202 / 812
9月13日 視界を覆うのは
しおりを挟む
やがて3人は倒れ、眠りについた。花火と片倉くんと一緒に、3人を横にさせる。
「…整理すると、前世で関わりがあった3人で、出会ってしまったなど…何かのきっかけで記憶がよみがえった…ということかしら」
「そう…みたいだね」
頷くだけで精一杯だった。私の瞳が、3人の近くに立つ別の人物を捉えていたから。扇様の側に立つ、長い黒髪を持つ女性。重なっていて見えづらかったが、高価そうな赤い着物を身に纏っていた。深沙ちゃんの側で跪いているのは、忍者のような隠密のような、動きやすい服装に身を包んだ少女。青海川くんの側には笠で顔を隠した男性。教科書で見た江戸時代の俳諧師のような格好をしていた。
それを認識した瞬間、目の前が真っ暗になった。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
いつの間にか閉じていた目を開くと、暗闇。見上げれば、大きな丸い月と星が瞬いていた。夜だ。そう認識してから数秒後、耳をつんざくような悲鳴が後ろから聞こえた。振り返ると、視界を覆い尽くすような赤。パチパチと火の粉の飛ぶ音が聞こえてきて、その赤が炎だと気付いた。
炎の目の前で、自分の服や肌が焼かれることも厭わずに、泣き叫ぶ女の子が見えた。深沙ちゃんの側に立っていた少女、舞茶だった。瞳から涙を流し、炎の方向へ手を伸ばす。舞茶の指先が空を掴む。そして彼女は悔しそうに下を向いた。そんな舞茶の後ろから、武士のような格好の男性。舞茶と話をしているが、私の耳には届かない。
唐突に暗転し、場面が切り替わる。
燃えた障子や畳に囲まれた、書院造りの城の中。燃え盛る炎の中心で、赤い着物が着崩れるのも、長い黒髪が乱れるのも構わずに寝転がる女性。生きることに執着など無いかのように、どうでもよさそうに天井を見つめる。
私の頭に痛みが走る。ズキズキと痛む。そして流れ込んでくる、彼女の心の声。
他に想い人がいたのに、偽ってあいつと婚姻を結んだ罰だろうか。舞茶の幸せを願ったからだろうか。従者の幸せを願うなど、と反対されると分かっていたから言わなかった。舞茶にすら言わなかった。けれどあの人には全て話せた。随筆家の、笠で顔を隠したあのお方。滅多に会えなかったけれど、会った時には必ず歌を教えてくれた。表情をあまり動かさないあの人。それでも少しずつ笑ってくれるようになったのが嬉しくて、だんだん惹かれていった。それをずっと隠すのは苦しかった。叶うならば、あの人を一目見たかった。でも、もう疲れた。これでやっと、嘘をつき続けなくて済む。
彼女の本音が、私の頭に痛みとともに、いつまでも響いていた。
「…整理すると、前世で関わりがあった3人で、出会ってしまったなど…何かのきっかけで記憶がよみがえった…ということかしら」
「そう…みたいだね」
頷くだけで精一杯だった。私の瞳が、3人の近くに立つ別の人物を捉えていたから。扇様の側に立つ、長い黒髪を持つ女性。重なっていて見えづらかったが、高価そうな赤い着物を身に纏っていた。深沙ちゃんの側で跪いているのは、忍者のような隠密のような、動きやすい服装に身を包んだ少女。青海川くんの側には笠で顔を隠した男性。教科書で見た江戸時代の俳諧師のような格好をしていた。
それを認識した瞬間、目の前が真っ暗になった。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
いつの間にか閉じていた目を開くと、暗闇。見上げれば、大きな丸い月と星が瞬いていた。夜だ。そう認識してから数秒後、耳をつんざくような悲鳴が後ろから聞こえた。振り返ると、視界を覆い尽くすような赤。パチパチと火の粉の飛ぶ音が聞こえてきて、その赤が炎だと気付いた。
炎の目の前で、自分の服や肌が焼かれることも厭わずに、泣き叫ぶ女の子が見えた。深沙ちゃんの側に立っていた少女、舞茶だった。瞳から涙を流し、炎の方向へ手を伸ばす。舞茶の指先が空を掴む。そして彼女は悔しそうに下を向いた。そんな舞茶の後ろから、武士のような格好の男性。舞茶と話をしているが、私の耳には届かない。
唐突に暗転し、場面が切り替わる。
燃えた障子や畳に囲まれた、書院造りの城の中。燃え盛る炎の中心で、赤い着物が着崩れるのも、長い黒髪が乱れるのも構わずに寝転がる女性。生きることに執着など無いかのように、どうでもよさそうに天井を見つめる。
私の頭に痛みが走る。ズキズキと痛む。そして流れ込んでくる、彼女の心の声。
他に想い人がいたのに、偽ってあいつと婚姻を結んだ罰だろうか。舞茶の幸せを願ったからだろうか。従者の幸せを願うなど、と反対されると分かっていたから言わなかった。舞茶にすら言わなかった。けれどあの人には全て話せた。随筆家の、笠で顔を隠したあのお方。滅多に会えなかったけれど、会った時には必ず歌を教えてくれた。表情をあまり動かさないあの人。それでも少しずつ笑ってくれるようになったのが嬉しくて、だんだん惹かれていった。それをずっと隠すのは苦しかった。叶うならば、あの人を一目見たかった。でも、もう疲れた。これでやっと、嘘をつき続けなくて済む。
彼女の本音が、私の頭に痛みとともに、いつまでも響いていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる