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14.午後の試験が楽しみ〜
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「はぁ、失敗したなあ。黙って帰れば良かった」
「ロクサーナったら、脅しじゃなくて本気で帰るつもりだったの?」
「勿論! 最大のチャンスが来た、よっしゃあって感じ」
「⋯⋯もしかしてロクサーナは、例の話に興味ないの?」
「へ? ないない! ぜんっぜん興味ない。相手が誰だろうとぜ~ったい結婚なんてしない。第一、お世話係さんで呼ばれただけだし」
「ええっ! マジ?」
「サブリナもセシルもこの国に来るの初めてでしょ? だから、いざっていう時に私がいれば魔鳥ですぐに連絡できるとか、そんな感じでメンバーに入れられたんだ~」
定期的に起きるスタンビードや海獣の調査が参加理由だと言うのは、2人には秘密。
ロクサーナはジルベルト司祭の話を思い出した。
『タンザリアム王国は治癒魔法使いが欲しいって駄々を捏ねてるけどさぁ、サブリナかセシルがあの国の誰かと結婚しても、うちの問題は解決しないんだよね』
サブリナなら魔物討伐に活躍できるが一人の力には限りがあり、対応できるのは単体の大型の魔物か複数体の小型の魔物。
治癒魔法はヒールアクアだけだが、練度が高いので薬師レベルくらいはなんとかなる。
セシルが結婚した時は治癒魔法はそこそこ役に立つが、広範囲の治療はまだできない。魔物の討伐や災害が起きた時の攻撃力は弱く、補助的な役目がメイン。
『もし仮に、セシルやサブリナの力が覚醒しても、一人でできることなんて知れてる。だから、今までと変わらずうちに『魔物だぁ、災害がぁ』って救助要請が来る。ってことはさ、うちには何もメリットがないどころか、頑張ってる子を奪われるだけなんだよね~。
だからと言って、両方をカバーできる魔法士や聖女を送り出すなんてあり得ない話だしさ』
そんな事をしたら、すべての国から魔法士をくれと言われるようになるのは間違いない。
『ロクサーナにはさ、サブリナ達と一緒に行って、現地調査して欲しいんだ。あの国の報告書をちょっと調べてみたんだけど⋯⋯定期的に起きるスタンビードで、魔物の種類も数もほぼ同じっておかしくない? 海獣も同じ種類が同じ時期に出没するし。
つまり、人為的な災害の可能性が高いって事なんだけど、誰が何の為にやってるのかが分からない』
かなり力のある闇属性の魔法士か魔導具を使えば、強制的に魔物をコントロールする事ができるはず。あとはテイマーとか。
魔法士の派遣費用さえ払えない国で、それをする理由は?
『ロクサーナは名前も力も公になってないからさ、こっそり調査しても向こうは気付かないと思うんだよね~』
ロクサーナは単独で依頼を受けた時も他のメンバーと行動する時も、必ず認識阻害や隠蔽を使う。これは、期間限定で聖女登録する時に決めた条件のひとつ。
(名前や力が有名になったら、聖女を辞めにくくなるもん)
ロクサーナの魔力量・使用可能属性数・魔法の練度は、過去の大聖女以上だと言われている。
人嫌いで神を信じていないのも、規格外の力を持っているのもロクサーナの過去に理由がある。
(私は聖女を辞めたい。私は聖女として不適格)
「さて、午後の実技試験に行かなくちゃだね」
「剣術の試験ってさ、試合形式なんだって。午前中の学科試験のストレスも、さっきのイライラも全部ぶつけて、ギッタギタにしてくるね」
「私は時間内に刺繍を仕上げるらしくて、終わった人から帰っていいみたい」
「私はポーションを作るって書いてあったんだけど、すごく久しぶりだから楽しみなんだ」
サブリナとロクサーナは試験が終わり次第、剣術の試験会場に行くと約束して、カフェテリアの入り口で解散した。
(さて、何人くらいいるのかなぁ。『おらぁワクワクしてきたぞ』ってやつだね)
錬金術&魔導具クラスの教室は校舎裏の研究棟にあった。
頑丈なドアをこじ開けて中に入ると、薬品や薬草の匂いに混じって焦げたような鼻をつく臭いがする。
(実験で失敗でもしたのかな)
教卓に向かって並ぶ広い机と背もたれのない椅子に生徒が16人。
(思ったより多いかも⋯⋯)
窓はなく左右の壁際には、錬金釜や魔道コンロが2列になって並んでいる。後ろにはびっしりと作り付けの棚が並び、様々な大きさの瓶や素材が整然と収納されていた。
錬金術や魔導具作りは正しく管理された素材と器具が重要で、雑な扱いはそのまま結果に影響する。
(先生は割と几帳面な人かな? それならちょっと期待できるね)
後ろの席につき、周りを見渡していると40代くらいの男性教師が入って来た。
「全員揃ってるね。担当のジェイムス・チェンバーだ。さて、本日の試験は例年と同じで、指定された素材を使って初級ポーションの作成を行う。
えー、素材はここに準備してあるものだけを使うんだが、ポーションの品質だけでなく、完成するまでの時間も採点に影響する。
作り直しは何度でもオーケー。鑑定の魔導具を使い、ポーションの品質を確認するのは一回のみだから、納得のいくポーションが出来たら私のところに持ってきなさい。
何か質問は?」
「あの⋯⋯聖王国の留学生がひとり参加してますけど、ズルというか⋯⋯魔法を使って誤魔化すとかできるんですか?」
見たことがある男子生徒なので、Aクラスの生徒かもしれない。
「魔法を使うには詠唱というものが必要になるから、使ったか使ってないかは見ていたら分かる」
「じゃあ、見張っておかないと!」
「魔力はどうなんですか!?」
「目に見えないんだが、魔力を使うと品質が変わると言われている。
ただ、君達にも大なり小なり魔力は存在するんだ。魔法が使えないと魔力を意識する事はないから、知らない人が多いだけでね」
「ええっ! そんなの、聞いた事ないよな」
「だって魔力があるなら魔法だって⋯⋯」
「魔法を使う時は魔力を必要とするが、魔力があっても魔法が使えるわけではない。つまり、魔法が使えるか使えないかの問題と、魔力があるかないかは別の問題だという事。これはとても重要な事だから、覚えていて欲しい。
これよりも詳しい話は授業で行うとしよう。他に質問は?」
「魔法を使って作るのと魔法を使わずに作るのでは品質は変わりますか?」
「魔法の種類によっては、高品質のものができる」
「そんなのズルい!」
「⋯⋯まず一つ目。留学生と言うのは人の名前ではない。そして二つ目、何もはじめないうちから、不正をした場合の話ばかりするのは公平ではないと私は思うんだが、君達はどうかな?」
「同じ留学生を虐めてるって聞きました」
「昼休憩でアーノルド王子殿下に叱られてたし」
「⋯⋯うーん、君達の話は伝聞と詳細不明のものだけなのかな? 今から君達はポーションを作るが、その時に最も大切なのは正しい素材を自分の目で選び、正確な分量を測り、正しい手順で作る。
人の評価と錬金術や魔導具作成には通じるものがあるとは思わないか? 噂とは不確かで、間違った思い込みや想像が含まれる場合がある。自分の目で見て、あらゆる角度から確認した物でなければ、正しい結果は生まれない」
「じゃあ、先生は噂が嘘だって言うんですか?」
「王子殿下のお言葉が間違ってるって?」
教室中の生徒がざわざわと騒ぎはじめ、何を言っているのか聞き取れないほどになっていった。
「さあ、その全てが伝聞だから、私には正しいとも間違っているとも言えない。自分の目で見てないのだから、分からないと言うしかないね。
では、噂の留学生のロクサーナ・バーラム。君の意見は?」
「ロクサーナったら、脅しじゃなくて本気で帰るつもりだったの?」
「勿論! 最大のチャンスが来た、よっしゃあって感じ」
「⋯⋯もしかしてロクサーナは、例の話に興味ないの?」
「へ? ないない! ぜんっぜん興味ない。相手が誰だろうとぜ~ったい結婚なんてしない。第一、お世話係さんで呼ばれただけだし」
「ええっ! マジ?」
「サブリナもセシルもこの国に来るの初めてでしょ? だから、いざっていう時に私がいれば魔鳥ですぐに連絡できるとか、そんな感じでメンバーに入れられたんだ~」
定期的に起きるスタンビードや海獣の調査が参加理由だと言うのは、2人には秘密。
ロクサーナはジルベルト司祭の話を思い出した。
『タンザリアム王国は治癒魔法使いが欲しいって駄々を捏ねてるけどさぁ、サブリナかセシルがあの国の誰かと結婚しても、うちの問題は解決しないんだよね』
サブリナなら魔物討伐に活躍できるが一人の力には限りがあり、対応できるのは単体の大型の魔物か複数体の小型の魔物。
治癒魔法はヒールアクアだけだが、練度が高いので薬師レベルくらいはなんとかなる。
セシルが結婚した時は治癒魔法はそこそこ役に立つが、広範囲の治療はまだできない。魔物の討伐や災害が起きた時の攻撃力は弱く、補助的な役目がメイン。
『もし仮に、セシルやサブリナの力が覚醒しても、一人でできることなんて知れてる。だから、今までと変わらずうちに『魔物だぁ、災害がぁ』って救助要請が来る。ってことはさ、うちには何もメリットがないどころか、頑張ってる子を奪われるだけなんだよね~。
だからと言って、両方をカバーできる魔法士や聖女を送り出すなんてあり得ない話だしさ』
そんな事をしたら、すべての国から魔法士をくれと言われるようになるのは間違いない。
『ロクサーナにはさ、サブリナ達と一緒に行って、現地調査して欲しいんだ。あの国の報告書をちょっと調べてみたんだけど⋯⋯定期的に起きるスタンビードで、魔物の種類も数もほぼ同じっておかしくない? 海獣も同じ種類が同じ時期に出没するし。
つまり、人為的な災害の可能性が高いって事なんだけど、誰が何の為にやってるのかが分からない』
かなり力のある闇属性の魔法士か魔導具を使えば、強制的に魔物をコントロールする事ができるはず。あとはテイマーとか。
魔法士の派遣費用さえ払えない国で、それをする理由は?
『ロクサーナは名前も力も公になってないからさ、こっそり調査しても向こうは気付かないと思うんだよね~』
ロクサーナは単独で依頼を受けた時も他のメンバーと行動する時も、必ず認識阻害や隠蔽を使う。これは、期間限定で聖女登録する時に決めた条件のひとつ。
(名前や力が有名になったら、聖女を辞めにくくなるもん)
ロクサーナの魔力量・使用可能属性数・魔法の練度は、過去の大聖女以上だと言われている。
人嫌いで神を信じていないのも、規格外の力を持っているのもロクサーナの過去に理由がある。
(私は聖女を辞めたい。私は聖女として不適格)
「さて、午後の実技試験に行かなくちゃだね」
「剣術の試験ってさ、試合形式なんだって。午前中の学科試験のストレスも、さっきのイライラも全部ぶつけて、ギッタギタにしてくるね」
「私は時間内に刺繍を仕上げるらしくて、終わった人から帰っていいみたい」
「私はポーションを作るって書いてあったんだけど、すごく久しぶりだから楽しみなんだ」
サブリナとロクサーナは試験が終わり次第、剣術の試験会場に行くと約束して、カフェテリアの入り口で解散した。
(さて、何人くらいいるのかなぁ。『おらぁワクワクしてきたぞ』ってやつだね)
錬金術&魔導具クラスの教室は校舎裏の研究棟にあった。
頑丈なドアをこじ開けて中に入ると、薬品や薬草の匂いに混じって焦げたような鼻をつく臭いがする。
(実験で失敗でもしたのかな)
教卓に向かって並ぶ広い机と背もたれのない椅子に生徒が16人。
(思ったより多いかも⋯⋯)
窓はなく左右の壁際には、錬金釜や魔道コンロが2列になって並んでいる。後ろにはびっしりと作り付けの棚が並び、様々な大きさの瓶や素材が整然と収納されていた。
錬金術や魔導具作りは正しく管理された素材と器具が重要で、雑な扱いはそのまま結果に影響する。
(先生は割と几帳面な人かな? それならちょっと期待できるね)
後ろの席につき、周りを見渡していると40代くらいの男性教師が入って来た。
「全員揃ってるね。担当のジェイムス・チェンバーだ。さて、本日の試験は例年と同じで、指定された素材を使って初級ポーションの作成を行う。
えー、素材はここに準備してあるものだけを使うんだが、ポーションの品質だけでなく、完成するまでの時間も採点に影響する。
作り直しは何度でもオーケー。鑑定の魔導具を使い、ポーションの品質を確認するのは一回のみだから、納得のいくポーションが出来たら私のところに持ってきなさい。
何か質問は?」
「あの⋯⋯聖王国の留学生がひとり参加してますけど、ズルというか⋯⋯魔法を使って誤魔化すとかできるんですか?」
見たことがある男子生徒なので、Aクラスの生徒かもしれない。
「魔法を使うには詠唱というものが必要になるから、使ったか使ってないかは見ていたら分かる」
「じゃあ、見張っておかないと!」
「魔力はどうなんですか!?」
「目に見えないんだが、魔力を使うと品質が変わると言われている。
ただ、君達にも大なり小なり魔力は存在するんだ。魔法が使えないと魔力を意識する事はないから、知らない人が多いだけでね」
「ええっ! そんなの、聞いた事ないよな」
「だって魔力があるなら魔法だって⋯⋯」
「魔法を使う時は魔力を必要とするが、魔力があっても魔法が使えるわけではない。つまり、魔法が使えるか使えないかの問題と、魔力があるかないかは別の問題だという事。これはとても重要な事だから、覚えていて欲しい。
これよりも詳しい話は授業で行うとしよう。他に質問は?」
「魔法を使って作るのと魔法を使わずに作るのでは品質は変わりますか?」
「魔法の種類によっては、高品質のものができる」
「そんなのズルい!」
「⋯⋯まず一つ目。留学生と言うのは人の名前ではない。そして二つ目、何もはじめないうちから、不正をした場合の話ばかりするのは公平ではないと私は思うんだが、君達はどうかな?」
「同じ留学生を虐めてるって聞きました」
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「⋯⋯うーん、君達の話は伝聞と詳細不明のものだけなのかな? 今から君達はポーションを作るが、その時に最も大切なのは正しい素材を自分の目で選び、正確な分量を測り、正しい手順で作る。
人の評価と錬金術や魔導具作成には通じるものがあるとは思わないか? 噂とは不確かで、間違った思い込みや想像が含まれる場合がある。自分の目で見て、あらゆる角度から確認した物でなければ、正しい結果は生まれない」
「じゃあ、先生は噂が嘘だって言うんですか?」
「王子殿下のお言葉が間違ってるって?」
教室中の生徒がざわざわと騒ぎはじめ、何を言っているのか聞き取れないほどになっていった。
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