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複雑タイム 紗奈
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「好きだ」
突然耳元で囁かれた声に、私は思考が止まった。引っ張られた腕がじんじんと痛む。驚いて見開いた目をじっと見つめてくる男。その男の名は梶栗 竜夜。いつものようにからかっていたが、もう6時を知らせるチャイムが鳴ったので帰ろうとバックを肩にかけて帰ろうとすると腕を引っ張られた。そして、耳元で好きだと言われた。私は理解が出来なかった。何も言葉が出てこなくて、謎の不安が私を襲った。
「それだけ」
ぱっと視線を外し、顔を伏せると私の腕を離して帰って行った。私は、なにもすることが出来なくて座り込んでしまった。耳と頬が熱を帯びる。
嫌じゃ、なかった。むしろ嬉しかった。
だけど私は…多分…羅樹が好き。あれ?なんで私、竜夜にドキドキしてるんだろう。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
ガラッ
「あ、さなーっ。あれ?竜夜と一緒じゃなかったの?」
話しかけてきた霙の言葉に、カッと耳が熱くなる。話すこともままならない今の状態では、からかわれてしまうと思い無言で階段を急いで下りた。
「ちょっ…紗奈!?」
大きな声で霙が叫んでいたが、私は良心を無視して走った。
翌日。昨日の告白を無かったかのようにして笑う。本当は、忘れるはずもない。今日竜夜に会ったらどんな対応をするか、笑顔で話せるか、そんな事をずっと考えていた。校舎に近づく度、脈が速くなっていく。そんな様子を1ミリも見せないように笑顔で挨拶し続けた。
遠くに、竜夜の姿が見えた。視線が、竜夜に集中する。上手く笑えていた顔がぎこちなくなる。目が笑えていない、とはっきり自分で分かった。
やだ。
どうやって接すれば良いの?ねぇ。教えてよ。私は…私は羅樹が好きなのに…。違う。私は竜夜なんか好きじゃない。好きじゃないのに…なんでこんなにも心がズキズキと痛むのだろう。なんでこんなにも、嘘をついている気分になるのだろう。なんで…。
「おはよう今入?」
「うわぁっ!?」
考え事をしていたらいつの間にか竜夜に見つかってしまったようで。驚いた私は声を上げた。
「…っ、お、おはよう…竜夜」
声を上げてしまったことに恥ずかしさを感じ、俯きがちに返事をする。
「って、なんで疑問系なの!?」
「え?いや、無視されるかなー…と思って。でも無視されなくて良かったよ!」
嬉しそうに屈託のない笑顔で私と会話を続ける。私はその笑顔に心が痛んだ。何故だろう。私は、私は…。どうしてこんなにも、竜夜のことを気にしてしまうのだろう。
…わかってる、けど。
「無視したって話しかけてくるでしょ」
頬を赤くしながら返す。眼鏡が少しだけ曇ったので外す。鞄の中に放り込んだ眼鏡ケースを取り出し、眼鏡を拭く。その間も会話は続いていた。
「そうだなー、無駄な心配だったな!」
やめろ。私にそんな笑顔を向けるな。ぐらぐらと足元が揺らいで、今にも崩れ落ちそうになる。
と、その時。
「おはよう、紗奈」
透き通るような声が、隣から聞こえた。振り向くとそこには利羽がいた。肩につくぐらいの髪をおろし、触覚のような横髪を丸いヘアゴムで2つ緩く結んでいる。
「あっ…おはよう利羽」
助かった、と一安心していると妙に利羽がそわそわしている。それに気付いた私は、小声で利羽に聞いた。
「ねぇ、なんでそわそわしてるの?」
「えっと…梶栗が、機嫌悪そうだから」
竜夜が?
と私は振り返った。すると、ちょっとだけ眉を寄せて何か言いたそうにしている竜夜がいた。
「あっ、ご、ごめん!話の途中だったね」
「いいよ、ごめんな。俺もタイミング失って行こうにも行けなかったし…」
私が謝ると、慌てて私をフォローしてくれた。
「いい奴だな…」
「え?」
ボソッと呟いた声が聞こえたみたいだった。私に聞き返す。
「いや?優しいなと思って。私、そういうところ好きだな」
つい素で話してしまった。あっと気付いた時には、竜夜は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。いきなり走り出したかと思うと、そのまま校舎の中に入ってしまった。
あ…やっちゃった。
脈がある、みたいに言ってしまった。ごめんなさい。私はまだ、自分の事がわからない。
だから、時間を下さい。
突然耳元で囁かれた声に、私は思考が止まった。引っ張られた腕がじんじんと痛む。驚いて見開いた目をじっと見つめてくる男。その男の名は梶栗 竜夜。いつものようにからかっていたが、もう6時を知らせるチャイムが鳴ったので帰ろうとバックを肩にかけて帰ろうとすると腕を引っ張られた。そして、耳元で好きだと言われた。私は理解が出来なかった。何も言葉が出てこなくて、謎の不安が私を襲った。
「それだけ」
ぱっと視線を外し、顔を伏せると私の腕を離して帰って行った。私は、なにもすることが出来なくて座り込んでしまった。耳と頬が熱を帯びる。
嫌じゃ、なかった。むしろ嬉しかった。
だけど私は…多分…羅樹が好き。あれ?なんで私、竜夜にドキドキしてるんだろう。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
ガラッ
「あ、さなーっ。あれ?竜夜と一緒じゃなかったの?」
話しかけてきた霙の言葉に、カッと耳が熱くなる。話すこともままならない今の状態では、からかわれてしまうと思い無言で階段を急いで下りた。
「ちょっ…紗奈!?」
大きな声で霙が叫んでいたが、私は良心を無視して走った。
翌日。昨日の告白を無かったかのようにして笑う。本当は、忘れるはずもない。今日竜夜に会ったらどんな対応をするか、笑顔で話せるか、そんな事をずっと考えていた。校舎に近づく度、脈が速くなっていく。そんな様子を1ミリも見せないように笑顔で挨拶し続けた。
遠くに、竜夜の姿が見えた。視線が、竜夜に集中する。上手く笑えていた顔がぎこちなくなる。目が笑えていない、とはっきり自分で分かった。
やだ。
どうやって接すれば良いの?ねぇ。教えてよ。私は…私は羅樹が好きなのに…。違う。私は竜夜なんか好きじゃない。好きじゃないのに…なんでこんなにも心がズキズキと痛むのだろう。なんでこんなにも、嘘をついている気分になるのだろう。なんで…。
「おはよう今入?」
「うわぁっ!?」
考え事をしていたらいつの間にか竜夜に見つかってしまったようで。驚いた私は声を上げた。
「…っ、お、おはよう…竜夜」
声を上げてしまったことに恥ずかしさを感じ、俯きがちに返事をする。
「って、なんで疑問系なの!?」
「え?いや、無視されるかなー…と思って。でも無視されなくて良かったよ!」
嬉しそうに屈託のない笑顔で私と会話を続ける。私はその笑顔に心が痛んだ。何故だろう。私は、私は…。どうしてこんなにも、竜夜のことを気にしてしまうのだろう。
…わかってる、けど。
「無視したって話しかけてくるでしょ」
頬を赤くしながら返す。眼鏡が少しだけ曇ったので外す。鞄の中に放り込んだ眼鏡ケースを取り出し、眼鏡を拭く。その間も会話は続いていた。
「そうだなー、無駄な心配だったな!」
やめろ。私にそんな笑顔を向けるな。ぐらぐらと足元が揺らいで、今にも崩れ落ちそうになる。
と、その時。
「おはよう、紗奈」
透き通るような声が、隣から聞こえた。振り向くとそこには利羽がいた。肩につくぐらいの髪をおろし、触覚のような横髪を丸いヘアゴムで2つ緩く結んでいる。
「あっ…おはよう利羽」
助かった、と一安心していると妙に利羽がそわそわしている。それに気付いた私は、小声で利羽に聞いた。
「ねぇ、なんでそわそわしてるの?」
「えっと…梶栗が、機嫌悪そうだから」
竜夜が?
と私は振り返った。すると、ちょっとだけ眉を寄せて何か言いたそうにしている竜夜がいた。
「あっ、ご、ごめん!話の途中だったね」
「いいよ、ごめんな。俺もタイミング失って行こうにも行けなかったし…」
私が謝ると、慌てて私をフォローしてくれた。
「いい奴だな…」
「え?」
ボソッと呟いた声が聞こえたみたいだった。私に聞き返す。
「いや?優しいなと思って。私、そういうところ好きだな」
つい素で話してしまった。あっと気付いた時には、竜夜は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。いきなり走り出したかと思うと、そのまま校舎の中に入ってしまった。
あ…やっちゃった。
脈がある、みたいに言ってしまった。ごめんなさい。私はまだ、自分の事がわからない。
だから、時間を下さい。
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