【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との

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2.実は結構仲良しだったりするかも

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 古くから魔法と、精霊や妖精の加護で発展して来たこの世界。

 その中で最大の勢力を誇る帝国は⋯⋯優秀な魔法士と、錬金術で作り上げた強力な防具武器を所有する軍隊で、次々と周辺の小国を併合し、世界一の広大な領土を誇っている。

 歴代の帝王は戦闘狂と呼ばれる者ばかりで『力こそ全て』だと宣い殺戮を繰り返し、今代の帝王もご多分に洩れず血濡れの玉座に新しい血を捧げる事に心血を注いできた。

 帝国の脅威に怯える小国は『出る杭は打たれる』と保身に走り、かろうじて生きながらえている。

 さて、そんな危うい状況の中⋯⋯神の采配か精霊や妖精の怒りか⋯⋯魔力や魔法適性を持つ子供が減りはじめ⋯⋯原因が分からないまま、魔法士の取り合いがはじまったが、優秀な魔法士が力の強い帝国に集まっていったのは当然の流れだっただろう。



 その流れに反して魔力持ちの子供が今まで通りに産まれる唯一の国が、ロクサーナ・バーラムの暮らす聖王国。

 創世の時代から正義の女神ユースティティを祀っていると言われ、国民の4割以上が聖職者を含む教会従事者。

 登録された魔法士や聖女の数は世界一、数少ない属性でさえも以前と同じく産まれ、神の怒りを買えば益々加護が減ると不安がる各国とは、不可侵条約を結ぶ完全中立国。

 他国の戦争や政治には一切関与しないが、災害などに魔法士や聖女を派遣して外貨を稼いでいる。



 今回、治癒魔法の使える者との婚姻を希望してきたのはダンゼリアム王国だが、聖王国がその依頼を受けたのは非常に稀なケースだった。

 海に面した東側以外は魔物の蔓延る森に囲まれたダンゼリアム王国は、森から出てくる強力な魔物に田畑を荒らされるだけでなく、定期的に起こるスタンピードで村が壊滅する事もある。その上、季節によって海獣が船や港を破壊するという⋯⋯。

 他国よりも災害の頻度が高く⋯⋯聖王国から年に数回、魔法士を派遣しているが、国全体が非常に貧しく、ここ数年聖王国はボランティアに近い状態が続いている。

 聖王国として、ダンゼリアム王国の災害を見て見ぬふりをする事はできないが、ほぼ無償での派遣が続き他国からのクレームが増えていた。

『うちも財政難で⋯⋯』

『今年の税収が例年の半分に⋯⋯』

『冷害の影響がまだ⋯⋯』

 魔法士の派遣費用は細かく定められているが、『ダンゼリアム王国が無償ならうちも値下げを』と言う国が増え続け⋯⋯。



 派遣される魔法士や聖女は細かくランク付けされ、魔力と使用可能属性と魔法の練度で派遣費用が決まっている。

 彼等の派遣には人件費の他に、移動にかかる諸費用から現地での宿泊その他は先方負担で、活動に必要になった購入品についても請求する。

 大規模な災害や複数回の派遣となると、国の負担はかなりのものになる為、愚痴が出るのは当然かも。





「と言うわけでさあ⋯⋯」

「お断りします! ダンゼリアム王国方面の担当はアリエス様の管轄ですよね。その他にもあの方面には、老害⋯⋯ゴホン⋯⋯経験豊富な諸先輩方がおられますから、私のような若輩者の出番などぜーったいにありません」

「でもほら、スタンピードが起きるとか、海獣が定期的に出てくるとかあるからさぁ、何か原因があると思うんだよ。だから、ねっ」

 パチンと大きな音を立てて、両手を合わせたのはルイス・ジルベルト司祭。

「それこそアリエス様の出番ですね。ナディア様とオレリア様の仲良し3人組なら向かう所敵なしと、本人達は仰っておられますから。問題解決ですね~」

 ダンゼリアム王国は聖王国の東方に位置しており、王国自体にはそれ程目立った特徴はないが、この2つの国の間には風光明媚な観光地で有名なハプスシード公国がある。

「必ず公国で一泊できると言う特典付きの、おいし~い仕事ばかり選んでおられるアリエス様達に、ここ一番頑張っていただけば良いんじゃないですか?」

 アリエス・ジェファーソンは水属性で下級の治癒魔法が使える。ちょびっとだけど。

 ナディア・オニールは火属性で、魔力が多い。

 オレリア・ブームは風属性と光属性なので治癒魔法に(本人的には)自信がある。

「でもほら、今回は王子との婚姻をって言ってきてるから、彼女達では年齢的にね。王子はまだ15歳だって言うし」

「3人とも30前ですから、頑張ればなんとかなりますって。アリエス様達って誰よりもエネルギッシュで、美容に生命かけてて⋯⋯色気? 大人の魅力で王子もメロメロになるかも! こういうのを、巷では『年の差婚』とかって言うらしいですよ。
庭師のガンツさんが教えてくれたんですけどね『筆おろし』してくれた大人の女性って男の人には特別だって。だか⋯⋯」

「ガンツゥゥ! 15歳の子供に何を教えてんだよぉ~」

「ん? 『筆おろし』って言うのはですね。お⋯⋯」

「やーめーれー! 頼むから、やめて、お願い」

 ジルベルト司祭がテーブルに突っ伏して『もう聞きくのやだ!』と両耳を押さえた。

「兎に角、聖王国の魔法士を特例でドナドナするんですから、王国だって少しくらい我慢するんじゃないですか?」



「ダンゼリアム王国の希望は『治癒魔法』の使える人なんだよね~。でも流石にアリエス様達を送り込むのは無理すぎでさぁ⋯⋯」

「良い年をしてテーブルにのの字を書いても可愛くないですからね。ジルベルト司祭ってもうすぐ30なのに、可愛さアピールはヤバいです」

「26になったばかりなんだから、四捨五入しないでぇ!」

 ジルベルト司祭は怒らせると少しオネエ言葉になる。それが面白くてついやり過ぎるが、これは5年前から続いているロクサーナ(とジルベルト司祭)のお楽しみのひとつ。

「それにさぁ、婚約とか婚姻が必須ってわけじゃないんだ。留学生として向こうの学園に入学して、王子とか側近とか⋯⋯高位貴族ならオーケーかな。兎に角交流して『良いな』と思える奴がいたらで良いんだよ? あくまで主導権はこっちにあるし、サブリナ・セルバンとセシル・ファーラムにはもう頼んでるんだ~」

「ぐぬぬ⋯⋯なんて⋯⋯なんて汚い手を⋯⋯だから大人って嫌いだぁぁぁ」

 同い年のサブリナとセシルは、人嫌いのロクサーナが真面に話をする数少ない友人。

 サブリナ・セルバンは水属性と闇属性、セシル・ファーラムは光属性。2人とも治癒魔法が使える為、ダンゼリアム王国の希望にはぴったり。

「でもでも、2人は帝国のある北方が担当だから、ダンゼリアム王国は行ったこともないじゃないですか!」

「留学は3年だからさぁ、その間は仕事を忘れて青春してくれば良いじゃん! 時々仕事して~、後は自由! 学生生活を満喫して~、放課後はカフェとか行ったり?」

「貧困で有名なダンゼリアム王国にカフェがあるとは思えませんね! 精々畑で芋掘りとかじゃないですか?」

「よく肥えた畑で育つ薬草は、すっごいポーションとかできるし」

「⋯⋯働かせる気、満々じゃないですか」

「友達と青春しながら、農園作りのスローライフ?」

 必死で理由を考えながらも、どんどん青ざめていくジルベルト司祭。

「土壌改良に薬草作りのノウハウと、ポーション作成の技術料。高くつきますよ? サブリナ達の護衛代に王国の調査費用、問題を解決した際にはそれに対する対価も、きちんと耳を揃えて払ってもらいますから。
契約覚えてます? 私は固定給じゃなくて能率給ですからね」



「は、は、払う! 頑張って捻り出すから⋯⋯ロクサーナ、サブリナとセシルのこと宜しく!」

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