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42.与えられた人
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「話にしか聞いたことがない魔法をガンガン使えるのに、今まで一緒に依頼を受けてた時は隠してたんだよね? それならもっと色々あるんだろうなって思うじゃん。しかも薬師って名乗れるって事は、ポーションとかを作る技術もあるって事だし。
なら、他に何があるのか知りたいってなるのは当然だろ?」
「だからって、なんで僕がそれを教えなきゃいけないの? 『俺様の疑問に答えるのは当然』とか言い出しそうでキモい」
「だって⋯⋯知りたいじゃん。知りたいって思うのは悪い事じゃないだろ?」
「レオンの知りたい気持ちは正しくて、僕の話したくない気持ちは間違ってるって言いたいんだ。へえ~、そうなんだぁ」
「いや、そうじゃないけどさ。そんな風に捻じ曲げて考えなくてもいいじゃん」
「なら、しつこくしないでくれるかな。僕はあれこれ詮索されたり、強要されるのは大っ嫌いなんだ」
話をやめたくても同じ部屋の中では逃げ道がなく、ロクサーナは内心頭を抱えた。
(なんで人間って人のことを詮索したがるのか、わけわかんないよ!)
「でも、俺はジルの事が知りたい。今までみたいに依頼だけじゃなくて、食事に行ったりとか⋯⋯何が好きで何がやりたいとか、そういう話もしたいって思ってる。うちに遊びに来て欲しいし、家族に紹介したい。
家族もジルの事を⋯⋯どんなことができる人か知ったら絶対に喜ぶから」
「僕が好きなのはひとりでいる事。やりたい事はひとりになりたい。他人の家族に喜ばれる為に見せ物になる気はない。以上!」
起き上がってベッドに座ったロクサーナは、冷ややかな顔でレオンを見つめた。
「俺の事、嫌いとか信用できないとか?」
「押し付けがましい奴は嫌いだし、信用もできない。転移とか魔導具とかコートとか⋯⋯そういうのを見た直後に突然『もっと知りたい』って言われてさあ、信用できるわけないじゃん。
何ができるか知ったら、もっと利用できるから? 持ってる物の中に、欲しいものがあるかどうか気になるとか?」
「違う! そんな事は考えてない」
腹を立てたレオンがベッドを叩いた。
(失礼な奴だって思われても別に構わない。こんなやつ知るかって出ていってくれればラッキー。騙されるのも利用されるのも二度とごめんだ)
「でもねぇ、僕の周りにいるのってそんな人ばっかりだから、レオンがそうじゃないって口で言っても信用できない。
口だけならなんとでも言えるからね」
「⋯⋯まだ会ったばかりで、そんなに日が経ってないけど、俺はもっと一緒にいたいと思ってる。もっとロクサーナの事を知りたいのは、別に何かして欲しいわけじゃない。
⋯⋯今は、この話はやめるよ。会ってからまだそんなに経ってないし、少しずつ俺のことを知ってもらえたら変わると思うから。
ひとつ言っときたいんだけど、ギルドで自分よりでっかい相手を堂々と言い負かしてるジルを見て、良いなぁって思ったんだ。すごくカッコよくて惹かれたんだ。もっと話してみたい、一緒にいたいって。
ちょっと出かけて、頭冷やしてくる」
パタンとドアが閉まる音がした。
静まりかえった部屋の入り口にポツンと置かれたトランクには、ついさっき買ったレオンの着替えといつも使っているレオンのリュックが入っている。
「手ぶらで出てったなら、帰ってくるってことだよね。なんか面倒だなぁ⋯⋯さて、働かなきゃだよね」
ダンジョンから持ってきた魔導具をテーブルの上に出して、ちまちまと分解しはじめた。
外装を外し回路を調べ、完全に分解して魔法陣をひとつずつ確認していく。回路の途中に複雑な魔法陣がいくつも書き込まれ、微妙なバランスで成り立っている。
部屋が暗くなりはじめたが、ロクサーナは無意識のうちにライトをつけ作業を続けていた。
「やっちゃった⋯⋯揉め事は嫌い」
メインになっている魔法陣の隅に小さくサインがあるのを見つけたロクサーナが、もっとよく見えるように光に翳しながらつぶやいた。
【もっとはっきり言ってやれば良かったのに】
「⋯⋯まさかレオンが11年前の馬車の事故の被害者だったなんて、驚きだよ。ミュウは前から知ってたの?」
【ううっ、まあね】
「イライラしたのは妬みだったのかなぁ⋯⋯そうなら最低だよ」
【素直に話せば良かったのに】
「助かって良かったです~、私はそれをきっかけに教会に引き取られて⋯⋯とか? あの時の少年は、その前もあの後も両親に守られて幸せに暮らしてました。とても元気で冒険者してます⋯⋯ただそれだけの話だもん。
私がその時の聖女ですなんて言う必要はないと思う。なんだか嫌な予感がするし」
11年前の馬車の事故をきっかけに、ロクサーナはいもしない両親の、ありもしない借金の返済を迫られて地獄の日々を送った⋯⋯それ自体はレオンには関係のない話だとわかっている。
「⋯⋯でもね、話を聞いてくれて、夢で泣いたら慰めてくれる両親がいるのを『良いなぁ』って思っちゃったんだ。
でさ、優しい両親に『いいよ』って許される暮らしをしてきたから、自分の願いは叶えられるのが当然だって思えるのかもって。
だから、いつもあんなに強引に自分の願いを押し付けても、平気そうな顔でいられるんだって」
強引に願いを叶えようと行動できるのは、それが間違っていないと思えるから。それを許されてきた過去の成功体験が身についているから。
レオンが優しい両親に泣きついて慰められている時、自分は何ひとつ許されない時を教会で過ごしていた。その時から、ロクサーナは人に何かを強請るなんて想像した事もない。期待なんてしないしできないし、人は今でも怖すぎる
「真逆の人生が真逆の考え方を作った⋯⋯その理由がようやくわかった感じ」
【過去は今と未来を形作る。ロクサーナが願うなら、ギルドでレオンと会う前に時間を戻せば良い】
よく響く低音は初めて聞いたクロノスの声。
「時間遡行かぁ⋯⋯いや、やめとくよ。自分の我儘でやっちゃいけない事だって知ってるもん。
終わった事なのに、私がしつこすぎるだけだし。それに、怒るなんて⋯⋯強引な態度を取られると断れない自分が弱いだけなんだから。人に文句を言ったのが間違い」
【そうは思わない。自分勝手な人間が増えすぎなんだよ】
【相手の気持ちを考えない人、多すぎって思うの~】
いまだにあの頃の夢で魘される事がある。びっしょりと汗をかいて目が覚めては、そわそわと魔導具を作ったり薬草を煎じたり。
「レオンのせいじゃないのにねえ。あれって八つ当たりだったのかな?」
【ロクサーナのせいでもないし、八つ当たりとは違う。我慢しすぎてたから爆発したんだよ】
「⋯⋯やな事だらけだったけど、ミュウ達に会えたもん」
【俺達はロクサーナを選んだ。いつでもそばにいるからね、ずーっと】
【ピッピ達も、み~んなそばにいるよ~】
「⋯⋯うん。この魔導具、クソじゃん」
夜が更ける頃、レオンが大量の荷物を持って帰ってきた。
なら、他に何があるのか知りたいってなるのは当然だろ?」
「だからって、なんで僕がそれを教えなきゃいけないの? 『俺様の疑問に答えるのは当然』とか言い出しそうでキモい」
「だって⋯⋯知りたいじゃん。知りたいって思うのは悪い事じゃないだろ?」
「レオンの知りたい気持ちは正しくて、僕の話したくない気持ちは間違ってるって言いたいんだ。へえ~、そうなんだぁ」
「いや、そうじゃないけどさ。そんな風に捻じ曲げて考えなくてもいいじゃん」
「なら、しつこくしないでくれるかな。僕はあれこれ詮索されたり、強要されるのは大っ嫌いなんだ」
話をやめたくても同じ部屋の中では逃げ道がなく、ロクサーナは内心頭を抱えた。
(なんで人間って人のことを詮索したがるのか、わけわかんないよ!)
「でも、俺はジルの事が知りたい。今までみたいに依頼だけじゃなくて、食事に行ったりとか⋯⋯何が好きで何がやりたいとか、そういう話もしたいって思ってる。うちに遊びに来て欲しいし、家族に紹介したい。
家族もジルの事を⋯⋯どんなことができる人か知ったら絶対に喜ぶから」
「僕が好きなのはひとりでいる事。やりたい事はひとりになりたい。他人の家族に喜ばれる為に見せ物になる気はない。以上!」
起き上がってベッドに座ったロクサーナは、冷ややかな顔でレオンを見つめた。
「俺の事、嫌いとか信用できないとか?」
「押し付けがましい奴は嫌いだし、信用もできない。転移とか魔導具とかコートとか⋯⋯そういうのを見た直後に突然『もっと知りたい』って言われてさあ、信用できるわけないじゃん。
何ができるか知ったら、もっと利用できるから? 持ってる物の中に、欲しいものがあるかどうか気になるとか?」
「違う! そんな事は考えてない」
腹を立てたレオンがベッドを叩いた。
(失礼な奴だって思われても別に構わない。こんなやつ知るかって出ていってくれればラッキー。騙されるのも利用されるのも二度とごめんだ)
「でもねぇ、僕の周りにいるのってそんな人ばっかりだから、レオンがそうじゃないって口で言っても信用できない。
口だけならなんとでも言えるからね」
「⋯⋯まだ会ったばかりで、そんなに日が経ってないけど、俺はもっと一緒にいたいと思ってる。もっとロクサーナの事を知りたいのは、別に何かして欲しいわけじゃない。
⋯⋯今は、この話はやめるよ。会ってからまだそんなに経ってないし、少しずつ俺のことを知ってもらえたら変わると思うから。
ひとつ言っときたいんだけど、ギルドで自分よりでっかい相手を堂々と言い負かしてるジルを見て、良いなぁって思ったんだ。すごくカッコよくて惹かれたんだ。もっと話してみたい、一緒にいたいって。
ちょっと出かけて、頭冷やしてくる」
パタンとドアが閉まる音がした。
静まりかえった部屋の入り口にポツンと置かれたトランクには、ついさっき買ったレオンの着替えといつも使っているレオンのリュックが入っている。
「手ぶらで出てったなら、帰ってくるってことだよね。なんか面倒だなぁ⋯⋯さて、働かなきゃだよね」
ダンジョンから持ってきた魔導具をテーブルの上に出して、ちまちまと分解しはじめた。
外装を外し回路を調べ、完全に分解して魔法陣をひとつずつ確認していく。回路の途中に複雑な魔法陣がいくつも書き込まれ、微妙なバランスで成り立っている。
部屋が暗くなりはじめたが、ロクサーナは無意識のうちにライトをつけ作業を続けていた。
「やっちゃった⋯⋯揉め事は嫌い」
メインになっている魔法陣の隅に小さくサインがあるのを見つけたロクサーナが、もっとよく見えるように光に翳しながらつぶやいた。
【もっとはっきり言ってやれば良かったのに】
「⋯⋯まさかレオンが11年前の馬車の事故の被害者だったなんて、驚きだよ。ミュウは前から知ってたの?」
【ううっ、まあね】
「イライラしたのは妬みだったのかなぁ⋯⋯そうなら最低だよ」
【素直に話せば良かったのに】
「助かって良かったです~、私はそれをきっかけに教会に引き取られて⋯⋯とか? あの時の少年は、その前もあの後も両親に守られて幸せに暮らしてました。とても元気で冒険者してます⋯⋯ただそれだけの話だもん。
私がその時の聖女ですなんて言う必要はないと思う。なんだか嫌な予感がするし」
11年前の馬車の事故をきっかけに、ロクサーナはいもしない両親の、ありもしない借金の返済を迫られて地獄の日々を送った⋯⋯それ自体はレオンには関係のない話だとわかっている。
「⋯⋯でもね、話を聞いてくれて、夢で泣いたら慰めてくれる両親がいるのを『良いなぁ』って思っちゃったんだ。
でさ、優しい両親に『いいよ』って許される暮らしをしてきたから、自分の願いは叶えられるのが当然だって思えるのかもって。
だから、いつもあんなに強引に自分の願いを押し付けても、平気そうな顔でいられるんだって」
強引に願いを叶えようと行動できるのは、それが間違っていないと思えるから。それを許されてきた過去の成功体験が身についているから。
レオンが優しい両親に泣きついて慰められている時、自分は何ひとつ許されない時を教会で過ごしていた。その時から、ロクサーナは人に何かを強請るなんて想像した事もない。期待なんてしないしできないし、人は今でも怖すぎる
「真逆の人生が真逆の考え方を作った⋯⋯その理由がようやくわかった感じ」
【過去は今と未来を形作る。ロクサーナが願うなら、ギルドでレオンと会う前に時間を戻せば良い】
よく響く低音は初めて聞いたクロノスの声。
「時間遡行かぁ⋯⋯いや、やめとくよ。自分の我儘でやっちゃいけない事だって知ってるもん。
終わった事なのに、私がしつこすぎるだけだし。それに、怒るなんて⋯⋯強引な態度を取られると断れない自分が弱いだけなんだから。人に文句を言ったのが間違い」
【そうは思わない。自分勝手な人間が増えすぎなんだよ】
【相手の気持ちを考えない人、多すぎって思うの~】
いまだにあの頃の夢で魘される事がある。びっしょりと汗をかいて目が覚めては、そわそわと魔導具を作ったり薬草を煎じたり。
「レオンのせいじゃないのにねえ。あれって八つ当たりだったのかな?」
【ロクサーナのせいでもないし、八つ当たりとは違う。我慢しすぎてたから爆発したんだよ】
「⋯⋯やな事だらけだったけど、ミュウ達に会えたもん」
【俺達はロクサーナを選んだ。いつでもそばにいるからね、ずーっと】
【ピッピ達も、み~んなそばにいるよ~】
「⋯⋯うん。この魔導具、クソじゃん」
夜が更ける頃、レオンが大量の荷物を持って帰ってきた。
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