もう1人の、王子と呼ばれる人が気になって話しかけただけだった

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11.いちゃつき

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 水曜日。図書当番の日である。2年生は研修だかなんだかで学校にいなくて、3年もやらなければならない課題があるとかで、今日の図書当番は俺と弥生くんの2人だけ。
 昼休みにフリーなのは1年生だけ。王子2人でいることが珍しくなくなったからか、王子目当てでくる人はいない。図書室以外でも見れるし。本を借りに来た人が1人いただけで、委員会の仕事は暇である。

「こんな暇なことあるんだな」
「なー」

 今、図書室は、カウンター席にいる俺と弥生くんの2人だけ。それなら、いいんじゃないか?

「チューしたい」

 俺がそう言うと、隣で本の貸し方の紙をボーッと眺めていた弥生くんが、こちらを向いた。

「……鍵閉めてないよ」

 眉を寄せてムッとした顔をする弥生くん。これは怒ってるのではなく、照れているのだ。

「でも、入り口からここ見えないし、ドアの音で人が来るの分かるよ」
「……」
「ダメ?」

 俺は知っている。俺が弥生くんの眉を下げた顔でお願いされたら断れないように、弥生くんも俺のこの顔には弱い。

「……音がしたらすぐ離れるからな」
「うん!」

 してやったりである。弥生くんに顔を近づけ、目を閉じ、唇を重ねる。すぐ離れようとした時。

「んっ……」

 弥生くんが俺の後頭部に手をやり、引き寄せた。まるで離れることを拒むように。驚いて目を開けると、近すぎる距離で目が合った。

 弥生くんって、キスしてる時、目開けてたの!? え、今だけ? それとも前から!?

 合った目が細められたと思ったら、唇を舐められ、舌を入れられた。

「んっ……ん…」

 初めての感覚に、頭がクラクラしてくる。気持ち良い。

 ガラッ

 図書室のドアが開く音がして、俺たちはパッと身体を離し、俺は立って、適当に腕のストレッチを始めた。弥生くんは、そんな俺を見て、「フッ」と笑った。なんでそんなに余裕な顔がしていられるんだ! まあ、言い出したのは、俺なんだけど……
 

 こちらに近づいて来る足音がして、そちらを見ると、髪の毛をハーフアップにしている女子が本を持って来た。たしか、弥生くんに会いに行った時に教室で見かけたことがある。弥生くんと同じ1組の人だ。

「これ。借ります」
「はい」

 弥生くんが対応し、滞りなく作業する。

「はい」
「ありがとう」

 女子は借りた本を持って、図書室を出て行った。

「はぁぁぁぁ…………心臓に悪い」
「フッ……晴人が言い出したことだよ」

 弥生くんは、いたずらっ子のような笑顔で、そう言った。
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