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9月7日 花と虫
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あれから、利羽の噂というか陰口はさらに広まっていた。クラスだけでなく、元クラスメイトも同じようなことを言っているらしい。それ程までに、蒼くんの人気は高いということなのだろうか。
「…問題が、多いなぁ…」
私は無意識に呟いていた。誰かに聞かれていないか、と慌てて周りを見回す。
「どうしたん?」
特徴のある話し方。高く結んだサイドテールの影。
「八千奈ちゃん」
そういえば八千奈ちゃんも、5月から6月くらいに陰口を叩かれて、諦めたような表情をしていたな、と思い出す。
「なんかめっちゃ怖い顔しとったけど。悩み事でもあるん?」
「…うぅん、ちょっと考え事してたから」
八千奈ちゃんに相談したい。けれど、思い出させるのは避けたい。あまり良い思い出ではないし、思い出すのは苦しいだろうから。
「そんならええけど。あんまり無茶すんのもあかんで?」
「うん、気を付けるね」
そこでチャイムが鳴った。八千奈ちゃんは慌てて席に戻る。
…由芽に聞くのが、1番かな。
由芽なら情報を掴んでいるだろうし、解決策も出してくれる。でも、私は何故か、それはやるべきでないような気がした。
放課後、いつものように練習をする。家の遠い人から順番に帰ってしまうので、残りは少なかった。私もそろそろ帰ろう、とバッグを肩にかけた。下駄箱を出たところで、遠くの花壇に人影が見えた。図書室の真下の花壇。あれは蒼くんが植えた花。
気付いたら私は、蒼くんの目の前に立っていた。
「あれ、稲森。どうしたの?」
「人影が見えたから。誰かなって」
私はしゃがまない。蒼くんが私を見上げる形になっている。
「残念俺だ。花の世話をしていたんだ。昔から好きなんだ。女みたいだってよく言われる」
「私はそんなこと思わないけど。花、好きなんだね」
「うん、見てると癒されるし。優しい気持ちになるし」
私は、風に揺れる花を見て、だんだんと胸が締め付けられていった。
人気者を見るのは、花を見る気持ちと同じ。見ているだけで幸せになれるから、だからそれを愛でる。でも、その花を荒らす虫は敵とみなされて、邪魔だって花壇から排除される。蒼くんを花に例えると、虫と見なされる利羽。何もしないで花を愛でるだけの人達に、蒼くんの周りから邪魔だってどかされる。
でも、花は虫を拒まない。わざと虫に近寄らせて、花粉を運ぶ手伝いをさせる強かな花もある。花が虫を受け入れれば、虫と花のセットで受け入れる人が必ず出てくる。でもそれは、花が虫を受け入れたと世間が知らなければならない。
「…蒼くん」
私は、夕暮れに染まった空の下で、静かに口を開いた。
「…問題が、多いなぁ…」
私は無意識に呟いていた。誰かに聞かれていないか、と慌てて周りを見回す。
「どうしたん?」
特徴のある話し方。高く結んだサイドテールの影。
「八千奈ちゃん」
そういえば八千奈ちゃんも、5月から6月くらいに陰口を叩かれて、諦めたような表情をしていたな、と思い出す。
「なんかめっちゃ怖い顔しとったけど。悩み事でもあるん?」
「…うぅん、ちょっと考え事してたから」
八千奈ちゃんに相談したい。けれど、思い出させるのは避けたい。あまり良い思い出ではないし、思い出すのは苦しいだろうから。
「そんならええけど。あんまり無茶すんのもあかんで?」
「うん、気を付けるね」
そこでチャイムが鳴った。八千奈ちゃんは慌てて席に戻る。
…由芽に聞くのが、1番かな。
由芽なら情報を掴んでいるだろうし、解決策も出してくれる。でも、私は何故か、それはやるべきでないような気がした。
放課後、いつものように練習をする。家の遠い人から順番に帰ってしまうので、残りは少なかった。私もそろそろ帰ろう、とバッグを肩にかけた。下駄箱を出たところで、遠くの花壇に人影が見えた。図書室の真下の花壇。あれは蒼くんが植えた花。
気付いたら私は、蒼くんの目の前に立っていた。
「あれ、稲森。どうしたの?」
「人影が見えたから。誰かなって」
私はしゃがまない。蒼くんが私を見上げる形になっている。
「残念俺だ。花の世話をしていたんだ。昔から好きなんだ。女みたいだってよく言われる」
「私はそんなこと思わないけど。花、好きなんだね」
「うん、見てると癒されるし。優しい気持ちになるし」
私は、風に揺れる花を見て、だんだんと胸が締め付けられていった。
人気者を見るのは、花を見る気持ちと同じ。見ているだけで幸せになれるから、だからそれを愛でる。でも、その花を荒らす虫は敵とみなされて、邪魔だって花壇から排除される。蒼くんを花に例えると、虫と見なされる利羽。何もしないで花を愛でるだけの人達に、蒼くんの周りから邪魔だってどかされる。
でも、花は虫を拒まない。わざと虫に近寄らせて、花粉を運ぶ手伝いをさせる強かな花もある。花が虫を受け入れれば、虫と花のセットで受け入れる人が必ず出てくる。でもそれは、花が虫を受け入れたと世間が知らなければならない。
「…蒼くん」
私は、夕暮れに染まった空の下で、静かに口を開いた。
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