葉を交わす不可思議な存在。それを隠すために私自身をあちらとこちらの狭間に置くための"恋使"の力は、稲荷様と使でなく友となった瞬間から使えなくなっていた。だからこそ私は羅樹の目の前からいなくなることなく、けれど彼らとの繋がりを断つことなく夕音としてここにいられる。逸らしていた目は真っ直ぐにヒトもヒト以外も映し、どちらとも関係を紡いでいく。
迷い子の狐を神社に連れて行ったら懐かれたこともあった。
目を合わせてはいけないものに気付かないふりをきたこともあった。
けれど全部私が成したこと。私が決めて、私が進んで、そして私が識ったこと。
いつの間にか進級して、また変わらぬ日々を送っている。まだ友と成って日は浅いけれど、また以前のように稲荷様の元へ、毎日参りに来ていた。私1人ではなく、今度は羅樹と一緒に。
穏やかな音がする。琴や横笛。出所である舞台には、富くんと雪くんが和装で楽器を抱えていた。そのちょうど真ん中には霜月神社の巫女、霙と清歌さんが花の枝を持って優雅に舞っている。"恵を頂いた感謝を神に送る、という教えの下春の終わりに行われる、花送ノ舞"だ。そういえば私も恋使だった時に、心に反応して花と花言葉を送っていた。ふと思い出して見渡せば、恋使となった私が関わって来た人がたくさん集まっている。
自身が持つ情報を誰かのために使える由芽。
本人の知らない良いところを見つけられる小野くん。
仲の良い友人から進むことを選んだ竜夜くん。
進めなかった自分を自覚した紗奈。
恋心の一方性に悩み苦しんでいた明。
幼い頃からの心を大切に持っていた利羽。
平和な日々を愛し共に守ろうと動いた蒼くん。
前世の心残りを生産した深沙ちゃん。
姉のことを尊重し秘密を抱えていた蓮乃くん。
恋の苦しみを乗り越え光を見つけた菜古ちゃん。
好きな人の好きな所も嫌いな所も受け入れた霙。
好きだからこそ見えないと気付いた雪くん。
一途に約束を守り続けた眞里阿。
好きだと言う気持ちを真っ直ぐに伝えた浅野くん。
恋故に狂い愛に気付いた虹様。
沢山の好意よりも一つの愛を選んだ作夜くん。
臆病な心を叱咤して真剣に考えた花火。
周囲の期待に真摯に向き合い続けた編茶乃ちゃん。
失恋の苦しみを理解し寄り添った五十嵐くん。
折れることなく清い心で向き合った扇様。
恐怖に打ち勝ち愛する者を守ろうとした紺様。
相手のことを想って身を引くことを選んだ結佑人くん。
素直に言葉にすることの大切さを知った千夏。
誰よりも好きだから誰よりも幸せを願った鹿宮くん。
前世の想いを昇華し新たな春を芽吹かせた星空くん。
側にいたいからこそ役目を果たせず苦悩した恋音さん。
尊重するが故に言葉の足りなかった稲荷様。
長年の片思いに区切りをつけ過去と決別した爽。
1番近くにいる自分への視線を見つけた北原くん。
優しさと穏やかさに心惹かれときめいた亜美。
決して押し付けず隣にいることを喜んだ潮賀くん。
主人の幸福も友人の幸せも願った天さん。
失恋も思い出として今を大切にしている富くん。
身近な人だけでなく誰かも思いやれる清歌さん。
心揺さぶる話を書き誰かの気付きとなる淑乃。
苦しみを隠して他者を思いやる八千奈ちゃん。
そして、自分の気持ちより私の笑顔を優先してくれる羅樹。
他にもたくさんの人がいた。たくさんの人が笑って、泣いて、怒って、喜んで、前を向いた。
いつだって前を向けるわけじゃないけれど、その経験はいつだって私達の中に知識として残っていて。それがまた誰かを助けて、また笑顔の花を咲かせていく。
今だって、祭りの中心で素敵な花が咲いている。
誰かが見て、学んで、識ったその先で生み出された無限の種を、私達はきっと何処かで咲き誇らせる。
人が学ぶのだ。ならば神様だって学ぶのだ。
そして学んだことはいつか、笑顔の種となる。
"恋使"はその種を自覚させるための力で、少しだけ背中を押すだけの存在。
ただそれだけだったけれど、とても大切なものだったと私は胸を張って誇れる。
それが"稲森 夕音"なのだと、笑顔で宣言できる。
「夕音!」
「夕音~?」
「稲森さん」
「夕音ちゃんっ」
たくさんの声が私を呼ぶ。私が私であるからこそ紡げた関係が、私を私と定めて親しみの声を掛ける。
また一つ、ここに"晴れ"の気配が生まれた。
幸福の気配が、笑顔の種を生み出した。
~完~
虹様は神々の世界に残り、また罪を贖う日々に戻ったという。使であるリーロは虹様を慕って側にいたので、これからも側にいるため共に禊を行なっているとのことだった。
あの時唐突に消えてしまった否守様は、本来ヒトの世界に出張ってくるようなモノではなく、今回は神の過ちを正すために私に依頼する形で現れたようだった。それでもヒトを含めた生物を普遍的に愛しているようで、時折現れては言葉を交わすのが好きなのだそうだ。何故それを知っているかと言うと、霜月神社に訪れると時折見掛けるからだ。
魔法は解けて、私は私のままここにいる。
ヒトならざるモノを目に映し、彼らと言葉を交わす不可思議な存在。それを隠すために私自身をあちらとこちらの狭間に置くための"恋使"の力は、稲荷様と使でなく友となった瞬間から使えなくなっていた。だからこそ私は羅樹の目の前からいなくなることなく、けれど彼らとの繋がりを断つことなく夕音としてここにいられる。逸らしていた目は真っ直ぐにヒトもヒト以外も映し、どちらとも関係を紡いでいく。
迷い子の狐を神社に連れて行ったら懐かれたこともあった。
目を合わせてはいけないものに気付かないふりをきたこともあった。
けれど全部私が成したこと。私が決めて、私が進んで、そして私が識ったこと。
いつの間にか進級して、また変わらぬ日々を送っている。まだ友と成って日は浅いけれど、また以前のように稲荷様の元へ、毎日参りに来ていた。私1人ではなく、今度は羅樹と一緒に。
穏やかな音がする。琴や横笛。出所である舞台には、富くんと雪くんが和装で楽器を抱えていた。そのちょうど真ん中には霜月神社の巫女、霙と清歌さんが花の枝を持って優雅に舞っている。"恵を頂いた感謝を神に送る、という教えの下春の終わりに行われる、花送ノ舞"だ。そういえば私も恋使だった時に、心に反応して花と花言葉を送っていた。ふと思い出して見渡せば、恋使となった私が関わって来た人がたくさん集まっている。
自身が持つ情報を誰かのために使える由芽。
本人の知らない良いところを見つけられる小野くん。
仲の良い友人から進むことを選んだ竜夜くん。
進めなかった自分を自覚した紗奈。
恋心の一方性に悩み苦しんでいた明。
幼い頃からの心を大切に持っていた利羽。
平和な日々を愛し共に守ろうと動いた蒼くん。
前世の心残りを生産した深沙ちゃん。
姉のことを尊重し秘密を抱えていた蓮乃くん。
恋の苦しみを乗り越え光を見つけた菜古ちゃん。
好きな人の好きな所も嫌いな所も受け入れた霙。
好きだからこそ見えないと気付いた雪くん。
一途に約束を守り続けた眞里阿。
好きだと言う気持ちを真っ直ぐに伝えた浅野くん。
恋故に狂い愛に気付いた虹様。
沢山の好意よりも一つの愛を選んだ作夜くん。
臆病な心を叱咤して真剣に考えた花火。
周囲の期待に真摯に向き合い続けた編茶乃ちゃん。
失恋の苦しみを理解し寄り添った五十嵐くん。
折れることなく清い心で向き合った扇様。
恐怖に打ち勝ち愛する者を守ろうとした紺様。
相手のことを想って身を引くことを選んだ結佑人くん。
素直に言葉にすることの大切さを知った千夏。
誰よりも好きだから誰よりも幸せを願った鹿宮くん。
前世の想いを昇華し新たな春を芽吹かせた星空くん。
側にいたいからこそ役目を果たせず苦悩した恋音さん。
尊重するが故に言葉の足りなかった稲荷様。
長年の片思いに区切りをつけ過去と決別した爽。
1番近くにいる自分への視線を見つけた北原くん。
優しさと穏やかさに心惹かれときめいた亜美。
決して押し付けず隣にいることを喜んだ潮賀くん。
主人の幸福も友人の幸せも願った天さん。
失恋も思い出として今を大切にしている富くん。
身近な人だけでなく誰かも思いやれる清歌さん。
心揺さぶる話を書き誰かの気付きとなる淑乃。
苦しみを隠して他者を思いやる八千奈ちゃん。
そして、自分の気持ちより私の笑顔を優先してくれる羅樹。
他にもたくさんの人がいた。たくさんの人が笑って、泣いて、怒って、喜んで、前を向いた。
いつだって前を向けるわけじゃないけれど、その経験はいつだって私達の中に知識として残っていて。それがまた誰かを助けて、また笑顔の花を咲かせていく。
今だって、祭りの中心で素敵な花が咲いている。
誰かが見て、学んで、識ったその先で生み出された無限の種を、私達はきっと何処かで咲き誇らせる。
人が学ぶのだ。ならば神様だって学ぶのだ。
そして学んだことはいつか、笑顔の種となる。
"恋使"はその種を自覚させるための力で、少しだけ背中を押すだけの存在。
ただそれだけだったけれど、とても大切なものだったと私は胸を張って誇れる。
それが"稲森 夕音"なのだと、笑顔で宣言できる。
「夕音!」
「夕音~?」
「稲森さん」
「夕音ちゃんっ」
たくさんの声が私を呼ぶ。私が私であるからこそ紡げた関係が、私を私と定めて親しみの声を掛ける。
また一つ、ここに"晴れ"の気配が生まれた。
幸福の気配が、笑顔の種を生み出した。
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