神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
206 / 812

9月19日 30分前の準備

しおりを挟む
『ただいまより、一般公開を開始致します』
そんなアナウンスが聞こえて、クラスが盛り上がる。
「最初の公演はいつだっけー?」
「11時からだよー!10時半には来といてねー!」
「じゃあ30分しかないのか!」
「遊ぶならサクサクっと行ってこーい」
ざわざわと話し声で教室中が包まれる。教室のドアに「立入禁止」と書かれたポスターを貼った後、私は小物類を出している亜美を手伝う。
「ありがとう夕音。でも遊びに行ってきて良いんだよ?」
「いいよ。どうせ30分しかないし」
「そっか、ありがとう」
クラスメイトはほとんどが遊びに行って、数人が残っている形となった。
「…私は、貴方に…」
ふと声が聞こえたので顔を上げると、窓際で利羽が台本を読んでいた。ぼろぼろになった台本。何度も何度も練習したのが分かる、努力の滲んだ台本だった。
「利羽ちゃんの声さ」
亜美が利羽の練習を邪魔しないように小さな声で言う。亜美の切り出し方に、少しドキッとした。
「凄く綺麗だよね。凛々しいところと優しいところと、切り替えがはっきりしてるし」
「…うん、そうだね」
良かった。主役の利羽を認めてくれる人がいる。悪意以外のものが利羽に向けられている。
風に揺れる髪を押さえながら、利羽が振り向く。私と亜美に気付いて、こちらの方へ来た。
「何してるの?」
「小物とかの準備だよ。後だと多分ごちゃごちゃするだろうから」
「私も手伝うわ」
「いいの?練習は?」
「多分大丈夫。手伝わせて」
「じゃあお願いしようかな、ありがとう」
3人でやったおかげで、あっという間に終わった。途中で亜美が自販機に行って、ジュースを買って来てくれたので、それを飲みながらおしゃべりをする。
「手芸部凄いよね。利羽の衣装、きらきらしてる」
「ね。ドレスなのに動きやすくて、綺麗で…」
「夕音のは動きやすさ重視なのに、かっこいいよね」
「亜美の衣装は可愛いね」
手芸部の話をしていると、ちょうど本人、千夏が教室に入ってきた。
「あれ、3人ともお揃いで。何してるの?」
「手芸部凄いねって話してたんだ!」
「え?どういうこと?」
「準備が大体終わったから、衣装の話してたの」
「動きやすさの中に、綺麗とか可愛いとかがちゃんと込められてて、凄いなぁって」
「あー、ありがとう。今度部員に言っておく。ちなみに利羽ちゃんのは私の作品だよ」
「そうなの?このドレス、細かいところまで刺繍が施されていて、縫い目は分かりづらくて…この作者さんは繊細で丁寧で、優しい人なんだろうなって思ってたのよね」
「あってるよね」
「あってるね」
「やめて!ドレスを通して私を褒めないで!ドレスを褒めて!」
恥ずかしそうに千夏は顔を隠す。それに対して利羽や亜美がまだまだからかおうとしてるのが見えた。
何気ない会話の1つなんだけど、すごく楽しくて、微笑ましい。
そんなことを思っていると、ドアが開いて数人が入ってきた。時計を確認すると、10時半だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

讃美歌 ② 葛藤の章               「崩れゆく楼閣」~「膨れ上がる恐怖」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...