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13.レベッカ劇場の第二幕、エセ眼鏡に感謝する時がくるなんて
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翌日は、1時間目から学科試験がはじまった。
学科は自由七科とも言う。文法・修辞学・弁証法の三学と算術・幾何・天文学・音楽の四科からなる。
三学は初歩的で主に言論に関するもの、四科はより高度で事物に関する教科。
文法はラテン文学の注釈、修辞学は教会の文書・法令の作成や歴史、幾何は初歩の地理学、天文学は占星術、音楽は数理的研究などを含む。
これらの教養課程を修めた学生が、専門課程である神学・医学・法学の三上級学部に分かれて進学できる。
(教科書見たけど初歩の初歩⋯⋯入り口かすってるくらいだったね)
神官やシスターなら『神学』が、聖女なら『医学』の知識が必要になる。
その為、聖王国では将来神学や医学を学ぶ為に、幼少期から自由七科を勉強しはじめる。因みに、依頼で他国と交渉するリーダーは『法学』が必須。
(だから、習ってるはずなんだけどなあ)
今日の試験は、文法・修辞学・算術・天文学で、午後は専攻科目の試験になる。明日の午前中は弁証法・幾何・音楽で、午後は休みになっていた。
「はぁ、勉強嫌い⋯⋯早く午後にならないかな」
「セシル、大丈夫だと思うわよ。教会でも頑張ってたじゃない」
「そうそう、多分だけど普通はあそこまでやらないと思う⋯⋯多分だけど」
「そう? 2人ともそう思う? な、なら何とかなるかな。あぁ、でもでも恋愛小説とか冒険小説ばっかり読むんじゃなかった~。あの時間があればぁぁ」
「ストレス溜まって爆発してたかもね」
「ありがとう⋯⋯多分、慰めてくれてるんだよね。一生懸命頑張るから、亡骸は拾ってね」
「朝食の時カモミールのハーブティー出したげたじゃない。きっと大丈夫」
カモミールの花言葉は『逆境に耐える』『あなたを癒やす』などで、抗ストレスや安眠などの効果がある。
「うん、寝ないで頑張る」
「そだね、うん。寝ないで名前だけは書くといいよ」
午前中の試験が終わり、魂の抜けかけたセシルを連れて学園のカフェテリアに向かった。
「うわ、広いね~」
吹き抜けの天井と一面がガラス張りになったカフェテリアの入り口には、席に案内したり料理を運ぶ使用人が並んでいる。
広く間隔をあけて置かれたダイニングテーブルには、レースのテーブルクロスがかけられ、テーブル毎に違う花が飾られ、『食堂』などと呼んではいけない雰囲気が漂う。
「ご案内致します。3名様で宜しいでしょうか」
「はい、お願いします」
テーブルについてメニューを選びその場で注文すると、出来立てが運ばれてくるのを待っているだけでいい。
「規格外? 寮の食堂もそうだったから、覚悟はしてたけどさ」
「本当に、教会の食堂と違いすぎですわね」
教会ではカウンターに並んで、決められた食事をもらってテーブルにつく。食べ終わった後はもちろん返却口まで自分で運んでいく。
「これってさぁ、テーブルや床を汚したりカトラリーを落としたら、使用人が走ってくるんだよね」
「間違いないね。この国の貴族の子息令嬢が、モップや雑巾を抱えて走るのは想像できない」
「寮でも爵位に関係なくメイドを連れてきてるらしいわよ」
「高位貴族だけじゃなかったんだ。おかしいと思ってたんだよね。盛り盛りのヘアースタイルとか、バリバリの化粧とか⋯⋯一人でできるの? って思ってた」
雰囲気はともかく、料理は美味しい。盛り付けも味も学園の食堂⋯⋯カフェテリアとは思えないレベル。
満足して最後のお茶を飲んでいると、パタパタと音がして、ロクサーナの後ろから嗅ぎ慣れた悪臭⋯⋯香水の匂いが漂ってきた。
「ここで食べてたの? 私はアーノルド様に誘われて、あそこの別室で食べたの」
レベッカが指差す方向には、中二階になった特別室らしき部屋があるのが見えた。
「王家専用の特別メニューだったし、とっても美味しかったわ~」
「そっか、それは良かったね」
ロクサーナが出来る限りの笑顔で返事をすると、レベッカがメソメソと泣きはじめた。
(まただよ~、堪忍して⋯⋯)
「酷いわ! ロクサーナ達に除け者にされた私を、アーノルド様達が心配してくださっただけなのに!」
レベッカが突然大声で叫ぶと、ロクサーナ達の近くに座っていた生徒がギョッとして飛び上がった。
しんと静まりかえったカフェテリアにヒソヒソと小声で話す声が聞こえはじめ、ロクサーナが返事をしようとして口を開いた時、アーノルド王子の声が響いた。
「どうしたんだい? また、ロクサーナに何か言われたの?」
(え~、既に『言われた』のを前提で話すとかあり得ない。そんなに心配なら放置プレイしないで首輪でもつけて、側においといてよね)
「私がアーノルド様達とお食事したのが気に入らないって⋯⋯」
「はあ、油断も隙もないね。私が誰と食事をしようと、ロクサーナには何の関係もない。勘違いしてもらっては不愉快だ!」
「お言葉を返すようで申し訳ありませんが、レベッカが食事が美味しかったと言ったので、『良かったね』と返事しただけです。その言葉の中に、レベッカがどのような意味を思い付いたのか分かりませんが、誰と誰が一緒に食事をしようが、自由だと思っております。
それから、私の事は『バーラム』とお呼び下さい。アーノルド王子殿下にファーストネームで呼ばれるような関係ではありませんので」
「なんて傲慢な! 男爵家の分際で王子殿下に意見するなんて、不敬だぞ。叩き切ってやる!」
「留学生として、何もご存知ない方々から誤解を招くような行動を慎みたいと思っているだけでございます故、ご理解いただけますと恐縮でございます」
「ふん! 聖王国に送り返してもいいんだぞ。王子殿下に不敬を働き、命令するような奴は我が国には相応しくないからな!」
(エセインテリ眼鏡、ありがとう!!)
「では、即刻留学を取りやめこのまま帰国いたします」
(やっほぉい! 帰れるじゃ~ん。レベッカ、ナイス! エセ眼鏡万歳!!)
ロクサーナがゆっくりとカーテシーをして顔を下に向けたのは、最高に嬉しそうな顔を隠す為。
「慌てて帰国して自分に都合のいい報告をするつもりか! 聞いている通りの姑息な奴だな」
「王国からも報告書をお送りになられれば如何でしょうか? 聖王国には真偽を調べる方法がございますので、私が虚偽の報告をしても真実は必ず明らかになります」
「⋯⋯あ、あの! アーノルド様、私は大丈夫です。ロクサーナだって留学に来たんですから、聖王国に帰すのは可哀想です」
「レベッカ、私はちっとも構わないわよ。真偽の程を確かめた後、もしかしたら⋯⋯代わりの人が来るかもだけどね」
(来ないって確信してるけどね~)
「だ、ダメよ! アーノルド様、もう行きましょう。午後の試験の準備をしなくちゃ」
真っ青な顔のレベッカがアーノルド王子の腕を引っ張って、無理矢理カフェテリアを出ていった。脳筋とエセ眼鏡はロクサーナを睨みつけていたが、レベッカに大声で呼ばれ走って行った。
因みにロクサーナは、ビクトールとトーマスの名前を覚える気がなく、脳筋とエセ眼鏡と記憶している。
「はぁ、失敗したなあ」
学科は自由七科とも言う。文法・修辞学・弁証法の三学と算術・幾何・天文学・音楽の四科からなる。
三学は初歩的で主に言論に関するもの、四科はより高度で事物に関する教科。
文法はラテン文学の注釈、修辞学は教会の文書・法令の作成や歴史、幾何は初歩の地理学、天文学は占星術、音楽は数理的研究などを含む。
これらの教養課程を修めた学生が、専門課程である神学・医学・法学の三上級学部に分かれて進学できる。
(教科書見たけど初歩の初歩⋯⋯入り口かすってるくらいだったね)
神官やシスターなら『神学』が、聖女なら『医学』の知識が必要になる。
その為、聖王国では将来神学や医学を学ぶ為に、幼少期から自由七科を勉強しはじめる。因みに、依頼で他国と交渉するリーダーは『法学』が必須。
(だから、習ってるはずなんだけどなあ)
今日の試験は、文法・修辞学・算術・天文学で、午後は専攻科目の試験になる。明日の午前中は弁証法・幾何・音楽で、午後は休みになっていた。
「はぁ、勉強嫌い⋯⋯早く午後にならないかな」
「セシル、大丈夫だと思うわよ。教会でも頑張ってたじゃない」
「そうそう、多分だけど普通はあそこまでやらないと思う⋯⋯多分だけど」
「そう? 2人ともそう思う? な、なら何とかなるかな。あぁ、でもでも恋愛小説とか冒険小説ばっかり読むんじゃなかった~。あの時間があればぁぁ」
「ストレス溜まって爆発してたかもね」
「ありがとう⋯⋯多分、慰めてくれてるんだよね。一生懸命頑張るから、亡骸は拾ってね」
「朝食の時カモミールのハーブティー出したげたじゃない。きっと大丈夫」
カモミールの花言葉は『逆境に耐える』『あなたを癒やす』などで、抗ストレスや安眠などの効果がある。
「うん、寝ないで頑張る」
「そだね、うん。寝ないで名前だけは書くといいよ」
午前中の試験が終わり、魂の抜けかけたセシルを連れて学園のカフェテリアに向かった。
「うわ、広いね~」
吹き抜けの天井と一面がガラス張りになったカフェテリアの入り口には、席に案内したり料理を運ぶ使用人が並んでいる。
広く間隔をあけて置かれたダイニングテーブルには、レースのテーブルクロスがかけられ、テーブル毎に違う花が飾られ、『食堂』などと呼んではいけない雰囲気が漂う。
「ご案内致します。3名様で宜しいでしょうか」
「はい、お願いします」
テーブルについてメニューを選びその場で注文すると、出来立てが運ばれてくるのを待っているだけでいい。
「規格外? 寮の食堂もそうだったから、覚悟はしてたけどさ」
「本当に、教会の食堂と違いすぎですわね」
教会ではカウンターに並んで、決められた食事をもらってテーブルにつく。食べ終わった後はもちろん返却口まで自分で運んでいく。
「これってさぁ、テーブルや床を汚したりカトラリーを落としたら、使用人が走ってくるんだよね」
「間違いないね。この国の貴族の子息令嬢が、モップや雑巾を抱えて走るのは想像できない」
「寮でも爵位に関係なくメイドを連れてきてるらしいわよ」
「高位貴族だけじゃなかったんだ。おかしいと思ってたんだよね。盛り盛りのヘアースタイルとか、バリバリの化粧とか⋯⋯一人でできるの? って思ってた」
雰囲気はともかく、料理は美味しい。盛り付けも味も学園の食堂⋯⋯カフェテリアとは思えないレベル。
満足して最後のお茶を飲んでいると、パタパタと音がして、ロクサーナの後ろから嗅ぎ慣れた悪臭⋯⋯香水の匂いが漂ってきた。
「ここで食べてたの? 私はアーノルド様に誘われて、あそこの別室で食べたの」
レベッカが指差す方向には、中二階になった特別室らしき部屋があるのが見えた。
「王家専用の特別メニューだったし、とっても美味しかったわ~」
「そっか、それは良かったね」
ロクサーナが出来る限りの笑顔で返事をすると、レベッカがメソメソと泣きはじめた。
(まただよ~、堪忍して⋯⋯)
「酷いわ! ロクサーナ達に除け者にされた私を、アーノルド様達が心配してくださっただけなのに!」
レベッカが突然大声で叫ぶと、ロクサーナ達の近くに座っていた生徒がギョッとして飛び上がった。
しんと静まりかえったカフェテリアにヒソヒソと小声で話す声が聞こえはじめ、ロクサーナが返事をしようとして口を開いた時、アーノルド王子の声が響いた。
「どうしたんだい? また、ロクサーナに何か言われたの?」
(え~、既に『言われた』のを前提で話すとかあり得ない。そんなに心配なら放置プレイしないで首輪でもつけて、側においといてよね)
「私がアーノルド様達とお食事したのが気に入らないって⋯⋯」
「はあ、油断も隙もないね。私が誰と食事をしようと、ロクサーナには何の関係もない。勘違いしてもらっては不愉快だ!」
「お言葉を返すようで申し訳ありませんが、レベッカが食事が美味しかったと言ったので、『良かったね』と返事しただけです。その言葉の中に、レベッカがどのような意味を思い付いたのか分かりませんが、誰と誰が一緒に食事をしようが、自由だと思っております。
それから、私の事は『バーラム』とお呼び下さい。アーノルド王子殿下にファーストネームで呼ばれるような関係ではありませんので」
「なんて傲慢な! 男爵家の分際で王子殿下に意見するなんて、不敬だぞ。叩き切ってやる!」
「留学生として、何もご存知ない方々から誤解を招くような行動を慎みたいと思っているだけでございます故、ご理解いただけますと恐縮でございます」
「ふん! 聖王国に送り返してもいいんだぞ。王子殿下に不敬を働き、命令するような奴は我が国には相応しくないからな!」
(エセインテリ眼鏡、ありがとう!!)
「では、即刻留学を取りやめこのまま帰国いたします」
(やっほぉい! 帰れるじゃ~ん。レベッカ、ナイス! エセ眼鏡万歳!!)
ロクサーナがゆっくりとカーテシーをして顔を下に向けたのは、最高に嬉しそうな顔を隠す為。
「慌てて帰国して自分に都合のいい報告をするつもりか! 聞いている通りの姑息な奴だな」
「王国からも報告書をお送りになられれば如何でしょうか? 聖王国には真偽を調べる方法がございますので、私が虚偽の報告をしても真実は必ず明らかになります」
「⋯⋯あ、あの! アーノルド様、私は大丈夫です。ロクサーナだって留学に来たんですから、聖王国に帰すのは可哀想です」
「レベッカ、私はちっとも構わないわよ。真偽の程を確かめた後、もしかしたら⋯⋯代わりの人が来るかもだけどね」
(来ないって確信してるけどね~)
「だ、ダメよ! アーノルド様、もう行きましょう。午後の試験の準備をしなくちゃ」
真っ青な顔のレベッカがアーノルド王子の腕を引っ張って、無理矢理カフェテリアを出ていった。脳筋とエセ眼鏡はロクサーナを睨みつけていたが、レベッカに大声で呼ばれ走って行った。
因みにロクサーナは、ビクトールとトーマスの名前を覚える気がなく、脳筋とエセ眼鏡と記憶している。
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