【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との

文字の大きさ
104 / 126

94.最後の最後で、ざまぁのレベルをせっせとあげるなんて超ウケる〜

しおりを挟む
「冒険商人が海賊稼業の別名、立ち上げている会社の社長以下全員が犯罪者。国に認められている貿易会社が、略奪品の転売や奴隷の密輸をメインにしている事は有名な話です」

「⋯⋯」

「オルフェーヌ王国は今でも奴隷制が残っていて、捉えれられた魔法使い達は隷属の首輪を嵌められ、魔力のある限り使い潰される。役に立たなくなった男は鉱山行きか殺される、女は娼館行き。
よく似たやり方をしている国がこの近くにもありまして、『帝国』のやり方はご存知ですか? オルフェーヌ王国の話も結構有名ですよ」

「⋯⋯くだらん。全くもってくだらん噂話だよ。我々は国の許可証を持ち他国との貿易をしている。船員の中には海賊崩れもいるだろうが、そこまで管理はできんからな。
証拠もなくオラール貿易会社を犯罪者扱いし、オルフェーヌ王国に対して暴言を吐いた奴を見逃すわけにはいかん! 貴様ら全員、海の藻屑にしてやる。
領兵! コイツらを捕まえろ!」

 壁際に並んで武器を構えていた領兵達が、ジルベルト達に向かって一歩足を踏み出した。


 パキーン⋯⋯パリパリ⋯⋯バキン


 領兵の足元が凍りつくと同時に、持っていた剣や槍が一斉に折れた。

「な、なんだ!」

「質問して宜しいでしょうか? 領主でもなくこの国の方でもないオラール商会の方が、なぜ領兵に指示できるのですか? そして、領兵達はなぜその指示に従ったのですか? それを黙認しておられるのは、リューズベイの領主としておかしくありませんか?

「新しい領主のキリング様、情けなくない?」

「だ、誰だ! ど、どこから話してる、顔を出しやがれ!」

「スミス様、商人の仮面が剥げちゃってるよ~。流石、現役の海賊だね。んで、レベッカ達は人の情報で甘い汁を吸おうとしてたのかな~、コソコソと隠れてても黄色いあんよ⋯⋯ゴホン⋯⋯黄色いドレスが見えてるよ。もうバレバレ~」

 カラカラと音を立てて、カーテンが勝手に開いていく。

「ひいっ! ジ、ジルベルト司祭⋯⋯助けて、あたしらはこの人達に騙されたの!!」

「わたくしは今でも聖王国の所属ですわ! 助けてくださいませ」

「さっきの声、ロクサーナでしょ! 姿を消してないでアタシを助けなさいよ! アンタのせいでこんな事になってんだからね」



「いや~、清々しいまでのクズっぷり。聖女見習いとか魔法士とか魔法士見習いとしての力が激減した分、ゲスに落ちちゃった感じだね」

「ロクサーナの情報をネタにどんな約束をしたのか知らないが、教会所属の者達の情報については守秘義務がある。いくつ教会との契約を破れば気が済むのか⋯⋯呆れてものも言えないよ」

「アタシ達が喋ったって証拠は!? アンタの勝手な想像じゃん、ふざけんな!」

「今でもあたし達はロクサーナの友達だって思ってるから、何にも話してないもん」

「わたくしだって、ロクサーナの事を心配しておりましたの。早く会いたいって」



 書類仕事をするジルベルトしか知らないレベッカ達は、彼は事務しかできない神官だと思っている。事務職の神官は、魔法士見習いにさえなれなかった落伍者と言われていて、教会内ではかなり冷遇されている。

(その上、ジルベルト司祭が担当しているのはロクサーナだけ⋯⋯一人を担当するので精一杯の、無能だと聞いたことがあるわ)

(魔法士や聖女見習いの自分達を、格下の事務職がどうこうできるはずがないもん)

(ジルベルト司祭じゃ役に立たないけど、ロクサーナがいるならアタシを助けてくれるはず)

 むしろ助けないはずがないと思った。

(だって、大聖女候補の筆頭聖女なんだもの。困っている友達を放っておくなんてあり得ないわ)

(仲間を見捨てるはずはないよね、信じてるからね!)

(助けにきたのは後で褒めてあげる)

「「「奴隷なんて嫌! ロクサーナ、助けてぇぇ」」」

 本心を隠して、ロクサーナに救いを求める声が重なった。

(お~、やっぱりこの3人は仲良しさんだ、ゲス仲間だもんね!)




「ではでは⋯⋯時を遡り、過去の映像をご覧ください」

 パチパチと音がしたのは、姿を消したままのロクサーナが手を叩いているのだろう。テラスの前に黒く大きな円が広がり、天井から床まで届くと、別の部屋の映像が映し出された。


『ロクサーナっていう子はぁ、アタシほどじゃないけど魔法が使えるの。レベルはぁ、う~ん、そこそこって感じかなあ。聖女だって言って偉そうにしてるからぁ、オルフェーヌに連れて行って、ボッロボロになるまで使い潰してくれたら、レベッカすっご~く嬉しいなぁ。
だってだって、アイツにはめちゃめちゃ酷い目にあったからぁ、だ・か・ら⋯⋯仕返しして~。お願~い!
あ、魔力だけは多いってセシルが言ってたからぁ、身体だけは丈夫みたいよ~。ちびで貧相な身体つきだけどね~』

『え~、アタシがロクサーナを誘い出すの? 攻撃と拘束の魔導具を貸してくれるならいいけどぉ⋯⋯あの子って乱暴者だからぁ、一撃で潰せるくらいの、かなり強力な攻撃が出来るやつにしてね~。スミス様なら、どんな魔道具でも手に入るでしょ~。そのくらいのじゃないと、やり返されちゃいそうで怖いんだもん』

「な、な、何これ⋯⋯いつ見たの!? 聞いてたんなら、先に言いなさいよぉぉ」


『ロクサーナですか? 仕事はしてなかったですけど、聖女としての力はかなりあるって本人は言ってましたわね。
えっ? 王国に連れていかれるのですか? でしたら、隷属の首輪を嵌めておく事をお勧めしますわ。結構我儘な子ですから逃げ出さないようにしておきませんと、スミス様でも扱えないと思いますから。
わたくしは魔法士としてかなりの依頼をこなしてきましたから、ロクサーナのマスターになって使役して差し上げても構いませんわ。勿論、それなりの待遇を望みますけれどね。あの子の性格はよく分かっていますもの、わたくしなら最高の結果を出してご覧にいれますわ』

『例えばですか? そうですわね⋯⋯ロクサーナにできるのは付与とちょっとした回復ですの。魔法士が一番弱い分野ですから、わたくしの指示を聞くように躾けておけば、攻撃力が上がりますし、戦いの場で回復役を連れ歩くのはかなり有効でしょう?』

「こ、これは⋯⋯ほんの冗談なの。場を和ませようとして言っただけで。本気じゃないことくらい、ロクサーナなら分かるでしょう!」


『ロクサーナは薬草を弄ってばかりだったから、聖女としてじゃなくてポーション作りの方が役立つはずだよ~。
あたしと友達になりたがってたから、声をかけてあげてたからさ、あたしが頼めばホイホイ働くはず。
でね、あの子ったら生意気にも容量無制限の収納ポーチを持ってるんだ~。アレをくれるならロクサーナに首輪を嵌めて、スミス様の前に差し出したげるよ? えっ? レベッカに頼んだの? あー、レベッカには無理だと思う。それができるのは聖女仲間だったあたしだけだね。
光魔法のことならあたしが一番詳しいから、ロクサーナの使役方法はあたしにお任せあれ。報酬によったらめちゃめちゃ頑張って、ロクサーナを働かせてあげるからね~』

『収納ポーチの中身? 魔導具とかポーションとかがホイホイ出てくるからさぁ、結構溜め込んでるみたいだよ~。珍しい魔導具の転売で儲けてるから、金貨もいっぱい持ってると思うし。え、う、うん。収納ポーチをくれるなら、中身はスミス様に全部あげる』

「だ、だ、騙されてたんだって⋯⋯ホントのホントに、あたしがロクサーナを裏切るわけないじゃん。聖女仲間だもん。お願い、信じてぇぇ」

しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

二度目の人生は離脱を目指します

橋本彩里(Ayari)
恋愛
エレナは一度死に戻り、二度目の人生を生きることになった。 一度目は親友のマリアンヌにあらゆるものを奪われ、はめられた人生。 今回は関わらずにいこうと、マリアンヌとの初めての顔合わせで倒れたのを機に病弱と偽り王都から身を遠ざけることにする。 人生二度目だから自身が快適に過ごすために、マリアンヌと距離を取りながらあちこちに顔を出していたら、なぜかマリアンヌの取り巻き男性、死に戻り前は髪色で呼んでいた五人、特に黒いのがしつこっ、……男たちが懐いてきて。 一度目の人生は何が起っていたのか。 今度こそ平穏にいきたいエレナだがいつの間にか渦中に巻き込まれ――。

婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの

鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」 そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。 ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。 誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。 周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」 ――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。 そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、 家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。 だが、彼女の予言は本物だった―― 数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。 国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、 あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。 「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」 皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、 滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。 信じてもらえなかった過去。 それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。 そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。 ――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

処理中です...